日本とハワイの関係は150年以上前に日本人移民がハワイに渡航して以来築かれてきました。戦後は前向きに絆を結び、約60年前から日本とハワイの各自治体同士が姉妹友好関係の提携を始め、今日に至るまでさまざまな交流を図っています。その関係をさらに深めるために、『日本・ハワイ姉妹州姉妹都市サミット』が開催されました。
現在30を超える姉妹友好関係があるハワイ州と日本。その友好関係、経済機会、文化や教育の交流を促進するため、初めての『日本・ハワイ姉妹州姉妹都市サミット』が7月27日、28日に開催されました。
ハワイ日米協会(JASH)が主催したもので、会場となったワイキキのホテルには、ハワイ州と姉妹提携のある福岡県や沖縄県、広島県などの他、ホノルル市と姉妹友好関係にある広島市や那覇市、宇和島市など、6道県16市区町から県知事や市区町長などが参加しました。一方、ハワイ州側からもハワイ州知事、ホノルル市・郡長、カウアイ郡長、マウイ郡長、ハワイ郡長が出席しました。
オープニングのあいさつで、ジョシュ・グリーン州知事が、パンデミックを乗り越えて同サミットが開催され、一堂に会したことへの感謝の言葉を述べ、これを機に友好を深化・発展させたいと強調しました。
続いて、日本の各自治体の代表とハワイの郡長らが一人ずつあいさつとして、姉妹提携のきっかけや経緯、これまでの交流、今後の展開などを述べました。その中には、「日本人移民がハワイに渡ったことの縁」、「第二次世界大戦の歴史から戦後の新しい絆としての交流」、「海難事故からの前向きな関係を目指した提携」といった内容も多く、歴史との関係性の深さを感じさせました。初日は参加者全員で記念撮影も行われ、和やかな雰囲気で始まりました。
両日で実施されたパネルディスカッションの議題は、、「持続可能なエネルギー」、「グローバル人材育成」、「持続可能な観光」、「ビジネスと経済(貿易/農業)」で、各地域からの代表者が建設的な意見交換を行いました。
初日のオープニングセレモニー後に行われたのは、サミット開催記念パネルディスカッションでした。『姉妹関係のパワー』を議題として、ポール与那嶺氏(セントラルパシフィックバンク名誉会長)の進行により、湯崎英彦氏(広島県知事)、ブライアン・タニグチ氏(ハワイ州前議会議員)が登壇して進められました。
冒頭、日本とハワイの姉妹友好関係締結時の記念写真の他、学生交流や文化交流イベントなどの写真がスクリーンに映し出され、その歴史を振り返りました。
現地を訪れた人がスポークスマンに
タニグチ前議員は、小学6年生のときに祖父に連れられて行った広島での経験から、その歴史を次世代に伝えること、また実際に現地で史実に触れることの必要性を感じたと話しました。そして「広島を訪れた一人一人がその体験を広めるスポークスマンとなる」と思いを語りました。
広島県との姉妹友好関係については、タニグチ氏が上院議員のときに働きかけて締結したことを明かし、それ以降も継続して交流を大切にしてきたことを述べました。今後は、資金を含め官民が協力していくこと、さらなる学生交流に加え、ハワイの人が日本で働く「逆移民」として、高度な知識や技術によって日本へ寄与すると同時に、自身の経験と日本への理解を深めるなど、双方向にとっての前向きな展開を意見として挙げました。
歴史尊重と共に将来への礎を築く
湯崎知事は、最初にハワイへの移民数が最も多かったのが広島県出身者であることから、その歴史を重視していきたいという考えを話しました。
一方で、若いビジネスリーダーにとって国際経験を積む場所としてハワイは最適であると言い、文化交流や教育分野においても、すでに姉妹校提携や図書館提携など各分野での交流の機会を設けていることに触れ、今後さらに増やしていきたいと語りました。また、「政府レベルだけでなく、個人的なつながりも重要」との見解を示し、将来を見据えてさまざまな角度から活動していることを述べました。
二日目には『持続可能な観光』を議題に掲げたパネルディスカッションが行われました。スピーカーとして登壇したのは、ダニエル・ナーホオピイ氏(ハワイ州観光局 最高総務責任者)、カート・マツモト氏(プラマ・ラナイ社長)、熊田順一 氏(JTB総合研究所 主席研究員 国際関係・サステナビリティ担当)、ブレイン・ミヤサト氏(ハワイアン航空 州政府・地方自治体業務部門 マネージングディレクター)の4名で、ミシェル・カウハネ氏(ハワイコミュニティ財団 助成金&投資部門 上級副社長)が進行役を務めました。
今後の観光戦略は数より質が重要
最初に「コロナ禍後の観光において注力していること」について、JTB総合研究所の熊田主席研究員が「数字だけではなく観光の多様化が重要」という考えを述べると、ラナイ島の管理会社プラマ・ラナイのマツモト社長も「われわれも、数で勝負でなく、ハワイにできることを見据えたハワイの立ち位置を明確にすることを考えている」と続けました。一方、ハワイアン航空のミヤサトディレクターはこれまでの経験から「日本の文化を理解することで、真のハワイをより伝えやすくなる」という見方を示しました。
ハワイ州観光局のナーホオピイ最高総務責任者は、美しいビーチを楽しむだけの観光ではなく、ハワイでしか体験できないことを軸にした戦略を述べました。そして、地元の人との対話や土地の力を感じられるボランツーリズム、リジェネラティブ・ツーリズム(再生型観光)の提案など、「マラマハワイ」へのさまざまな取り組みを説明しました。
旅行者も住民も満たされる観光地
国連サミットで採択された「2 030年までの達成を目指すSDGs 17の目標への取り組み」については、熊田主席研究員が、経済や雇用創出、地産地消などにおいて、観光業として貢献できるゴールを定めて取り組んでいると説明しました。
ナーホオピイ最高総務責任者は、「コミュニティーが観光に参加することで変化を起こせる」といい、ハワイを旅行者も住民も満足する観光地とするためのマーケティング戦略に尽力してきたと述べました。具体的には、ハワイ各島のコミュニティーとの話し合いの機会を設け、それにより挙がった地域の現状や課題の解決のために観光がどのように介入できるか、いかに地域へ還元できるかなどを具体的に示すDMAP(デスティネーション・マネジメント・アクション・プラン)を作成したといい、将来を見据えた計画を立て、推し進めることの重要性を語りました。
最後に、モデレーターのカウハネ氏が、ハワイは人と土地が一体であることを強調し、そのことを理解した上で観光を推進していくことが大切だと述べました。そして、経済と社会への影響が大きい観光業が多方面からのバランスを考慮することが持続可能な社会の実現に不可欠であることを再確認しました。
この他、ハワイ州の各市郡と日本の市区町がグループに分かれて会合を持ち、双方の観光産業の構築や、交流事業の実施、連携強化などについて話し合われました。
二日間にわたった同サミットは、ハワイと日本の歴史が育んできた友情を再認識し、各分野での交流をさらに推進していくための積極的な議論が行われ、閉幕しました。
初日は、在ホノルル日本国総領事館とJASHとの共催によるレセプションが総領事公邸で行われ、400人余りが出席しました。
同時開催されたマーケットプレイスでは、日本とハワイからブースが出展。政府機関や企業がサービスや製品を紹介し、情報交換やコミュニケーションを通じて友好関係を強化し、さらに発展するための機会が提供されました。
※このページは「ライトハウスハワイ 2023年9月号」掲載の情報に基づいて作成しています。最新の情報と異なる場合があります。