かつて、アリイと呼ばれたハワイの王族は、大自然を司る神々の存在を信じ、深く敬い、その摂理に従って、世を治めていました。島を広く見晴らす丘の上には、大規模な神殿が建てられ、天と地をつなぐ壮大な神事が司られていました。今回のパワースポットは、ノースショアの丘に建つオアフ最大級の神殿、プウオマフカヘイアウと、その麓で神に仕えるカフナが統治していたという、神秘のワイメア渓谷です。
気持ちの良い青空が広がる昼下がり、ノースショアをめざして、癒しのドライブ。ホノルルから空港方面へ向かうH1フリーウェイに乗り、降り注ぐ午後の日差しを浴びながら、西へ西へと走ります。パールハーバーを過ぎてまもなく右手に進路をとり、島の中央へ向かうH2フリーウェイへ。さらに終点ワヒアワから北上し、パイナップル畑が一面に広がる赤土大地の真っ只中を走ります。眼下に広がる紺碧の海に向かって、ぐんぐん坂道を下りて行くと、やがて、白波の立つノースショアの海岸線に到達。そこから東へ進み、ワイメア湾を過ぎると、隆起した珊瑚礁が無数の潮だまりを作っているププケアビーチが見えてきました。
最初の目的地は、この山手の森の奥にあるプウオマフカヘイアウ。17世紀に建てられたオアフ最大級の神殿で、相次ぐ戦いに、勝利と平和を祈願して儀式を行い、のちにオアフ島を制圧したカメハメハも盛大な祭事を行ったという神聖な場所です。
山手へ向かうププケアロードに入り、ノースの美しいショアラインを眼下に眺めつつ、急勾配のワインディングロードを上って行くと、右手に森が見えてきます。右折して林道へ入ると、森の奥深くへ続く細い道。道なりに進んで行くと、やがて視界が開け、眩しい陽射しの下に、緑の野原と石垣で囲まれた巨大な神殿が現れます。その向こうには、陽光に輝く海と抜けるような青空が広がっています。
プウオマフカはハワイ語で「避難の丘」。戦いの時に生け贄が捧げられたこともあったというこのヘイアウには、戦いの神でありながら、森の薬草と癒しを司る神でもあったクーが祀られ、辺り一帯に力強いエネルギーが流れています。
採れたての果物など、地元の人々の心尽くしの供物が捧げられた祭壇に向かい、しばし目を閉じ、祈りを捧げます。大いなる自然の中に神の存在を見い出し、それを深く崇拝してきた人々の心が、今なおここに息づいているのがはっきりと感じられます。
石垣の周りを巡るトレイルをゆっくり歩いて行くと、静寂な空気の中に、時折聞こえる鳥のさえずり。肌をすりぬけていく柔らかな風とサワサワそよぐ草木の音が、身も心も優しく包み込んでくれます。へイアウの裾をぐるりと廻り、反対側に出ると、その先は切り立った崖。眼下には白波が押し寄せるワイメア湾が広がっています。島の中央から西端のカエナ岬まで見晴らすこの場所に立つと、天と地をつなぐパワフルな波動が感じられることでしょう。
プウオマフカヘイアウの崖下には、緑豊かなワイメア渓谷が広がり、滝から流れ落ちる渓流が海へと注ぐ細長い谷間には、神事を司るカフナが代々統治してきた集落がありました。
古の姿を遺しつつ、今では自然歴史公園として保存されている「ワイメア渓谷」。その入口横には、農耕の神ロノを祀ったハレオロノヘイアウが当時の姿のまま遺されています。森の間を流れる小川に沿って、南国の草花に彩られた小径を歩いて行くと、自然と心が安らぎます。マイナスイオンをたっぷりと浴びながら、滝壺まで約30分のヒーリングウォーク。右手の木立に古代の家屋と社が見えてきました。苔むした岩に心惹かれ、手を触れてみると、なんとも言えず温かい波動を感じます。目を閉じると、どこからか声が聞こえてくるよう。次の瞬間、たくさんの笑顔と賑やかな集落の様子が脳裏に浮かんで来ました。あたかも古の世界へ誘うかのように。
ワイキキからH1、H2フリーウェイ経由で島を北上。ハレイワから海沿いに東へ向かい、フードランド前でププケアRd.へ右折。坂道を上り、右手にヘイアウの看板が見えたら、細い林道に入り、5分ほど進んだ突き当たり。
ププケアからワイメア方面へ戻り、ワイメア川の橋の手前で左折。道なりに進み、左手奥が「ワイメア渓谷」のビジターセンター。
ホノルル在住18年のヒプノセラピスト&フリーライター。東京女子大学心理学科卒業後、富士通を経てハワイに移住。現地情報誌の編集者、ライター&翻訳家として活動するかたわら、2003年より、ヒ―リングサロン『Moe Hawaii』を主宰。「心のエステ」をテーマに、退行催眠や前世療法などの個人セッションのほか、ヒプノセラピー(催眠療法)をベースにしたワークショップ型のヒーリングツアー「6つの聖地と秘境をめぐる、楽園癒しの旅」を開催している。www.moehawaii.com
(‘Eheu Summer 2013号掲載)