太平洋の真ん中で火山活動から生まれたハワイの島々は、変化に富んだ地形に恵まれ、美しい山河や海岸線に数々の伝説が残されています。ことに、激しい火山活動の痕跡を留める奇岩には、何かを語りかけるようなその形状に加えて、パワフルな波動が感じられることから、さまざまな物語が語られてきました。今回は、風光明媚な景観が広がるライエからノースショアへと向かい、伝説の地を訪ねましょう。
ワイキキから東へ向かい、珊瑚礁の広がるカネオ湾沿岸を北上。南国情緒溢れるチャイナマンズハットの島影やクアロア牧場の緑美しい丘陵地を眺めつつ、さらにその先へとドライブしていくと、右手に白波が寄せては返すこぢんまりとしたビーチが連なり、切り立った峰に沿って、うねうねとハイウェイが続きます。
この一帯は肥沃で緑に溢れ、かつてアフプアアと呼ばれるハワイ独特の集落が点在した場所。一つの渓谷ごとに自給自足の集落が形成され、山から海まで、その地で得られるものすべてを分け合って暮らしていたという、古代ハワイのユートピア。誰とでも快く「分かち合う」ことを美徳とするアロハスピリットの原点が、そこにありました。
海辺の爽快ドライブを楽しみ、20分ほど走ると、やがて見えてくるひなびた町並みがライエ。ポリネシア文化センターでお馴染み、ノースショアの入口にあるローカルタウンです。ポリネシア文化センターを過ぎて、右手に広がる岬の住宅地へ入って行くと、まもなく視界が開け、そこは岬の先端、ライエポイント。洋上には、きりりとした横長の目を思わせる不思議な形の島が浮かんでいます。
この岬は、遥か昔、ここで猛威を振るっていた大トカゲのモオを、勇者カナが退治し、その体を切り刻んで海に投げ込んだところ、5つの島になったと語り継がれる伝説の場所。辺り一帯を見守っているかのような奇岩は、実はモオの胴体の一部で、ククイホオルアと名づけられた島。よく見ると、右手奥に頭らしき小島、左手には尾へと続く小島が連なっています。
沖からずんずん押し寄せる波と、清々しい風。洋上の島々からパワフルな波動が伝わってくるこの岬に立っていると、身も心も爽快感に充たされ、心地よくリフレッシュされていくのを感じるでしょう。
ライエからハイウェイ沿いに10分ほど北上すると、牧草地帯の先にのどかな町並みが現れ、エビ養殖で有名なカフクに到達します。沿道に並ぶエビ屋台の中でも、特に賑わっているのがロミーズ。目の前の養殖池で穫れた活エビをバターとガーリックで炒めたプレートランチは絶品です。
カフク名物のエビを堪能したら、その先のワイメア方面へ出発! 海に向かって大草原が一面に広がる田園風景の中を走り、タートルベイを過ぎると、右手に見えてくるのが、サーフィンで有名なサンセットビーチとバンザイパイプライン。その西側に広がる岩場に、めざすもう一つのパワースポットがあります。
海に沿って溶岩台地が続くこのエリアは、ププケアと呼ばれ、丘の上にはオアフ島最大の神殿、プウオマフカヘイアウが建つ神聖な場所。かつて、火の女神ペレがここを訪れた時、この地を護るために従者8人を岩に変えたと伝えられる巨石群が、サークル状に並んでいます。その只中に立つと、今なおペレの存在を感じさせるかのような、熱く力強いエネルギーを体感できるでしょう。
そろそろ日が傾いてきました。西の入江へ足を向け、大小の潮溜まりが連なるシャークスコーブというポイントへ。木陰に腰を下ろし、陽が落ちていくのを眺めていると、洋上から眩い光が差してきました。目を閉じ、その光を瞼一杯に感じてみます。そして、静かに息を吐いていきます。打ち寄せる波のリズムに合わせながら、心に滞っていた感情をゆっくりと流し、心身共に軽やかになっていきます。ゆっくりゆっくりと。
ワイキキからリケリケHwy.を経由し、クアロア牧場を過ぎて約20分。ライエショッピングセンター前の信号を右折してアネモクSt.へ入り、次の角を右折した突き当たり。
ライエから北上し、カフク風力発電所のすぐそば。赤い屋台が目印。
カフクからワイメア方面へ向かい、約10分。エフカイビーチ西端の岩場。
ホノルル在住18年のヒプノセラピスト&フリーライター。東京女子大学心理学科卒業後、富士通を経てハワイに移住。現地情報誌の編集者、ライター&翻訳家として活動するかたわら、2003年より、ヒ―リングサロン『Moe Hawaii』を主宰。「心のエステ」をテーマに、退行催眠や前世療法などの個人セッションのほか、ヒプノセラピー(催眠療法)をベースにしたワークショップ型のヒーリングツアー「6つの聖地と秘境をめぐる、楽園癒しの旅」を開催している。www.moehawaii.com
(‘Eheu Spring 2013号掲載)