古くからハワイでは、草木や岩はもちろんのこと、大自然が息づく野山や海、大地そのものにも、生命の源と繋がるエネルギー「マナ」が宿っていると考えられてきました。なかでも、宇宙の鼓動と繋がるような波動の高い場所は、聖域として崇められ、癒しや学びの場としても大切にされてきました。今回は、数々の伝説が残るカネオヘ湾を北上し、オアフ随一の聖地・パワースポットと名高いクアロアを訪ねましょう。
ワイキキからリケリケハイウェイを経由し、約30分。鬱蒼とした山中をドライブし、峠のトンネルを潜り抜けると、眼下に一面、紺碧の海と東海岸の町並みを見晴らす絶景のポイントが。息を呑むようなその眺望に向かって、ぐんぐん坂道を下りていくと、やがてカネオヘの町並みを抜け、珊瑚礁が広がる海岸線の道へ到達します。
遥か沖には、中国人の帽子を浮かべたようなチャイナマンズハットの島影。かつて王族のプライベートリゾートだったココナッツアイランドや、時折うっすらと白砂の島が現れることから「ラカの祭壇」と呼ばれるサンドバーも、この沖にあります。
切り立ったコオラウ山脈の山並みをバックに、心地よい貿易風を受け、適度な雨に潤うカネオヘ湾一帯は、豊かな漁場に恵まれ、清らかなエネルギーが流れる場所。その南国情緒溢れる景観を楽しみながら、古代養殖池が点在する海岸線を北上。10分ほどドライブすると、高々とそびえるクアロアの峰の麓に、オアフ最大の古代養殖池、モリイフィッシュポンドが姿を現します。
約800年前に伝説の小人メネフネが造ったと語り伝えられるこの養殖池は、広大なトロピカルファームの裾野にあり、滞った感情を浄化するのに最適な場所。肌に心地よい風を受けながら、静寂の中、鏡のような水面をしばし見つめていると、波立つ心も次第に静まり、クリアになっていきます。ここでゆっくりと時を過ごしたければ、南国の果樹が生い茂るトロピカルファームをトラムで巡り、養殖池をボートで一周するアリイツアーを利用するのもよいでしょう。
コオラウの緑美しい山々と渓谷に囲まれ、ハワイ語で「長い背中」と名づけられたクアロアは、眼下にチャイナマンズハットと珊瑚礁の海を望み、ハワイ州観光局の「オアフ島50選」にも選ばれた絶景のスポット。
現在は乗馬、デューンバギーなどのアクティビティが楽しめる牧場となっていますが、この一帯は古代より「オアフ島で最も神聖な土地」として崇められてきた聖域。その谷間には、伝説の洞窟や古代の神殿ヘイアウがあり、神話が数多く残されています。例えば、沖に浮かぶチャイナマンズハットもその一つ。その昔、火の女神ペレの妹、ヒイアカがこの地で大トカゲのモオを退治し、切り落とした尾を海に投げ込んだところ、この島になったのだとか。
クアロアの峰と両サイドに広がる美しい渓谷には、天と地を繋ぐパワフルな波動が流れていることから、後に世を治める王族の子息たちは、幼少期よりこの地で武術や治世のための教育を受けたと言われています。また、カフナと呼ばれる神官が、掟を破った罪人たちの罪を清めたり、戦いの折りには傷ついた人々を保護したという、癒しの場でもありました。
クアロアの無垢の自然に抱かれ、この地に宿るパワフルな「マナ」と繋がっていくと、心身の奥深くから清められるような感覚とともに、癒しが始まり、さまざまな気付きが上がってきます。特にマナが強く感じられる渓谷の奥へアクセスするには、クアロア牧場の乗馬ツアーやジャングルジープツアーがおすすめ。ゆっくりと一日、クアロアで過ごすだけで、深いところに滞っていた否定的な感情が自然と流され、穏やかな愛のエネルギーに充たされていくのを感じることでしょう。
ワイキキからリケリケハイウェイ経由でカネオヘ湾沿いを北上し、約50分。クアロア牧場手前のハイウェイ右手にトロピカルファームの看板がある。アリイツアーの申し込みは、ギフトショップ裏のフルーツスタンドで。
トロピカルファームから北上し、クアロアビーチパークを過ぎて、すぐ左手。
ホノルル在住18年のヒプノセラピスト&フリーライター。東京女子大学心理学科卒業後、富士通を経てハワイに移住。現地情報誌の編集者、ライター&翻訳家として活動するかたわら、2003年より、ヒ―リングサロン『Moe Hawaii』を主宰。「心のエステ」をテーマに、退行催眠や前世療法などの個人セッションのほか、ヒプノセラピー(催眠療法)をベースにしたワークショップ型のヒーリングツアー「6つの聖地と秘境をめぐる、楽園癒しの旅」を開催している。www.moehawaii.com
(‘Eheu Winter 2013号掲載)