天の神ワケアが地上に降り立ち、妻に迎えた大地の女神パパと暮らしていたと言われる、古代オアフの聖地ワオラニ。その後、神の踊り…フラの修練の場にもなったこの地で、女神たちが幾日もフラを舞い続けたところ、大地が揺れ、山が裂けて、現在のヌアヌ渓谷が形成されたと言われています。今回は、そんな古の伝説に思いを馳せつつ、聖なる存在が今なお感じられるパワースポット・ヌアヌ渓流沿いの神秘の森を訪ねましょう。
ホノルル西方からパリ・ハイウェイを北上し、約10分。ヌアヌパリ・ドライブへ右折し、緑溢れるコオラウ山麓のジャングル地帯へ入ったところに、「妖精の森」と呼ぶのにふさわしい、幻想的な森と癒しの散策路があります。
ジャッド・トレイルと名づけられたこの森の小径は、のんびりと歩き、1時間ほどで一周するループ状の散策コース。巨大なバニヤンツリーが鬱蒼と生い茂るトレイルの入口から森の中へ一歩足を踏み入れると、清々しい空気がひんやりと身体を包み、身も心も気持ち良くリフレッシュされていくのを感じます。木漏れ日の差す樹々の間を歩いて行くと、時折目に飛び込んでくるきらきらと眩い光。あたかも森のそこかしこにいる妖精たちが、木陰から優しく見守っているかのようです。
幾重にも枝が垂れ下がるバニヤンの木立の中を進んで行くと、ほどなく視界が開け、苔むした岩の間に清流が現われました。足首ほどのせせらぎを岩伝いに渡れば、その先は閑静な竹林。幽爽な竹のトンネルを潜り抜けて緩やかな坂道を上って行くと、やがて天まで届きそうなクックパインの木立が一面に広がっていきます。ここは、森の精霊たちの清廉なエネルギーが肌に感じられる場所。天に向かってまっすぐそびえる樹々に触れ、その幹に抱きついてみると、優しい温もりとともに、すべてを受け容れるような大らかな波動が身体いっぱいに伝わってきます。ここでしばらく深呼吸。ゆっくりと息を吐きながら、心の奥底に滞っている感情を解放し、樹々から放出される酸素と清らかなエネルギーをたっぷりいただくような気持ちで新鮮な空気を吸い込みます。すると、心身の奥深くまですっきりと癒されていくのを感じます。足元を見下ろせば、クリスマスベリーの赤い実がそこかしこに…。さらに歩みを進めると、その先には甘い香りを漂わせるストロベリーグアバの林が広がっています。直径2センチほどの赤い実の中は白くジューシー。一つ口にしてみると、苺を淡白にしたような爽やかな味わいです。
繁みの向こうから聞こえてくるせせらぎの音。林を抜け谷川へ下りて行くと、小さな滝つぼがあり、そこはロコの遊び場にもなっている憩いのスポット。渓流の爽やかな風と水の音を楽しみながら、ここから川沿いの岩場を上流へゆっくり上って行きます。周囲には苔むした岩やシダ、バニヤンの巨木が幻想的な世界を作り上げ、そこだけ時間が止まっているかのよう。崖上には神々を祀る祠のような大岩もあり、太古の森に迷い込んだような気持ちになります。さらに少し上ると、再び竹林が見えてきました。ここでループを一周。いつの間にか、身体中に新たな力がみなぎっているのを感じます。
「妖精の森」でたっぷりと森林浴を楽しみ、エネルギーチャージをしたら、程良くお腹が空いてくる頃。パリ・ハイウェイに戻り、ホノルル方面へ向かうと、まもなく右手に見えてくる閑静な住宅街の奥に、オアフ最大級のバニヤンツリーを庭に配したベジタリアンカフェがあります。ヒンズー寺院のダイニングが昼時は一般開放され、ベジタリアンビュッフェが楽しめるというもの。森の心地良い風が吹き抜けるテラス席で食べるヘルシーランチは、他で味わえない至福のひとときです。日替わりのメイン料理に加えて、カレーやターメリックライス、サラダ、ハーブ水、デザートと盛りだくさんの内容で10ドル。デザートは、バニヤンの木陰でどうぞ。
ワイキキからH1フリーウェイ経由でパリ・ハイウェイに入り、ヌアヌパリ・ドライブへ右折。道なりに進み、路上まで枝を伸ばしているバニヤンツリーの手前、右手にトレイルの入口がある。
パリ・ハイウェイをホノルル方面に戻り、コエルホ・ウェイへ右折して突き当たり。
ホノルル在住18年のヒプノセラピスト&フリーライター。東京女子大学心理学科卒業後、富士通を経てハワイに移住。現地情報誌の編集者、ライター&翻訳家として活動するかたわら、2003年より、ヒ―リングサロン『Moe Hawaii』を主宰。「心のエステ」をテーマに、退行催眠や前世療法などの個人セッションのほか、ヒプノセラピー(催眠療法)をベースにしたワークショップ型のヒーリングツアー「6つの聖地と秘境をめぐる、楽園癒しの旅」を開催している。www.moehawaii.com
(‘Eheu Summer 2014号掲載)