古くはカメハメハ大王の避暑地、その後は輸出用パイナップルの一大産地として名をはせたが今は本来の静けさを取り戻し、2つの高級リゾートホテルと雄大なチャンピオンシップゴルフコースがある島として世界中のリゾート好きに知られるラナイ島。
神話に彩られた巨岩、白砂の美しいビーチ、緑豊かな牧草地、そして緋色にも見える赤土の大地と小さな島でありながら、様々な姿を見せるラナイの魅力を紹介したい。
(Text: Fumiko Nakata, Photos: Linny Morris)
ハワイ諸島の中心に位置する小さな島、ラナイ島。パイナップルで成功した島、高級リゾートの島、カメハメハ大王の避暑地。実はさまざまな姿を見せる、ドラマチックな島なのだ。
長い間、ラナイ島には人々を食べてしまう悪霊が住んでいると信じられており、1500年代まで人は住んでいなかった。ハワイの神話では、若い王子のカウルアアウがマウイ島のパンの木をすべて取りつくしてしまう悪事を働いたため、マウイ島の長であった父からラナイ島に追放されてしまう。悪霊の住むラナイ島では生き残れないと思われたカウルアアウだったが、その英知と戦略で悪霊を倒し、マウイ島の父からその勇気と忍耐力を認められ、ラナイ島の長となった。彼はハワイのその他の島から移り住むことを推奨し、ラナイ島は海岸沿いから繁栄したとされている。1800年代にカメハメハ大王がハワイを統一した後はラナイ島南部がカメハメハ大王の避暑地となり、大王が釣りを楽しんだ跡が今も残されている。
その後、ハワイ諸島に西洋文化が入ってからは、ラナイ島は買収され、中央部は涼しい気候を活かして牧場へと開拓された。その頃に、現在もラナイ島独特の景観を作り出しているクック・パインツリー(ノーフォークマツ)が植林された。その後、ジェームス・ドールに買い取られ、世界でも有数の輸出用パイナップルの産地となったのだ。
現在はフォーシーズンズホテルが2カ所にあるリゾートアイランドに変わったが、島の舗装されている道路は50㎞足らず、広大な手付かずの自然が残されており、今なお太古のハワイが感じられる島でもある。
ハワイの穏やかな青い海が広がる海岸線から一気に丘を登ると、海のリゾートから車でたった15分とは思えない高原の風景が広がる。そこは海岸線よりも少し涼しく感じられ、見事に育った針葉樹のパインツリーが道路の両側にきれいに並んでいる。その先は見事な緑の牧草地が広がる。
牧草地を抜けると、小さなラナイシティが見えてくる。プランテーションハウスが大切に改築・改装され、ギャラリーや飲食店が静かに建ち並ぶ町並みに背の高いビルはない。ラナイ島の住人はおよそ3000人。この静けさと豊かな自然を求めて、ハワイ諸島の他の島やアメリカ本土から移り住んできた人も少なくない。
緑の牧草地から進むこと、車で約30分。今度は強い風が吹き渡る、荒涼とした見渡す限りの赤土と石群が現れる。色も気候も、なんとも変化に富んだラナイ島の姿を実感できるのだ。
ラナイ島の自然を別の角度から楽しめるのがマネレ・ゴルフコースだ。フロポエ湾を見下ろす高台にあり、ジャック・ニクラウス設計ならではのチャレンジングな気持ちをかき立てるレイアウト。
眼下に広がる太平洋をウォーターハザードにしたダイナミックなセットアップで手付かずの大自然を楽しめる。冬にはクジラを目にするチャンスもあるだろう。
ゴルフをしない人もこの雄大な景色が楽しめるのが併設のレストラン「VIEWS at Manele Golf / ビューズ・アット・マネレ・ゴルフ」。ここからも、芝の緑が美しいフェアウエイを眺めながら、地元の食材をふんだんに使用したハワイらしいカジュアルな料理が楽しめる。
ハシナガイルカが見えることも多い、海洋保護区のフロポエ湾を見下ろす高台に建つ「フォーシーズンズリゾート ラナイ」。白砂の海岸線ははるか30キロ先まで続く。ホテルロビーのある建物を中心に8棟の2階建ての建物が、テーマに沿ってしつらえられた5つの庭園とくつろぎのスペースを挟んでゆったりと広がる。自然の力にあふれ、開放感がありながらも、どこか凛とした静けさが漂い、どこを切り取っても絵になる大人のリゾートホテルだ。南国らしい花と緑が美しい庭園や水音で清涼感を演出する滝や小川、鯉が泳ぐ池は、プライバシーを保つのにも大きく役立っている。当ホテル滞在中、ロビーやプール、レストラン以外でほかの滞在者を感じることはなかった。
プライバシーが保たれたリゾートホテルのレストランにおいて、究極のプライベートダイニングのセットアップサービスがある。オーシャンフロントに特別席が用意され、夕暮れとその後の星空を眺めながら、前日に料理長と相談して決めた5コースの特別料理が提供されるのだ。キャンドルとフラワーアレンジメントでエレガントに演出されたロマンチックディナーは大切な思い出になることだろう。
南の島の陽光が降り注ぐプールは2つ。一つは21歳以上の大人専用だ。どちらも24時間オープンなので、併設の温かいジャグジーに身体をゆだねながら、満天の星を楽しむこともできる。プールサイドサービスとして、冷たいタオルやエビアンスプレー、フレーバーウォーターやアイスキャンディーで喉を潤したりもできる。専門の職人によるサングラスクリーニングサービスもある。
マリブ・ファーム・バー / MALIBU FARM BAR
「新鮮、オーガニック、ローカル」をモットーとしたカリフォルニア州ロサンゼルス発のレストランのバー。プールサイドに設けられオーシャンビューが楽しめる。搾りたてのフレッシュジュース、トロピカルカクテル、地ビールなどで、リラックスした時間が過ごせる
ワン・フォーティー / ONE FORTY
ミディアムのステーキが完璧に仕上がる温度が店名の由来となっている、ホテルのメインダイニング。本格的な和食メニューも揃った朝食ビュッフェとアラカルトメニュー、ディナーでは、自然の牧草で育った高級プライムビーフや和牛、近海で獲れた新鮮な魚介も堪能できる。
ノブ・ラナイ / NOBU Lanai
東京で寿司職人としての技を磨き、基本に忠実ながらも、南米での経験も生かした松久信幸のセンスが光る革新的な日本料理レストラン。オリジナルの日本酒が楽しめるラウンジバーや鉄板焼きステーションと寿司カウンターが加わり、ハワイらしい景色とともに本格和食が楽しめる。
プライベートが保たれた落ち着いて滞在できる客室
ホテルの室内は落ち着く茶系のワントーン。心静かに滞在を楽しめる。ハワイの神話や伝説をモチーフにした装飾が施され、リビングエリアやバスルームの壁は、ハワイの作家のアートが飾られていて目を楽しませてくれる。
ハワイらしい伝統を大切にしながらも、設備は最新。照明や空調、ブラインドのコントロールはボタン一つで直感的に操作できるうえ、75インチの大画面TVやベッドサイドテーブルには充電ステーションと、現代生活への配慮も十分。館内設備やイベントスケジュールもアイパッドで確認でき、追加アメニティーの依頼や24時間のルームサービス、配膳時間まで指定が可能。まさに世界中のアワードを取り続けるトップリゾートホテルだ。
(’Eheu Winter 2017号掲載)
※このページは「’Eheu Winter 2017」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。