緑に覆われた島・カウアイ島は、大自然がたくさん残る神秘の島。ハワイの離島の中でも比較的規模が小さく、2~3泊でも十分に観光を楽しめるとあって、家族連れも含めて密かに人気のある離島です。このページでは、ワイメア渓谷などのカウアイ島の人気観光名所をはじめ、リフエやハナレイなどカウアイ島の主要タウン別におすすめ観光情報をご案内します!
ハワイ諸島の最西端に位置するカウアイ島の主要道路は、基本的にぐるりと島をU字に巡るハイウェイが1本。ハワイ・オアフ島同様、北海岸と西海岸は山で阻まれていて通行不可能だ。まずはカウアイ島の地図で全体の位置関係を覚え、レンタカーを借りて空港出口を出たら、真っ直ぐ、または左に行けばリフエの町とサウス&ウエストショア、右に曲がればカパアとノースショア、と頭に入れよう。
リフエ空港があり、カウアイ郡都として官公庁が集まる町だが、リゾートとしての見どころもたくさん
東部にあるカウアイ島一人口の多い町。海側にはバイクパスがあり、暮らしに便利だ
ノースの小さな町は、入り口のつり橋とビーチの埠頭が目印。ハワイ一のタロ芋産地としても有名
天候の良いビーチタウンは、ハワイのサトウキビプランテーション発祥の地としても知られる
クック船長がハワイに初めて到着した地がワイメア。今もプランテーションの風情が残る趣き深い町
レンタカーを借りる際は、食事やアクティビティーのクーポンや地図・マップも掲載されている最新観光情報冊子も忘れずに。空港のあるリフエを拠点として、まずは宿泊地方向へ向かおう。カウアイ島のドライブはごくシンプル。事前に予定をしっかり立て、ワイメア渓谷(ワイメア・キャニオン州立公園)やノースショアに行く場合は、着いた翌日の早朝からスタートするとスムーズ。カウアイ島での食事やショッピング、買い出しはリフエかカパアの町が最適。
カウアイ島の郡都リフエは、一見官庁街とビジネス以外特色がないように見えるが、実は19世紀末から20世紀半ばまで、広大な土地を擁するプランテーションタウンとして栄えた歴史ある町である。町の西側にある大邸宅「キロハナ・プランテーション」は、1930年代に当時の「グローブ・ファーム・シュガー・プランテーション(現グローブ・ファーム社)」のオーナーだったゲイロード・ウィルコックス氏が建立し、現在は国定歴史建造物に指定された由緒ある建物だ。
敷地内には現在、さまざまな店やレストラン、列車などがあり、一般に公開されている。また、ワイルアの滝やカラパキ・ビーチなど、観光客の集う名所も多数。ライス・ストリートやナウィリウィリ・ロードには穴場の小さな店やレストランも多数あるので、散策を楽しんでみたい。
ハワイ州内に数あるサイミンレストランの中でもナンバーワンの呼び声が高いのが、リフエの裏通りにあるこの小さな店。人目につかないところに位置するのに、連日地元住民と観光客で超満員!ランチ時には30分待ちも珍しくないので、できるだけ余裕を持って行こう。中は日本の屋台風の昔懐かしい装飾で、お洒落とは無縁なのがまたいい。メニューは少ないが、「スペシャル」を頼むと具がたくさん入ったサイミンにありつける。自社工場で作る麺と、海老のだしを使うという澄んだスープがお腹に優しく美味!ここでは、サイミンにプラスしてビーフ、またはチキンの串焼き(Skewers)、そしてデザートに手作りのリリコイ・シフォン・パイを食すのが通だ。
リフエ空港から5分あまりの官公庁街「ライス・ストリート」に位置する、カウアイ島で一番新しいブルワリーがここ。オーナーのジムさんは、以前他州でソフトウェア関係の仕事をしていたそうだが、趣味でビールの自家醸造を始めてその魅力の虜になったという。カウアイ島移住後に準備を進めて、息子のジャスティンさんとついに1年前このブルワリーをオープンした。店には現在、ライトからダークまで好みに合わせて選べるビールが8種揃っていて、サンプルが2ドル、グラス4~5ドルと非常にリーズナブル。ビール通にも美味しいと評判の店だ。現在は木曜日のみ店内で食事も楽しめるが、「今後事業を広げていく予定」だとか。
カウアイ島南部のカラヘオで、ハワイ産のサトウキビとカウアイのきれいで美味しい水を使ってラムを醸造する会社が「コロア・ラム・カンパニー」。プランテーション風の外観が美しい同社のショップは、現在リフエにある旧邸宅跡「キロハナ・プランテーション」内に位置する。店内には同社が製造するラム酒5種や、ラム酒を使ったさまざまな商品、ジャムなどを始め、タオルやグラス、Tシャツなど、お洒落なセンスで人気の同社ロゴグッズも満載!ショップの隣にあるガラス張りのテイスティング・ルームでは、30分に1回無料の試飲会が行われ、他の観光客たちと共に、ラム数種やラムを使ったカクテルのマイタイ、そしてラムケーキを味見できる。
リフエから北に向かった東海岸の町が、カウアイ島一の商業区域であるカパアだ。古くからカウアイ王家が居住した聖なる地ワイルアもカパア内にあり、1992年のハリケーン・イニキ後に倒壊して営業を停止したままのホテル「ココ・パームス」が町の目印となっている。カヤックなどのレジャーも盛んな大河ワイルア川と上流にある神秘的なシダの洞窟、そして川が流れ込むワイルア・ビーチも観光名所の一つだ。
現在カウアイ島で敷設が進められているバイクパス「ケ・アラ・ヘレ・マカラエ」は、カパア中心街の海側に伸びており、車の通らない安全な環境で自転車やウォーキング、ジョギングを楽しむことができる。またワイルア山側の住宅地には本格的なヒンドゥー寺院があり、午前中は信者以外にも一般公開されている。
カウアイ島全体の海岸沿いに敷設が進む海辺のバイクパス。第一期工事はカパア付近にある広大な海浜公園、リドゲート・パークから、カパア中心街の海沿いを通り、北方向へ向かうドンキー・ビーチまでが既に終了し、カウアイ島民のエクササイズや憩いの場となっている。この先、同パークから南方向のリフエへ向かって、第2期敷設工事が予定されている。現在敷設が終了したのは全長約8マイル程度で、端から端まで自転車で片道1時間程度、歩くとたっぷり4~5時間はかかる。海沿いを走るバイク・パスでは、カウアイ島独特の変化に富んだ風光明媚な景観が楽しめるほか、所々にカウアイの歴史を解説する歴史案内が建てられていて読みながら進むのもいい。
神聖なワイルア川が流れ、カウアイ王家が居住した谷を見渡す住宅地奥に位置する、353エーカーの敷地を持つヒンドゥー教一派総本山の寺院。鬱蒼と茂るジャングルのような緑深い谷の中に、ひっそりと静かに建つ荘厳な建物や彫刻の数々はまさに圧巻のひとこと。現在は、インドから来た専門職人を使い、同国直輸入の石を彫刻した新しい礼拝堂「イライヴァン・テンプル」が建設されている。同礼拝堂見学はガイドツアー参加者のみ可能。寺院は毎日午前9時~午後12時まで開放されており、入場は無料だが寄付を受け付けている。ガイドツアーは不定期のため問い合わせが必要。奉納されている巨大な水色のクリスタル「アースキーパー」も見逃せない。
カパアのワイポウリ・ショッピング・センター内フードランド横にある本格的なインド料理店。付近のヒンドゥー教寺院僧のお墨つきで、メニューはベジタリアン向けとそうでない人向けのものに分かれている。日本人には聞きなれないメニューが並ぶが、抵抗なく食べられるばかりか、スパイスのぴりっと効いたインド料理は驚くほど味わい深く美味!ひと口食べたら、ファンになること間違いなしだ。メニューが読めなかったり、さまざまな料理の違いが分からなかったら、スタッフに気軽に尋ねれば、何がおすすめか解説してくれる。火曜定休で水曜日のディナーと毎日のランチはビュッフェスタイル。
リフエから車で約1時間、高級住宅街のプリンスヴィルを過ぎ、ハナレイ湾を見渡すカーブを曲がれば、町の目印、小さなハナレイ橋まであと少し。のんびりとした時間が流れるカウアイ島の小さなビーチタウンは、美しい湾と農作物の運搬用に利用されていたというハナレイ埠頭が観光名所として有名。冬にはハワイ最大級の大波が訪れるため、サーフィンでも有名なこの町は、ハワイ一のタロ栽培量を誇る地域でもある。入り口一帯に広がるタロ水田は、ハワイの州鳥ネネを始めとした絶滅危機に瀕する数々の野鳥生息地として国定野生動物保護区域に指定されている。
町にはハナレイならではの可愛いお店やレストラン、アートギャラリーが連なり、観光がてら散策する価値は十分。ハナレイからさらに先に進むと、一方通行の橋を渡る風光明媚なドライブが楽しめ、最終地点のケエ・ビーチ山側には有名なカララウ・トレイルの入り口がある。
サンフランシスコからカウアイ島に移住したシェフ、ジム・モファット氏がオーナーを務めるハナレイのレストランバー。モファット氏は、南フランスやイタリア、スペイン、ポルトガルなど、南欧料理のバックグラウンドを持ち、クラシックとモダンを融合したスタイルを得意とする。カウアイ産の新鮮なオーガニック農産物や畜産物、獲れたての魚介類を主に使用して作り出すメニューの数々は、シェフならではの洗練されたセンスがあり、シンプルながらも細部にまでこだわりが見られる。ハナレイの社交場として、観光客だけでなく、地元住民にも人気があるレストラン。
ハナレイから先へ30分ほどドライブすると、カウアイ島北部の先端部に到着。そこには、海辺まで緑深く美しい山々が迫り、神秘的な鍾乳洞を擁するハエナ州立公園と、山側のナパリ・コースト州立自然公園があり、かの有名なカララウ・トレイルはここからスタートする。片道11マイル(約17.6km)のトレイルは起伏が激しく、そう簡単にはゴール地点にたどり着けない。一寸先は険しい崖と数百メートル下の海、という環境を歩くので、普通は仲間数人と共に3~4日分のキャンプ用具をかついで出かけるような場所で、忍耐力と持久力を要する。
キャンプをする場合、ハワイ州政府発行の許可証が必要。駐車場はすぐに埋まるため、早朝7時前後に現地に着いて出発し、途中の地点で1泊、翌日ゴールに到着というパターンが一般的だ。キャンプする余裕がない人には、半日で終わるトレイルコースがおすすめ。同じトレイルをハナカピアイ・ビーチまで歩くと、往復約4マイル(約6.4km)ほど。歩くスピードによって、約4時間~4時間半程度でスタート地点まで戻ってこられる。
その先のハナカピアイ・フォールズまで行く場合は、往復約8マイル、約7~8時間は必要となる。いずれにしても、しっかりしたトレッキングシューズと日除けの帽子、水分補給のための水とスナック持参は必須。半日でもかなりのエネルギーを要するトレッキングなので、心と身体の準備はしっかり整えたい。トレイルは岩場が多く、崖には当然柵も設けられていないので、小さな子供や足腰、心臓、呼吸器官などが弱い人には不向き。トレイル口の右側には、シュノーケリングで有名なケエ・ビーチが広がる。
カウアイ島・南海岸の中心地コロアは、ハワイで最初にサトウキビプランテーションの歴史が始まった場所。その名残りはオールド・コロア・タウンの街並みに今も色濃く残る。ポイプ地区は雨の多いカウアイ島の中で最も晴天率が高く、高級リゾート地として人気で、PGAコースの「ポイプ・ベイ・ゴルフ・コース」などの一流ゴルフコースもいくつかある。透明度の高い海と数々のサーフスポットを持つ「ポイプ・ビーチ・パーク」は、住民や観光客の憩いの場として毎日賑う。同パークはまた、毎日のようにハワイアン・モンクシールやカメが現れるスポットとしても有名。絶滅危機に瀕する保護動物であるモンクシールには、触ったり一定以上近づくことは違法なため注意しよう。
ビーチの近くには、「ポイプ・ショッピング・ビレッジ」や「ザ・ショップス・アット・ククイウラ」など、個性的な店やレストランが並ぶショッピングスポットもある。
ポイプに位置するカウアイ島で一番新しいショッピングセンター「ザ・ショップス・アット・ククイウラ」内にあるヘルスフード・マーケットとカフェ。朝食からオープンしており、アメリカン・スタイルの卵とベーコン、トーストのシンプルなセットから、レモン・リコッタ・パンケーキ、クレープなどが楽しめる。ランチとディナーはキッチンの窯で焼いた自家製ピザやハンバーガー、タコス、サラダなどの軽食が中心だが、どれもカウアイ島産の新鮮な食材をふんだんに使っていてフレッシュな味わい。時間がない時やお金をかけたくない時、手軽でリーズナブルに、しかも美味しく食べられるのがうれしい。
コロアから車で約7~8分ドライブした山側、カウムアリイ・ハイウェイ上にあるお洒落なカフェは、付近住民だけでなく、カウアイ島西海岸のワイメアや南海岸のポイプに向かう途中の観光客が足を止めて、ゆっくりと美味しい食事を楽しめる場所として人気がある。新鮮なカウアイ島産の野菜はどの料理にもふんだんに使われ、フレッシュな味わい。自分で具を指定できるオムレツやパンケーキ、ラップなど豊富なメニューのブレックファストや、ボリュームたっぷりのサンドイッチやバーガー、サラダが楽しめるランチ、本格的な魚介や肉料理が楽しめるディナーなど、バラエティー豊かなメニューが人気を集めている。自社ブレンドのコーヒーも美味!
カウアイ島、そしてハワイのサトウキビプランテーション事業が始まった地として知られるのがコロアの町。ノスタルジックで可愛らしい建物の数々が、古きよき時代のハワイの風情を残している。現存の「オールド・コロア・タウン」は、コロア・ロードとポイプ・ロードの角付近に、ワイコモ・ストリームを挟んで点在する古いコテージ風の建物群で、現在はアパレル店やギャラリー、ギフトショップ、マーケット、レストランなどが入居し、毎日観光客で賑わう人気の観光スポットに。店の後方には、オールド・コロア・タウンの歴史センターが位置し、プランテーション時代のカウアイ島の古い写真や、当時使われていた機器など、珍しく貴重なアイテムを見ることができる。
カウアイ島西海岸のハナペペ~ワイメアでは、近年まで大規模なサトウキビ栽培が続けられていた。ノスタルジックなプランテーションの街並みがそのまま残るハワイでも珍しい地域で、どちらも歴史保護地区に指定されている。ハナペペは港町として栄えたがその後衰退し、最近になってアーティストたちが街を復興。今では16軒のギャラリーが立ち並ぶ。ワイメアは、英国の探検家、キャプテン・クックが西洋人として初めてハワイに上陸した場所で、町の入り口には彼の記念碑が立てられている。ワイメアの町を過ぎると、右に「太平洋のグランド・キャニオン」と呼ばれるワイメア・キャニオン(ワイメア渓谷)へ続く道「ワイメア・キャニオン・ロード」、左には以前プランテーションの労働者が居住したコテージを改造したホテル「ワイメア・プランテーション・コテージ」がある。
ハイウェイと並行して伸びる一本道、ハナペペ・ロードにあるのが、「カウアイのビッゲスト・リトル・タウン」、ハナペペだ。以前は港町として栄え、ハリウッド映画の舞台となったこともあるこの小さな町は、カウアイ島に移住したアーティストたちによって昔の姿を残したまま復興され、今では道の両側に16軒のアート・ギャラリーが立ち並ぶ「アートの町」として有名。毎週金曜日夜、ギャラリーが夜遅くまでオープンし、地元の食や音楽を楽しめる「ハナペペ・アート・ナイト」が開催され、付近の住民や観光客で賑わう。お洒落なギャラリーを散策しながら、フレンドリーなローカルたちに混じり、ハナペペの雰囲気を満喫してみたい。
カウアイ島西海岸にあり、ツアー船や漁船の発着港として利用されているポート・アレンに位置する自家醸造ビールのブルワリーー兼グリル。2年半前にオープン以来、観光客にも地元住民にも人気で、ウエストサイドのたまり場的存在となって地元に溶け込んでいる。オーナーのデイヴィッドさんは、カリフォルニア州でビール醸造専門学校に通い、その後、同州やカウアイ島など、数多いブルワリーで修業を積んだ経歴を持つという。ビール醸造経験の長いオーナー自らが作るビールは、さすがのプロの味!獲れたての魚を漁師から購入するという魚料理もレストランの目玉だ。ボートツアーの後に寄って、冷たいビールをぐいっと楽しみたい。
地元でサトウキビプランテーションを経営していた会社が、20世紀初頭に労働者やマネージャーの住居用として建設したコテージの数々を改装したホテルは、ワイメアの町から出てすぐ、ワイメア渓谷の麓に位置する。美しく手入れが施された広い緑の芝生に、当時の様子が蘇るような可愛らしいプランテーション様式の家々が点在。コテージはオールド・ハワイアナ・スタイルのトロピカルかつシンプルな装飾でまとめられ、ワンルームから4ベッドルームまである。キッチンには食器や調理器具、BBQグリルまで何でも揃っているので便利だ。海辺のハンモックやラナイでのんびりして、何もしない贅沢なバケーションを楽しみたい。
(Lighthouse Hawaii 2014年10月1日号掲載)
(Text: Yoshiko Karson)
リフエ空港からカウアイ島西部へ向かい、車を走らせること約30分。ハイウェーの右側にぽつんと立つ「ウェルカム・トゥ・ハナペペ」という手書きの小さなサインを目印にハイウェーを外れ右折すると、そこに「カウアイで一番大きな小さい町(Kauai’s Biggest Little Town)」と呼ばれるハナペペの中心街がある。中心街といっても、車の通りがほとんどない静かな1本道「ハナペペ・ロード」があるだけだ。
道の両側には20世紀初頭にアジア人移民によって建てられた古いカントリー・ウエスタン映画風のノスタルジックな建物が見られる。1930年代から戦後までは米軍兵士が通う繁華街として栄え、戦後廃れたカウアイ島・ハナペペでは、1990年代後半から復興計画が始まった。この道に建つ建物の多くは歴史的建造物に指定されており、1990年代後半から2000年代前半にわたり新しいオーナーによって改築されたものがほとんどだ。現在は道の両側に16軒のアートギャラリーと カフェ、教会などが並ぶ。その中でもひときわ目立つ緑のプランテーション風建物が、手描きタイルと陶器の製作販売を行うギャラリー「バナナ・パッチ・スタジオ」。
オーナーのジョアンナ・キャロランさんは、99年にこのスタジオ兼ギャラリーを買い取って改築し、ハナペペ復興の立役者となったアーティストだ。それまで自宅でビジネスを経営していたジョアンナさんにとって、私財を投じて崩壊寸前の歴史的建造物を購入し、ギャラリー経営を始めることは「とても勇気がいる決断だった」という。それに加え、ビジネスを繁盛させるためにも、当時は観光客がほとんど来なかったカウアイ島・ハナペペ全体の復興まで考える必要にも迫られた。
その後2000年代初頭、ハナペペは「アートの町」として見事に復興。ジョアンナさんは、「他のアーティストたちと協力し合えたのが幸運でした」と話す。今ではほとんどの店が閉まる日曜日を除き、多くの観光客がのんびりと店を回る一大観光名所に変身した。そんなハナペペで毎週金曜日の午後6時~9時まで行われるのが「ハナペペ・アート・ナイト」。地元住民が楽しみにするこのイベントは、ハナぺぺでギャラリーを経営するアーティストたちが共同開催するものだ。
この日以外は、夜になるとほとんど人通りのなくなる道で、金曜日だけはギャラリーが夜遅くまで営業し、プレートランチの屋台やエンターテインメントも提供され、観光客や地元住民が入り混じって楽しむ。ギャラリーの横には、一家総出でテーブルを出し家族の夕食会を開く地元住民の姿。写真を撮ってもいいかと聞くと「座って一緒に食べて行きなさい、これも持って行くといいよ」とアボカドを差し出す。ハナペペの魅力は芸術だけではない。ここはゆったりとした空気が流れ、今でも人々の屈託ない優しさと人情が見られる、古き良きハワイのノスタルジーに溢れる町なのだ。
(’Eheu Autumn 2015号掲載)
(Text/Photo: Kei Souma)
オアフ島と同程度の陸地面積に人口6万人余りしかいない静かな島、カウアイ島。この島のリラックスした雰囲気と大自然に魅せられ、米本土から移住する人は多い。喧騒とは縁のないカウアイの “繁華街”と呼ばれるカパアで、はちみつワイン「ミード」を製造販売するステファニー・クリーガーさんもその一人だ。
米東部の古都フィラデルフィア出身のステファニーさんは、大学卒業後1997年にカウアイ島へ移住。化学と海洋生物学の学位を持つ彼女は、カウアイの自然環境と農業を保護する観点からはちみつや水などを原料にするアルコール飲料「ミード」に興味を持ち、2000年には地産品を使って自宅ガレージでミード製造を始めた。
「ミード作りを始めてから8年間は、さまざまな食材や味を試しました」とステファニーさん。それと同時に、彼女はカウアイ島の地元社会や農家などとのつながりを深め、ミードを売り出す将来的なビジネス計画を着々と進めていった。
2009年には初めて自身のブランド「ナニ・ムーン」をボトルに詰めて販売開始。カパアの街に、 工場とテイスティングバーを兼ねたワイナリーならぬ「ミダリー」をオープンした。ステファニーさんは現在、自家養蜂場から採取するはちみつと、カウアイの美味しい水、地産の新鮮なフルーツを使い、小さな工場で従業員とともに手作業でミードを作り、ボトルに入れてテイスティングルームで販売している。ビジネスは、州内の多くのワイン店やスーパー、レストランに出荷するまでに成長した。
また、ミダリーでは養蜂場で採取した自家製はちみつも販売している。はちみつと水、イースト菌を発酵させて作るミードは、アフリカやヨーロッパ、アジアで数千年前から飲まれていた歴史上最古のアルコール飲料だという。さまざまなフルーツやハーブなどを調合して作られ、病を癒す薬として使われていたこともあったそうだ。しかし、ステファニーさんの作るミードは薬とはほど遠い味。飲むとフルーツのフレッシュなフレーバーとはちみつのみがふわりと口に広がり、ほのかで心地良い酔いに包まれる。病が治るかは定かではないが、飲むといい気分になることは間違いない。
「ハネムーン(Honeymoon)」は、結婚したばかりの2人がはちみつ(ハニー)を使ったミードを楽しむ期間が語源だと伝えられる。「ハワイを訪れるカップルや新婚さんにも、ミードで甘くロマンチックなひとときを楽しんでほしいですね。将来は、養蜂場見学後、ミダリーを訪問するツアーの実施も視野に入れています」
(‘Eheu Summer 2016号掲載)
※このページは「Lighthouse Hawaii 2014年10月1日」「’Eheu Summer 2016」「’Eheu Autumn 2015」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。