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匠の技で作る希少な木製サーフボード「ハレイワ・サーフボード・カンパニー」

木製サーフボード

世界屈指の個性あふれる波を持ち、世界中のサーファーたちを魅了するハワイ・オアフ島北部のノースショア。海辺から程近い赤土地帯に工場を構える「ハレイワ・サーフボード・カンパニー」で、今では希少な木製サーフボードを1枚ずつ匠の技で作り続けているのがロン・クラインだ。
(Photos: Makoto Kiryu)

古代、サーフィンの始まりとともに誕生した木製サーフボード

ハレイワ・サーフボード・カンパニーサーフィン発祥の地ともされるハワイ。古代ポリネシアの人たちは、ウッドボード、いわゆる木の板を使って波乗りを楽しんでいたという。そんな時代から戦後までの長い間、サーフボードの素材は木が主流だった。時代の流れとともにその素材は、軽くて強度のある発泡フォームなどへと進化を遂げている。
 
そんななかで、木製サーフボードを作り続けているクラフトマンが、ロン・クラインだ。
 
アメリカ・カリフォルニアで生まれ育ったロンは、学生時代にサーフィンをするために何度もハワイを訪れたという。暖かい気候、安定したパワフルな波、そしてハワイの文化、人に魅せられ、彼は1992年、ハワイへ移住した。サーフィンにベストなコンディションを持つノースショアに居を構えた彼は、友人だったサーフボードシェイパーから依頼を受けたことをきっかけに、自身の建築デザインや建設業の経験を生かし、木製サーフボードを作り始めた。

4年をかけて完成させた独自の木製サーフボード製作方法

ロンの工場『ハレイワ ・サーフボード・カンパニー』があるのは、世界のビッグウェイバーたちがやってくる町ハレイワに程近いワイアルア。ハワイ独特の赤土に囲まれたサトウキビ工場の跡地に佇んでいる。
 
彼が作る木製サーフボードは琥珀色に輝き、温もりを持っている。ハワイをリスペクトする彼が使うのは、ハワイに生息する木が中心だ。コア、ミロ、マンゴー、カマニ、マホガニー、ユーカリの木など。それぞれに木目や色味が違う、個性あふれる木々の魅力を生かしてデザインする。4~5種類の木を組み合わせて1枚のサーフボードを作るのが彼のスタイルだ。
 
見た目に美しい木製サーフボードだが、これを作るのは「チャレンジだった」という。木を素材とするサーフボードの難点は重量だ。軽い素材がサーフボードの主流となり、サーファーたちの木製ボードへの興味が薄れていくなか、彼は挑戦を続けた。4年の歳月をかけ、ついに1995年、軽くするために中を空洞にしながらも、強度を保つサーフボードの製作技術を見つけた。「4年もかかったんだからね。簡単ではなかったよ」。作っては失敗の連続で試行錯誤をを繰り返したという。

ハレイワ・サーフボード・カンパニー
色も木目もさまざまな木々を組み合わせてサーフボードをデザインする
ハレイワ・サーフボード・カンパニー
組み合わせたボードをシェイプする

木製サーフボードの製作はすべて手作業

その工程は果てしなく多い。まずはデザイン画を描くところから始まる。デザインは、彼が14歳で始めたサーフィンを通したライフスタイルやハワイの海、そしてハワイが誇るユニークな木々の性質などからインスピレーションを受けるという。選び抜いた木を1ピースずつ切った後は、経験を生かし感覚を研ぎ澄ませて削り、磨いていく。刷毛を使い丁寧に塗料を塗り、乾かし、一寸の狂いのないように糊付けして木々を組み合わせる。それが乾くまで待つ。こうした工程を繰り返し、作業を重ねていく。
 
今ではコンピュータープログラムで製作されることが多いサーフボードだが、ロンは全て手作業だ。1枚のボードを仕上げるのに約30~40時間。2カ月をかけて完成させることもあるという。
 
こうしてできた木製のサーフボードは「木のボードだけが感じる波の感触を楽しめる」という。水の感じ方、浮いている時の感覚、波を受ける感触、そして水と波の音…。
 
そんなボードを誇りを持って作り続けてきたのは「ボード作りが好きだから」。長年海に入り、サーフィンをしてきた人間にしかわからない、その感覚に、これまでのボード作りの経験を重ねて、技術を一つずつ工程に落とし込んでいく。ボードの長さ、幅、厚み、ノーズと呼ばれる先端部、後部のテールと反り、側面のカーブなど、サーフボードの性能を決める鍵は、全て彼の経験値であり、それが緻密であることは言うまでもない。
 
「このシェイプ、カーブ、デザインは世界で1枚だけさ」。彼が言うように、唯一無二のオリジナルサーフボードがロンが作る木製ボードであり、それは彼にしかできない作業だ。

ハレイワ・サーフボード・カンパニー
木製サーフボードを作るための土台も木製
ハレイワ・サーフボード・カンパニー
工場の2階の一室で愛犬に囲まれながらデザイン画を描くロン。全ての工程はここから始まる

木製サーフボードの製作工程

サーフボードのデザインStep 1
まずはサーフボードのデザイン画を描くことからスタート。自然に湧いてくるインスピレーションのままに描き、その後、使用する木々や寸法などを細かく書いていくという。

木のカッティングStep 2
デザイン画に合わせて、木のカッティングを手作業で行う。木によって硬度が違う上、他の木と組み合わせるために正確なカーブを描いて切るには高度な技術が必要となる。

木の表面を磨くStep 3
木の表面を磨いた後、艶出しをする。オイルを塗ると木々が持つ鮮やかな色味と木目が引き立つ。ムラの無いように丁寧に、かつ手際良く塗っていく。

サーフボードの骨組みStep 4
サーフボード全体の重量を軽くするために中を空洞にしながらも、強度を保つポイントは骨組みにある。糊付けをしてバランス良くボードの内部に配置する。

ボードの重ね合わせStep 5
ボードを重ねて合わせる作業も一寸の狂いも許されない。あらゆる角度からチェックをしながら、ズレのないように一つずつ仮止めをして合わせていく。

サーフボード全体のシェイプStep 6
上下のボードを重ね合わせた後は、側面の部分に木を重ねる。側面のカーブに合わせた木々を合わせる。この工程を終えた後にサーフボード全体のシェイプをする。

サーフィンもボード作りも楽しむ気持ちが生涯現役の原点

完成したサーフボードは、木製ボードを愛するサーファーはもちろんだが、家に飾るというファンも多い。特にコアを使ったボードは見る角度によって、色合いが大きく異なることから、多くのファンを魅了する。結果的にアートとしての価値も加わったのだ。
 
軽くて製作期間も短い最新素材のボードに目も触れず、コツコツとアナログ作業でサーフボードを作ってきたロンは、「時代が変わっても木製ボードの魅力は変わらない」と言う。何より、それに魅せられているのはロン自身だ。
 
70歳を超えても「リタイヤはしたくないんだ。永遠に木のサーフボードを作り続けたいと思っているよ」と微笑む彼は、今もサーフィンをするには最高のノースショアの海辺に住み、海に出る。

「ビッグウェイブが大好きなんだけど、今は体力的に難しいから小さい波で楽しんでいるよ」。サーフィンを愛し、海を愛する彼が作る世界で一つの木製ボードはこれからも1枚ずつ増えていくだろう。

ハレイワ・サーフボード・カンパニー
ロン・クライン/1942年カリフォルニア生まれ。大学卒業後、数学教師として教鞭を執った後、建設業に携わる。1884年にハワイに家を持ち、1992年移住。ワイアルアで『ハレイワ ・サーフボード・カンパニー』創業。木製サーフボードを製作し続ける。作品はダニエル・K・イノウエ空港JALサクララウンジ・ハレ内に展示。商品はマーティン・アンド・マッカーサーなどで販売

ハレイワ・サーフボード・カンパニー◎ ハレイワ・サーフボード・カンパニー / Haleiwa Surfboard Company
Old Waialua Sugar Mill 67-200 Kealohanui St., Waialua
☎ 808-637-4500
▶営業時間:8:00am〜4:00pm
▶定休日:土・日曜
▶ Webサイト:www.haleiwasurfboard.com

(’Eheu Winter 2019号掲載)

※このページは「‘Eheu Winter 2019」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

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