
「丁寧に時間をかけて最高品質のウクレレを作る」という理念が連綿と受け継がれ、創業110周年を迎えたカマカ・ウクレレ。一世紀を超えてハワイの音楽を支え、音楽史を刻んできたカマカ3代目社長クリス氏に話を聞いた。
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祖父が創業者で2代目の父の元に生まれ、ウクレレに囲まれて育ちました。YWCAでウクレレを習い、工場では掃除を手伝うこともありましたが、製作に携わるようになったのは高校生の頃です。父から直接「ものづくり」を教わりました。とにかく楽しかったですね。大学時代は本格的に工場を手伝うようになりました。そんな父との時間が転機になったように思います。
その頃に学んだのは、本当に良いウクレレを作るには時間がかかり、情熱と辛抱強さが必要ということです。父が何より大切にしていたのは「お客さんを笑顔にすること」でした。その思いで、質の高いウクレレを一本一本、誠実に作り続けていました。そうした父の情熱に影響を受け、「この仕事を継ぎたい」と思うようになりました。実は子どものときは、パイロットになりたかったんです(笑)。兄弟は実際にパイロットになりました。でも私自身は、妻と出会い、この場所で家庭を築いて良い父親になりたいと考えるようになったことで、この仕事への思いがさらに強まりました。
ビジネスを引き継いだ後、世の中でウクレレへの関心が薄くなった時期もありました。最も大きな試練は、コロナ禍でした。店を閉めざるを得ず、取引先や販売の機会も失いました。何よりつらかったのは、従業員を手放さなければならなかったことです。
現在も決して簡単な時代ではありませんが、少しずつ回復してきたと感じます。そんな中で迎えた創業110周年。その歴史は「アメイジング」の一言です。ここまで続けてこられたのは、多くの人々、そして家族の支えがあったから。妻はもちろん、弟や妹に加え、ビジネスに加わっている息子のクリストファーにも心から感謝しています。
そして、もう一つ私を支えてくれる存在が音楽です。どんなときでも、ウクレレを弾けば心が落ち着きます。バンド活動も気付けば40年間続けてきました。担当はウクレレではなくベースですが…!
私は音楽の持つ力を信じていますし、演奏する人の気持ちも理解しています。音楽は人と人をつなげてくれます。ウクレレは、ほんの少しのコードを覚えるだけで音楽を楽しめる楽器です。ウクレレを通して、人々の人生に音楽を届けたい。ウクレレで世界をもっと平和に、皆をもっと笑顔にすること。このゴールがあるから、困難も乗り越えてこられたのだと思います。今も、最初に父の手伝いをしたときと変わらず、仕事が楽しいのです。この仕事を続けられていること自体、私にとってご褒美のように感じています。
110周年を迎える今年は、さまざまな記念イベントも予定しています。7月は『インターナショナル・ウクレレ・フェスティバル・オブ・ハワイ』のガラパーティーで記念コンサートを行います。日本のウクレレイベントにも再び参加できたら嬉しいですね。
今後も楽しむことを大事に、どのような状況であれ何ができるかを考え、ベストを尽くします。そして次の世代へ引き継いでいきたいと思います。
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Chris Kamaka◎1956年ホノルル生まれ。1916年創業の家業であるカマカ・ウクレレを、高校時代に手伝い始める。ハワイ大学入学、ビジネス/アートデザインを専攻。卒業後、本格的に父の元で働き、3代目に。製造責任者として現在に至るまで、ホノルルの工場で毎年約1500本のウクレレを、出荷前に一本ずつ手に取り、試奏・検品を行う。
※このページは「ライトハウス・ハワイ」 2026年7月号掲載の記事です。