楽天カード株式会社　常務執行役員兼海外プラザ事業本部長 　 田中 誠

昨年12月、ワイキキラウンジを、インターナショナルマーケットプレイスに開設した楽天カード株式会社。同年1月にハワイへ着任した田中誠常務執行役員兼海外プラザ事業本部長に転機を伺った。

　大学卒業後、クレジットカード会社の国内信販に就職しました。２００５年、その会社が楽天に買収されたことが、楽天KC（のちの楽天カード）に勤めることになったきっかけです。

　今でも鮮明に思い出されるのが、カスタマーセンター長として、債権回収の業務に携わったことです。会社の買収や分割など体制が変わる中、多額の不良債権を抱えていたのです。先が見えない状況で、転機となったのが、弊社の現代表取締役社長の穂坂雅之との出会いでした。彼の言動は私の考えと価値観を大きく変えることになりました

気持ちを直接伝えることが目標達成の最強の手段

　12年間勤務していた国内信販は当時のいわゆる縦社会の企業で、役職の離れた幹部と会話をすることなどあり得ませんでした。ところが、社長の穂坂は、一事業部のセンター長である私に電話をかけてくるのです。最初に言われたのは、人間は二通りあって、企画設計図を引く人と、それを先導して実行する人がいる。私は後者として最適だから「不良債権の回収を託す」ということでした。

　あまりにも重い責務に不安がありましたが、その後も穂坂は「どう？」と気遣う連絡や、「ありがとう」「がんばろうね」と声を掛け続けてくれました。この言葉を聞くと魔法のように「絶対に目標を達成しよう」と士気が高まるのです。目標を達成するたび、社員全員を労う会を開いてくれたことも励みになりました。

　こうした思いやりと人間性が伝わるコミュニケーションを真似て、私は約２５０人の部下全員と直接話すことを心掛けてみました。すると、チームが目標に向かって一つになっていったのです。

　営業部門へ異動した後、２０１９年のラグビーワールドカップでのミッションは、地方自治体と提携して大会を盛り上げることでした。経験のない仕事でしたが、何よりも思いを伝えることを重要視したことで成功させることができました。

ハワイと日本の経済の橋渡しをすることが務め

　ハワイに着任したのは昨年です。新たな優待店や加盟店の開拓のために、いきなり駐在員が店を訪問してもなかなか受け入れてもらえないのではないかと案じていました。着任時に穂坂にかけられた「人脈を広げてほしい」という言葉を意識し、ビジネスというより人とのつながりを大切にして接することで、皆さまに受け入れていただき、サポートまでいただけていることに本当に感謝しています。

　そんなハワイと日本の経済の橋渡しが私たちの役目です。日本からのお客さまがハワイの優待店に行き、お得に楽天カードを利用することでウィンウィンになる道筋をさらに広げていきたいと思います。

　最後に、こうして仕事への熱意を保ってこられた、もう一つの支えは、高校時代の器械体操部の仲間の存在です。国際体操連盟会長の渡邊守成さんと神戸大学教授で附属病院の形成外科診療科長の寺師浩人さんは、数十年にわたって支え合ってきた親友です。彼らとの出会いも、人生にはなくてはならないものだったと改めて感じています。

たなか・まこと◎福岡県出身。1959年生まれ。大東文化大学経済学部卒業。1983年に国内信販株式会社入社。2005年、買収によって楽天KC株式会社へ。管理統括部長、クレジット事業部長などを経て、カスタマーセンター長へ。2011年執行役員、2015年営業推進本部。2017年上級執行役員、2020年常務執行役員就任。2022年1月ハワイ着任。

※このページは「ライトハウス・ハワイ」 2023年2月号掲載の記事です。

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