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在留邦人に向けた日常業務の他、マウイの山火事関連情報発信や出張サービスを実施している在ホノルル日本国総領事館。10月の着任直後からマウイ郡長の表敬訪問などを精力的に行う兒玉良則総領事に転機を伺った。

 

 私が育ったのは大分県臼杵(うすき)市という、外国の人と接する機会が少ない地域でした。ですが、中学生の頃に「世界はどうなんだろう」と海外への関心が芽生えたのです。そして、ラジオで英語講座を聴いて自分で勉強を始めました。

 就職では国際的な分野で働きたいという思いから外務省を受け、1990年に入省しました。条約を作り、協定を結ぶ職務の中で、最初にぶつかった壁は英語でした。学校で学ぶ英語とは違い、交渉にふさわしい英語を駆使できなかったり、交渉する際に緊張によって早口になってしまったり。なんとかしなくてはならないと、焦点を2点に絞って勉強しました。一つは条約の内容を知ることです。まずはその背景を学び、前例や合意した協定などを調べることに徹しました。二つ目はプレゼンテーションの練習です。内容に論理的につながりを持たせ、伝わりやすい速度の英語で話せるように何度も繰り返しました。2005年までの15年間、交渉分野に専門的に関わったことはその後の基礎になったように思います。

支援受け入れの問題に直面した東日本大震災

 アジア大洋州局北東アジア課で日韓経済室長を務めていたとき、東日本大震災が起こりました。諸外国からの支援を受け入れる際、その調整が非常に難しいものでした。

 迅速さが求められる中で、緊急援助隊に医師が同行してもできる行為が限られているという問題や、救助犬の受け入れに必要な予防接種の手続きが各国で異なるなど、思うように事が進まず難航したのです。

 こうした経験により、日頃から危機的な状況に直面したときに備えて、枠組みや取り組みをより充実させておかなくてはいけないと実感しました。その一つとして、各国との人道支援や災害救援協力を円滑にしていく取り組みを進めました。

 その後、マレーシア、ベルギーの日本大使館の公使など職務は変わりましたが、どこで何をしていてもその時々の懸案に対しての危機管理を意識するようになりました。そのきっかけとなった東日本大震災での経験は、私にとって仕事の上での転機でした。

マウイ支援、観光振興、安心できる生活のために

 今年10月にハワイに着任し、今はいろいろな方にお話を伺っています。まずは8月に発生したマウイ島の火災について、どのように日本として支援ができるか、取り組んでいるところです。

 またコロナ禍から回復した今、為替や物価高騰などの事情もある中で、日本からの観光を増やすことも大きな課題です。ハワイに着任して、青い空と青い海、温かな人柄に私自身も感動しました。この土地の文化や歴史をより多くの日本の方々に知っていただけるように、ハワイに来やすい環境を整えるなど、小さなことから一つずつ改善していきたいと考えています。

 そしてハワイに暮らす日本人や日系人の方たちが安心して生活し、仕事をするために、皆さまからのご意見やご要望を大切にしながら、お役に立てるように精一杯取り組みたいと思います。

10月の着任直後、青い空の下えひめ丸慰霊碑を参拝する兒玉総領事

こだま・よしのり◎大分県出身。1990年外務省入省、2005年在カンボジア日本国大使館参事官、07年内閣官房副長官秘書官、09年アジア大洋州局北東アジア課日韓経済室長、11年経済局国際経済課欧州連合経済室長、12年アジア大洋州局大洋州課長、14年在マレーシア日本国大使館公使、17年在ベルギー日本国大使館公使、19年東南アジア諸国連合日本政府代表部公使、23年現職。

※このページは「ライトハウス・ハワイ」 2023年12月号掲載の記事です。

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