ハワイ現地発!最新生活情報&おすすめ観光情報サイト

オーストリアからハワイに移住して塩と出合った『コナ・シーソルト』のサンドラ・ギブソンさん。コロナ禍を乗り越え、水深700メートルの海水から作る塩を通してハワイの文化や環境を守ることに至る転機を伺った。

 

オーストリア出身の私にとって、1985年にハワイに引っ越したことは大きな転機でした。夫が長く暮らしていたハワイは文化や人が興味深く、ここから新しい人生が始まったように思います。

 14年間、米本土のプライベートジェット所有管理企業で働き、副社長となりました。そして、初めて自分でビジネスを起こしたのは、マウイ島ラハイナに開いたサンドイッチ店でした。約2年で閉店しましたが、マネジメントや小さなビジネス経営を学ぶことができました。

カウアイ島で塩と出合い、ハワイ島で塩田を引き継ぐ

 塩に興味を持ったのは、カウアイ島に暮らしていたときです。ハナペペに昔ながらの塩田があり、海水から水分を蒸発させて塩を作っていました。赤土のためピンク色なんです。そんな塩をハワイアンの人は行事や日常で大事に使い、贈り物にすることを知り、彼らの文化でもある塩を紹介するためにも商業的な仕組みにできないかと思ったんです。

 そこで出合ったのがハワイ島にあるコナ・シーソルトです。2011年、ここから塩を購入し始めました。2019年にはオーナーから「ファームを引き継いでやってみないか」と言われ、引き継ぐ決意をしました。ところがその後パンデミックに。

 今できることをしようと、まずはファームの整備に徹しました。同時にブランドを立て直しました。この塩はコナ沖の約700メートルという深海の水から収穫する、世界で他に類を見ない塩で、検査により、マイクロプラスチックや海洋汚染の影響を受けていないことも証明できました。またミネラルが豊富で、通常よりも塩分が33%少ないという結果も。日本の塩に関する膨大な資料から、塩を作る際に採れるマグネシウム、にがりも体に良い役割を果たすなどいくつもの活用法があることも学びました。そこで、塩だけでなくマグネシウムの商品化にも力を注ぎました。

 全てがうまくいったわけではありませんが、コロナ禍では世界中の誰もが大変な体験をしましたよね。そんな中で私は素晴らしいチームに恵まれ、「皆と頑張ろう」と常に前を向いてきました。

文化、地域、環境を継続的に守り続ける会社に

 ありがたいことに、あるメディアが私たちのコロナ禍の取り組みやファームツアーを取材してくれたことをきっかけに、現在では毎日多くの方がファームツアーに参加して、私たちの塩の素晴らしさを体験してくださっています。

 パンデミックを乗り越えて今に至るまで、長年塩作りをして来たハワイアンの方たちを含むチームの皆は、誇りを持ってハワイ文化を伝えてくれています。

 私たちは海から恩恵を受けているので、海への恩返しもとても大切です。海洋環境保護団体へ寄付し、ビーチクリーンアップや海洋の大量のゴミの掃除などに充てていただいています。私たちも、商品の容器にはできる限りプラスチックでなく、土に還る新素材を使っています。これからも塩を通して、文化やエネルギーなどの面からサステナビリティーに努め、地域を守っていきたいと思います。

苦楽を共にしてきたチーム。全員が自分たちの仕事に誇りを持って働いている

Sandra Gibson◎オーストリア出身。1985年にハワイ移住。ホテル関連の仕事を持つ夫とマウイ、カリフォルニア、ニューヨーク、またカウアイ島などへ転居を経て、オアフ島に居を構える。プライベートジェット管理企業NetJetsに14年間勤務、副社長となり退社。ハワイアン航空に6年余り勤務。ラハイナにサンドイッチ店開店。カフルイでパン店経営。2019年にコナ・シーソルト・オーナーに。

※このページは「ライトハウス・ハワイ」 2024年1月号掲載の記事です。

ライトハウス・ハワイのおすすめ記事

在ホノルル日本国総領事館 総領事 兒玉良則

2023.12.01

在留邦人に向けた日常業務の他、マウイの山火事関連情報発信や出張サービスを実施している在ホノルル日本国総領事館。10月の着任直後からマウイ郡長の表敬訪問などを精力的に行う兒玉良則総領事に転機を伺った。 ...

ハワイ大学ウエストオアフ校 教授・ハワイ日系人連合協会 会長 キース・サクダ 

2023.09.01

JETプログラムで福岡に赴任したことを機に、ハワイで日本と関わる活動に取り組み、現在はハワイ大学で教壇に立つキース・サクダ教授。さらに今年、ハワイ日系人連合協会会長に就任したサクダ氏に転機を伺った。 ...