(Text: Maiko Izon / Photos: Brandon Shigeta)
近年、新観光スポットとして注目のハワイ・オアフ島のカカアコ地区。地域再開発事業の一環として、商業施設「SALT」やコンドミニアムの建設ラッシュが進む中、おしゃれなレストランやショップが増え、ロコや旅行者にも人気・おすすめのエリアとして知られる。
もともと、再開発事業の計画はあったとはいえ、このカカアコ地区の人気に拍車をかけたのは、ほんの数年前まで何の変哲もない産業地域だったカカアコ一帯に、ポツポツと現れ始めたポップな壁画の数々。
POW! WOW! HAWAII(パウワウ・ハワイ)と呼ばれるこのプロジェクトは、2011年にハワイでスタート。年に1度、ハワイ内外からアーティストたちが集結し、公共の壁を使って描く壁画を通して、絵を描くことの楽しさや面白味を人々に伝えたいという思いが込められた活動だ。
カカアコ・エリア一帯の壁画は一掃され、各ブロックごとに高いリフトに乗ったアーティストたちがどこからともなく現れ壁画が次々と完成し、また新たなアートに囲まれるエリアに生まれ変わる。さまざまなジャンルのアーティストたちが手掛けた個性溢れる壁画は、1年間の期間限定。今、ホノルルで最も旬なスポット・カカアコへ!
2010年、中国・香港の一角で10年以上も放置されたレストランを借り上げ、ひとりの青年が仲間とともに、オープンギャラリーを開いた。「当時、金融街である香港にとって、アートはひとつの投資にすぎませんでした。だからこそ、売るためではなく、純粋にアーティストが作品を描く喜びや創る過程を公開したかったんです。美術館やギャラリーは敷居が高く、自分たちの日常ではない。そう思う人々に、もっと身近にアートを感じてほしい。できあがったら消して、また描き上げる。小さい頃、皆お絵描きが大好きだったように、時にアートは完成品ではなく創り上げる過程が面白かったりするんです。アートはもっと自由でいい。そんな思いで始めたオープンギャラリーがPOW! WOW!でした」。
「POW!」はコミックブックの中で誰かの顔をパンチする擬音。それは、世の中に、そしてそのアートを見た人に与えるインパクトを意味し、「WOW!」は、そのアートを見た人のリアクションを意味してプロジェクト名を付けたという。奇しくも、「POWWOW」とは、ネイティブ・アメリカンの言葉で「アートやミュージック、文化を祝う集まり」という意味でもあり、アメリカンジョークと歴史的な文化活動に基づいたネーミングはまさにこのプロジェクトにピッタリといえる。
ジェスパー・ウォン、34歳。中国系アメリカ人としてハワイに生まれ育ち、高校を卒業後、サンフランシスコの美術学校へと進学する。専攻はイラストレーションやグラフィックアート。幼児向け絵本や雑誌の仕事以外にも自分の才能にポテンシャルを感じていたジェスパーは、「自分のアイデアは具体的にどうしたら形にできるのか。アーティストとしてどうしたら生計を立てていけるのか。どうしたら商品化できるのかは学校では教えてくれません。それを学ぶために香港に渡ったんです」。
世界の中でメジャーな製造産業地域でもある香港で工場の製造過程の仕組みを勉強するかたわら、サンフランシスコでも好きだったアートショーを香港でもやってみたいと思った。
「一軒一軒作品を持ってギャラリーを回りましたが、中国系アメリカ人である僕の作品は、彼らには将来性を感じてもらえず、どこも扱ってくれるところはありませんでした。だから、自分でギャラリーをオープンしようと思ったんです」。
香港でオープンギャラリーの手応えを実感したジェスパーは、活動を広めるために故郷ハワイでの開催を決意。翌年の2011年初のPOW! WOW! HAWAII を開催。香港からのオリジナルメンバーも含めて12人でカカアコ・エリア近隣の駐車場にある壁に大きな壁画を描いた。
「公共の壁に描くことで、通りゆく人にも作品を描く過程を見てもらえる。そして、明らかに壁の作品は売ることができず、天候によって劣化したり、建物自体が解体されてしまう可能性もある。そんな永久的ではない作品作りは、まさに僕らが思い描いたアート活動の目的そのものでした。こういったパブリックアートのコミュニティーへのポジティブな効果は、年々、回を重ねるごとにカカアコに人を呼び、人が訪れるから飲食店が並び、犯罪防止や地域活性化に大きく繋がっています」。
2011年のハワイ開催を皮切りに、活動は世界規模へ。世界的に繋がるアーティスト仲間のネットワークから、プロジェクトは、ワシントンDC、カリフォルニアなど米国内を始め、台湾、シンガポール、また日本の神戸でも開催されている。「毎回開催地では、メンバーの半分は地元アーティスト、残りの半分は別の都市から招待しています。一緒に壁画を作り上げることが文化交流に繋がる。ハワイだけでなく、各都市で招待アーティストにはその地域の文化や生活様式を体験してもらえるようなカルチャーツアーも行っています。そういった体験からインスピレーションを受けて壁画を完成してもらうと、程良く地域の文化が混ざった素晴らしい作品になるんです」。
パブリックアートを通してコミュニティーの活性化、そして地域住民へのアートへの理解に力を入れた活動は、未来を担う子どもたちへの教育にも繋がっている。「アートや音楽の講座を高校生を対象に開いています。年齢的にグラフィティアートやヒップホップといった文化が入り込みやすいので、グラフィティアートを通して配色について学ぶなど、ベーシックな部分にも興味を持つきっかけになってくれたら、という思いです。このプロジェクトを通して世界規模で、人々のアートへの関心が高まり、楽しさが伝えられたら、と思っています」。
暮らす地域、生活の一部にアートがある。徐々にハワイにも根付き始めたパブリックアートは、人々のアートへの身近な思いや生活の楽しみに繋がっていくはずだ。
ハワイ産のクラフトビールブランドを中心に厳選されたビール各種とワインが楽しめるエリアと世界中から取り寄せた缶やボトルのビール、数百種類が購入可能なカカアコの個性派ショップ。
◎ VILLAGE BOTTLE SHOP&TASTING ROOM
675 Auahi St., Honolulu
☎ 808-369-0688
▶ www.facebook.com/villagebeerhawaii
ハワイ・リージョナル・キュイジーヌの有名店として知られる、メリマンズやモンキー・ポッドの姉妹店。ハワイ産の食材をふんだんに使ったユニークなカジュアルメニューが充実。
◎ MOKU
660 Ala Moana Blvd., Honolulu
☎ 808-591-6658
▶ www.mokukitchen.com
オーストラリア・スタイルのカフェ、ARVO。エアープランツなどを扱うボタニカル・ブティック、PAI KO。「サーフ」「旅」がテーマのセレクトショップ、MILOの複合型ショップ。
◎ ARVO / PAIKO / MILO
675 Auahi St., Honolulu
☎ ARVO: 808-537-2021
☎ PAIKO: 808-988-2165
☎ MILO: 808-369-1888
▶ www.saltatkakaako.com
自家製のシロップを使用したオリジナリティー溢れるカクテルが楽しめるバー。隣には、グルメサンドイッチやサラダ、またハワイ産の調味料やグルメグッズが揃うマーケットもオープン!
◎ Bevy / Bevy Market
675 Auahi St. #130, Honolulu
☎ Bar: 808-594-7445
☎ Market: 808-824-2547
▶ www.bevyhawaii.com
定番人気のパンケーキやオムレツから台湾スタイルの朝食&ランチメニューが楽しめるカカアコのカフェ。才能溢れるオーナーシェフが手掛けるメニューはどれもユニークで美味しい逸品揃い!
◎ EGGHEAD CAFE
885 Queen St., Honolulu
☎ 808-591-0066
▶ www.eggheadhonolulu.com
インテリア・デザイナーが経営する家具と生活雑貨店。ハワイではなかなか見られない上質のイタリア製家具のほか、地元のアーティストが制作した生活雑貨が豊富に揃う。
◎ FISHCAKE
307c Kamani St., Honolulu
☎ 808-593-1231
▶ www.fishcake.us/
ハワイのロコ御用達、朝食やランチにぴったりのできたてフレッシュなベーグル・サンドイッチのほか、自家製のパン各種から選べる種類豊富なサンドイッチやハンバーガーが揃うカカアコの人気店。
◎ This is it Bakery & Deli
443 Cooke St., Honolulu
☎ 808-597-1037
▶ www.thisisitbakeryanddeli.com
(’Eheu Summer 2017号掲載)
※このページは「’Eheu Summer 2017」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。