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ボランティアガイド・ドーセントと巡るイオラニ宮殿

イオラニ宮殿
舞踏会や公式の謁見が行われたイオラニ宮殿の王座の間は、皮肉なことにハワイ共和国によるリリウオカラニ女王の裁判も行われた。サンフランシスコから無言の帰還をしたカラカウア王の棺もここに運び込まれた。

美術館や博物館を訪れた後日、見忘れていたものに気づいたことはないだろうか。旅先でそんなことが起こることはできれば避けたい。
おすすめのポイントを見逃さないハワイのイオラニ宮殿見学には、展示品を熟知したボランティアガイド「ドーセント」による宮殿ツアーへの参加がおすすめだ。

ハワイ王朝の歴史を物語るイオラニ宮殿

(Text: Mineko Takeda / Photo: Linny Morris)

ハワイ王国の7代目の王「カラカウア」によってイオラニ宮殿が建てられたのは1882年。繁栄に満ちたカラカウア王の時代から、数奇な運命に翻弄されたリリウオカラニ女王の時代まで、この美しいイオラニ宮殿中のいたるところにハワイ王国が歩んだ輝きと翳りの歴史が刻まれている。

イオラニ宮殿見学ツアーのガイドはリリウオカラニ女王について研究をしている徳重ドーセント。

「1893年にハワイ王国が転覆すると、イオラニ宮殿は暫定政府の政府ビルとして使用されることになりました。そして国家予算で購入した物品はすべて競売にかけて、その収入を国家に返還させるということが決まって、宮殿中の家具や室内装飾品のほとんどがなくなってしまったんです。でも1959年にハワイがアメリカ50番目の州になると、ハワイ州庁舎は現在の場所に新庁舎を建設移転することになり、イオラニ宮殿は博物館として復元されることになりました。そして「イオラニ友の会」が競売で拡散した調度品を探し、現在の形にまで復元を実現させました。青の間のシャンデリアもパーツごとに競売されたのですが、現在は80%ほどのクリスタルが戻ってきています」。

イオラニ宮殿を建てたハワイのカラカウア国王

イオラニ宮殿ダイニングルーム
最大40人までの席を用意できるイオラニ宮殿のダイニングルーム。王の席は多数の客人と会話ができるよう、常にテーブルの中央に置かれた。昼食会には窓を開放してロイヤバンドの演奏を聴きながら食事を楽しんだ

1872年、次代の王位継承者を指名しないまま、時の国王カメハメハ5世が急逝したため、王位決定権が議会に委ねられ、選挙によって親米派のルナリロが王位を継承した。しかし病弱だったルナリロ国王は在位1年で崩御。その王位を継承したのがカラカウア国王だった。カラカウア国王はハワイの国家元首としては初の世界周遊を行い、1881年には日本にも立ち寄っている。3月4日に横浜港に到着したカラカウア国王は、明治政が王の作詞した国家「ハワイポノイ」の演奏で一行を歓迎したことに感激し「日本は素晴らしい国」と随行記に語っている。その時明治政府から贈呈された、天皇家の御紋が入った壺は現在もイオラニ宮殿1階のエントランスホールに飾られている。

舞踏会の時に仮眠したり、身支度を整える際に使われていた王の寝室
舞踏会の時に仮眠したり、身支度を整える際に使われていた王の寝室。タワールーム(寝室の奥の部屋)はカードルームと言われ、ポーカーや他のカードゲームをする部屋だったと言われている

ハワイの歴史的な日のステッチ
女王の誕生日、王位継承者に指名された日、即位した日、王国転覆の日、王党派の反乱が起きた日、王権放棄の日、幽閉された日がステッチで描かれている

当時最先端の設備があったイオラニ宮殿

カラカウア王、リリウオカラニ女王の肖像画
非公式の謁見や催しの時に待合室として使われていたイオラニ宮殿の青の間。青のベルべットとサテンで覆われた部屋にはカラカウア王、リリウオカラニ女王の肖像画も飾られている

外交を重んじていたカラカウア国王は、海外からの要人にハワイを他の国に恥じない優れた国家として紹介するために、最先端設備を持つイオラニ宮殿を建てたと言われている。当時としては画期的だった下水道の配管を宮殿中に通し、イオラニ宮殿ができた翌年には屋根裏の貯水タンクに水を引いて宮殿内に水洗トイレを完成させた。
 
また、パリの博覧会でエジソンに会い、その後の1886年の王の誕生日には宮殿のガーデンにアーク灯が並べられ、その翌年の1887年にはイオラニ宮殿内に電球を灯らせている。これらの設備は当時まだ 英国のバッキンガム宮殿にも、日本の皇居にもなかった新進気鋭のものだった。グラハム・べルが発明した電話の技術もいち早く導入し、1883年には2階の執務室、カピオラニ王妃の部屋、ボートハウス、地下の侍従長室を電話でつなぐなど、カラカウア国王の暮らしは常に時代の最先端を行くものだった。

しかし、その華やぎと逆行するように1887年に銃剣憲法が成立すると王権は弱体化。カラカウア国王は病に倒れ、1891年1月には転地療養に赴いたサンフランシスコのパレスホテルにおいて客死、イオラニ宮殿に無言の帰宅をし、1月29日には、妹のリリウオカラニに王位が継承された。「亡き兄に見守っていてほしい」と願って、リリウオカラニ女王は、イオラニ宮殿の青の間にカラカウア国王が戴冠で撮った写真を元に描かせた肖像画を飾り、王位継承後は、ことあるごとに肖像画の前で気持ちを引き締めたと言われている。

イオラニ宮殿の黄金の間(音楽室)
音楽の才能に長けていたカラーカウアの宮家の面々が、プライベートな音楽会を楽しむために作られたイオラニ宮殿の黄金の間(音楽室)では、たくさんの楽譜が積まれ、楽器が用意されていた。リリウオカラニ女王は、プリンセス時代に作った名曲「アロハオエ」をはじめ、生涯160曲以上の楽曲を作るほど、音楽の才に長けていた

その後、1895年に王政復古の暴動が勃発。リリウオカラニ女王は首謀者として逮捕、幽閉された。その後の裁判で首謀者の疑いは晴れたが、暴動隠蔽罪として有罪判決。8カ月の幽閉生活を強いられることになった。そして1月29日、ハワイアンの反乱者の命を救うためにリリウオカラニは王位退位を宣言。女王の座を退き、ハワイ王朝最後の君主となった。
 
イオラニ宮殿が建設された当時からそこにある、エントランスドアの窓の上の部分には、カメハメハ3世が宣言したモットー「Ua Mau KeEa O Ka’aiana I Ka Pono」というハワイ語が刻まれている。「土地の生命は義によって守られる」というこの言葉は、王国、臨時政府、ハワイ共和国、アメリカ準州、第二次大戦統治下、米国50番目の州昇格と、ハワイの自治権が様々な手に委ねられてきた歴史の背景を生き抜いたハワイ州のモットーにもなっている。

ドーセントの玲子さん
ドーセントの玲子さん。彼女のイオラニ宮殿ツアーは、まるでハワイ王朝当時に自分が迷い込んだような錯覚に陥るほど、感慨深い気持ちにさせてくれる
「Kulia I Ka Nu’u / 最善を尽くす」が刺繍されたベッド
王妃のモットー「Kulia I Ka Nu’u / 最善を尽くす」が刺繍されたベッド。ハワイアンの人口減少を危惧し、カピオラニ産院の設立はじめ国民の健康に尽力した
身支度のために使用されたカピオラニ王妃の寝室
イオラニ宮殿で行われる公式行事の際、身支度のために使用されたカピオラニ王妃の寝室は赤が基調の部屋。カメハメハ3世の元で養育を受けた王妃は、王族としての責務を品位ある立ち振る舞いと控えめな態度で臨まれた
ハワイ語のほかに英語、ラテン語、フランス語が堪能だったカラカウア国王
ハワイ語のほかに英語、ラテン語、フランス語が堪能だったカラカウア国王は、シェークスピアの戯曲やダーウェインの進化論も愛読した

イオラニ宮殿の開館時間やガイドツアー情報

イオラニ宮殿 / Iolani Palaceの住所・アクセス

住所:364 S. King St., Honolulu
(ワイキキのアラモアナセンターからアクセスする場合、バスで約20分、徒歩で約30分)
☎ 808-522-0832
▶ 開館時間:月曜~土曜日 9:00am~4:40pm
▶ 閉館日:日曜日・祝日(カマアイナサンデー除く)

オーディオ&ドーセントによるガイドツアー(日本語あり)の料金・予約方法

イオラニ宮殿にはオーディオでの見学ツアーとドーセントによるガイドツアーがあり、ツアーの所要時間は約1時間。ドーセントによる日本語の見学ツアーは、原則として月~土曜日の午前11:30から。オーディオツアーの利用も含め、イオラニ宮殿のWEBサイト(英語)で予約が可能。
オーディオツアー料金:大人(13歳以上):$21/子供(5歳~12歳):$6 ※4歳以下は無料
ドーセントツアー料金:大人(13歳以上):$27/子供(5歳~12歳):$6 ※4歳以下は無料
▶ 予約方法の詳細はイオラニ宮殿の公式Webサイト:www.iolanipalace.org

ドーセント・玲子さんが案内するハワイ王朝スペシャルツアー(日本語)

イオラニ宮殿内ドーセントを含め、女王が歩いたであろうエリアを案内するリリウオカラニ女王物語ツアーや、普段立ち入ることができないエリアを4名限定で日本語で案内するイオラニ宮殿ロイヤルレガシーツアーの詳細はSTUDIO RIM HAWAIIのFBページにて。

Kippen de Alba Chu Kippen de Alba Chu
イオラニ宮殿(フレンズ・オブ・イオラニ)エグゼクティブ・ディレクター
米国で唯一、国家元首の公邸であった宮殿、イオラニ・パレスは、現在、カピオラニ王妃の末裔にあたるリリウオカラニ・カワナナコア・モリス女史が1966年設立した「フレンズ・オブ・イオラニ」により管理運営されている。2016年に「フレンズ・オブ・イオラニ」設立50周年、カラーカウア王様の生誕180周年の記念の年を迎えた。

ドーセント・ ロジャース徳重玲子さん ツアーをしてくださったドーセント ロジャース徳重玲子さん
ハワイ在住16年。ラジオDJ。リリウオカラニ女王著書「HAWAII’S STORY BY HAWAII’S QUEEN」に出会って以来、女王のモットーであったʻONIPAʻA(ぶれないという意味)な生涯に興味を持ち、リサーチを始めたのは10年前。イオラニ宮殿開催のドーセントクラス修了&合格。女王の音楽作品からハワイの歴史と女王の人生を軌跡する回顧録プロジェクト中。

※このページは「‘Eheu Spring 2016」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

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