はるか昔、地元の漁師たちを癒した、小さなビーチハウスから始まった、心からのもてなし。創業から100年を重ねても、当時からの想いが静かに息づくハレクラニは世界中の人々から慕われ続けている。この名ホテル「天国にふさわしい館」のレガシーを継ぎ、まったく新しい個性のラグジュアリーライフスタイルホテルとして、2019年10月に開業したハレプナ ワイキキ バイ ハレクラニ。新しい“ハレ”から、感性を潤すワイキキ滞在が開花する。
(Text: Yumiko Tsuchiya)
レクラニに隣接し、姉妹ホテルとして、旅慣れたハワイ滞在客にも人気だったワイキキパークホテルが、31年の歴史を経て、閉館。新しいホテルへと生まれ変わるため、全館あげての改装に入った。次にゲストを迎えるのは、1年後。地元でもファンが多かったホテルだけに、その英断は衝撃的でもあったが、ハレクラニブランドの新しいホテルが誕生するプロセスに皆が期待を寄せ、多くのファンたちが待ち望んだ。そしてその日が、ついに訪れた。
2019年10月25日。待望のグランドオープンを遂げたハレプナ ワイキキ バイ ハレクラニは、新しい装いのホテルでありながら、不思議とそこにずっとあったかのように落ち着き、ハレクラニゆずりの奥ゆかしいエレガンスが継がれているかのようだ。
ハワイ語で“ハレ”は館、“プナ”は泉を意味する。ハレプナワイキキが建つこの地は、豊かな緑と湿地帯が広がっていたはるか昔のワイキキで唯一、温かな泉が沸いていた“Loko ‘O’o”ゆかりの場所。そこではハワイの王族や高貴な人々がくつろぎ、社交を楽しんだと伝えられている。
人々を癒し続けるハレクラニの“ハレ”から、泉のように人々の心を潤すハレプナの“ハレ”へ。モダンラグジュアリーの新しい解釈で設えたハレプナワイキキは、その隠れ家的な玄関を入ると、アーストーンのインテリアに迎えられ、柔らかい光に包み込まれる。ふっと落ち着くロビーの空気感を創りあげているのが、一瞬の華美を追い求めることなく、目や手で触れてみて分かる、本当に上質なものだけで構成された美的空間へのこだわりだ。そこにホノルル美術館のアートキュレーターの協力も得つつ、地元作家の作品をはじめとしたアートがゆったりと飾られ、美術館を訪れたかのような気分へと誘われる。
宿泊者だけがアクセスできるエレベーターで向かう客室は、白色、水色、ベージュ色で整えられた空間で、そのカラーグラデーションから得られる寛ぎはどこからくるものなのだろうか。思いを馳せ、ふと気づくのが、それは美しいハワイの海辺そのものの色合いだからこそ。そして空間のみならず、“House of Welcoming Water”というホテルの名前に込められたように、ゲスト一人一人に寄り添う24時間体制のゲストサポートは、女性一人のハワイ滞在でも快適に過ごせる安らかさ、温かさが行き届いている。
ワイキキビーチまで歩いて1分もかからず、世界的に有名なカラカウア通りへもすぐのロケーション。それなのにワイキキの喧騒が届かないのは、ハレプナの空間のマジックとスタッフの努力の賜物だろう。せっかくならここを拠点にして、リゾートな時間にたっぷり浸る…。水と緑に包まれたプール&ガーデンでは、スパハレクラニのトリートメント、ヨガやストレッチのクラス、リフレクソロジー効果のある遊歩道など、ウェルネス志向のさまざまな寛ぎで心身のリフレッシュを。
ハレプナに滞在するゲストは、ハレクラニでの飲食やスパ、買い物はルームチャージにでき、「ハレプナアクセス」は、ルームキーの提示でビショップ博物館、ホノルル美術館、マノア・ヘリテージに無料で入館できるというもの。
ハレクラニブランドのホテルゆえの格別なワイキキ時間を心ゆくまで堪能してみたい。
世界のリゾート地、ワイキキの中心というプライムロケーションながら、その喧騒がまったくと言っていいほど届かない客室は、24時間体制のセキュリティーで守られた私的空間。暮れゆくホノルルの街並みの灯りが織りなす夜景へと移行する、もっとも趣あるひとときを過ごすのにふさわしい客室の落ち着きも、昼間とはまた異なるハレプナの魅力だ。
高密度のサテン織りベッドリネンに包まれつつ、読書をしてみたり、夜景を眺めながらお気に入りのワインを味わってみたり。思い思いの美しいトワイライトタイムは、感性を潤し、忘れ得ないハワイの思い出時間として、心に刻まれることだろう。
そして、幸運なことに滞在日が金曜日に重なったら、少しドレスアップして夕暮れ時のガーデンへ繰り出してみよう。そこではマネージャー主催のワインレセプションが催され、ゲスト同士が交流できるソーシャルイベントとして、ハレプナに泊まるゲストを一層特別な気分にしてくれる。
(Photos: Akira Kumagai)
新鮮な野菜やフルーツにとどまらず、オアフ島ワイアナエ産の豚肉、フィッシュオークションで買い付けた魚、カウアイ島産のエビ、モロカイ島の鹿肉など、ハワイの各産地から届く食材たち。「ファーム・トゥ・テーブル」にフォーカスし、可能な限り地産地消に取り組むハレクラニ ベーカリー&レストランは、朝食からディナーまでいつでも食事ができるオールデイ・ダイニングだ。
「地元生産者を支えながら、上質な食材を使い、ほっとできるモダンな料理、素材のおいしさを感じられる一皿でお迎えしています。また当店の特徴でもある、焼き立てのパンの風味が引き立つメニューも充実させています。今後はまだあまり知られていない地元の食材も取り入れていきたいですね」と、シェフ・ド・キュイジーヌのアーロン・フルト氏は話す。
そして地元グルメファンの間でも話題のベーカリー。提携する「帝国ホテル東京」のベーカリー課からヘッドベーカーに就任した金城達弘シェフは、「日本で全世界のパンが味わえるように、ここハワイでも世界各地の本場の味のパンを焼き上げつつ、リリコイ(パッションフルーツ)やパイナップル、ココナッツなど、ハワイらしい食材を生かしたペストリーにもこだわっています」というから、どれを買ってみようか、悩むところだ。
繊細な味と見た目の優美さを追求
ハレクラニを語るグルメの一品として、「ココナッツケーキ」をご存知だろうか。ふわふわのケーキの上にココナッツフレークが贅沢にのった純白のケーキ。この天国のような口福のケーキをホテルの部屋や自宅でもゆっくり味わえたら…。そう願うハレクラニファンも多かったはずだが、その夢がやっと叶えられた。
ハレクラニ ベーカリー&レストランのベーカリーショップでは、名物のココナッツケーキをはじめ、ハレクラニのエグゼクティブ・ペイストリーシェフ、マーク・フライシュミッツ氏が手がけるフレンチスタイルのスイーツが華麗にショーケースを飾る。また、ジュエルのような「ボンボン・ショコラ」には、オアフ島ノースショアでとれたカカオを使い、マカデミアナッツ、ココナッツ、そして奇跡の果実と話題のカラマンシーといった地元の食材も取り入れ、美しい小さな一粒で地産地消を実現している。「シーズンごとに特別なスイーツを登場させ、グルメアイテムにも力を注いでいきます」とフライシュミッツ氏。ほかにはないお土産探しにも重宝しそうだ。
(‘Eheu Spring 2020号掲載)
※このページは「‘Eheu Spring 2020」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。