ハワイで子育てと聞けば、自然の中でのびのびと子育てを楽しんでいるイメージですが、現実は違いますよね。全米トップクラスの物価高や高額なプリスクールの学費という厳しい経済環境の中で、学校の毎日の送迎とフルタイムの仕事、週末のスポーツやお稽古事にと、目の回るような毎日を送っている親たちが多いはずです。いくつもの役割をこなすには、日本の「家事はお母さんの仕事」という固定観念を上手に手放し、子どもの自立を育むための合理的な教育マインドが必要だと痛感します。
ハワイの共働き率は非常に高く、ママ一人が家事を抱え込んでいては子育てができません。ローカルのご家庭を見ていると、パパが料理や洗濯、子どもの送迎を対等に行うのは当たり前。ごはんだってテイクアウトしたり、お惣菜を賢く使ったりして、それに罪悪感を持っていません。家事を手放すのは、単なる負担軽減のためだけではありません。根底には「子育てのゴールは子どもの自立である」という強い教育方針があります。何でもお母さんが先回りしてやってあげることは、子どもの成長の機会を奪うこと。自分で自分の身の回りのことができる「生きる力」を身に付けさせることこそが、親から子どもへの最高のギフトだと考えられているのです。
アメリカには、子どもの年齢に応じた家庭内での役割を「Chore(チョア)」と呼び、幼児期から習慣化させる文化があります。日本でいう「お手伝い」よりも少し厳格で、子どもたちにも責任を持たせ、サボることは許されません。「あ〜あ、仕方ないわね」とママが妥協して子どもたちの役割を代行することはしないのです。年齢別のチョアとして例をあげてみましょう。
●3〜4歳(まずは自分のことから)
おもちゃを元の場所に戻す、脱いだ服を洗濯カゴに入れる、ペットに餌をあげるなど
●5〜7歳(家族のお手伝いへ)
食事の前にフォークや皿を並べる、植物に水をやる、自分の部屋のベッドを整える、洗濯物を畳んでしまうなど
●8歳以上(自立への本格トレーニング)
テーブルを拭く、ゴミを出す、簡単なお皿洗いをする、自分で学校の準備をするなど
子どもに家事能力をつけさせるため、ハワイのママたちは「ご褒美ルール」も賢く仕組み化しています。単にお手伝いを強制するのではなく、大人と同じように「労働の対価」を学ばせることで、社会性や金銭感覚を身に付けさせるのです。小学生以上になると「ゴミ出し1回50セント」のようにポイント制やお小遣い制にして、自分で働いて得たお金でおもちゃや文房具を買わせる家庭も多く見られます。自立して動いた成果として欲しいものを手に入れるという経験が、子どもの自立心をさらに加速させます。
ハワイの子育てが教えてくれるのは、お母さんが家事を手放すことは、決して手抜きでもネガティブなことでもないということです。むしろ、子どもに家事能力がつき、将来どこでも生きていける「生きる力」を育むための、絶好の教育機会になります。でも「ごはんについては健康的な手作りのものを」といったこだわりがあるご家庭もあるでしょう。私もその一人ですが、ワンプレートにしたり作り置きをしたり、時短(=手抜き)の工夫は常にしてきました。子育てのゴールを「子どもの自立」に置くからこそ、ママも上手に手を抜き、子どもに役割というバトンタッチをしていく。暮らしの中での「きちんと」という思い入れを少しだけ手放して、家族全員で成長できる持続可能な子育てマインドを、日常生活に取り入れてみませんか?

スピアかずこ
1964年愛媛県生まれ。大阪•京都•オレゴンで学生時代を過ごす。京都女子大学短期大学部卒業。88年ハワイに移住し結婚。ハワイの公立校で教育を受けた長女は現在アメリカ本土で大学院生、次女はハワイ大学へ通う。雑誌やウェブでの執筆活動を精力的に行っている。共著に『ハッピー•グルメ• ハワイ』(双葉社刊)
※このページは「ライトハウス・ハワイ 2026年10月」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。