Q. アメリカ人の夫と離婚することになりました。夫はこれが2度目の離婚で、前回の離婚では裁判所で争い、多額の弁護士費用を払ったそうです。私たちの子どもはもう独立しているので、夫は「弁護士を入れずにメディエーターを雇って、財産分与などの離婚の条件を話し合って解決したい」と言っています。夫の言う通りにしてよいのでしょうか?
A. メディエーション(調停)とは、争いごとをインフォーマル、そしてプライベートな形で、中立な立場を取るメディエーター「mediator」を入れて話し合い、解決をしようとするプロセスです。裁判官や仲裁人「arbitrator」とは異なり、メディエーターは決定権を持たず、双方の話を聞くことによって解決の手助けをします。裁判と比較すると、調停には次のような利点があるといえます。
①裁判では最終的に裁判官が判断し、決定を下しますが、調停で離婚の条件を解決する場合は、双方が納得して合意した内容で解決することになります。ですから、調停では裁判官の決定には通常入らないような細々とした取り決めを入れたり、クリエイティブな解決の仕方をしたりすることができます。
②裁判の記録は基本的に公なもので、他人が入手できますが、調停のプロセスはプライベートなもので、調停で話した内容は合意内容を除いて公開してはいけないという決まりがあります。
③裁判で証言をしたり、証拠を使ったりする場合は、多くの法的なルールに従う必要がありますが、調停ではそのような制約は全くありません。よって、話を効率的に進めることができます。
④裁判所で争う場合、例外を除いて、すぐに裁判をすることは不可能で、何カ月も先になりますが、調停はメディエーターを含む皆の都合が合えば、その時点で開始することができます。
⑤裁判所で争う場合、多額の弁護士費用がかかりますが、ほとんどのケースでは調停を通して解決する方が、弁護士費用が少なくて済みます。
⑥裁判所で争う場合と異なり、多くのメディエーターは双方の当事者が同席する形でのミーティングはせず、それぞれの当事者と話をしながら解決を図ります。ですから、相手と直接対峙しないで、自分の主張をメディエーターを通して伝えることができます。
ハワイの家庭裁判所は、裁判をできるだけ避けるべきだと考えていて、調停を奨励しています。そのため、当事者間で離婚の条件に合意できない場合は最終的に裁判所の介入を求めることになりますが、その前に調停を行うことが法的に義務付けられています。
ご相談者の夫は「弁護士を入れずにメディエーターを雇って離婚を解決しよう」と言っているとのことですが、調停をするからと言って、弁護士が必要ないという訳ではありません。双方に弁護士がいるケースでも調停を行いますし、メディエーターは中立的立場に立つため、それぞれにアドバイスをしないので、そのためには弁護士が必要になります。また、合意内容をまとめた書類にサインをする前に必ず弁護士にチェックしてもらうべきです。
メディエーターによって費用は大きく異なる理由とは?
調停にかかる費用は、どのようなメディエーターを使うかによって異なります。ハワイの家庭裁判所は、多くの弁護士がついていないケースで、調停サービスを低コストで提供する非営利団体メディエーションセンター・オブ・ザ・パシフィック「Mediation Center of the Pacific(MCP)」を使って調停をすることを義務付けます。その場合、費用は収入によって定められ、プライベートのメディエーターを雇うよりだいぶ少なくて済みます。しかし、MCPのメディエーターは、必ずしも家族法や法律に精通している訳ではないので、大きな財産や複雑な事情がない場合に向いているといえます。
双方に弁護士がつくケースでは、家族法に精通するメディエーターを使うことが多いです。そのようなメディエーターには数千ドルのデポジットが必要で、彼らは弁護士のように時間でチャージをします。しかし、家族法に精通しているので意義のある話し合いができ、そのメディエーターを雇っても、裁判で争うより弁護士費用は格段に少なくて済む場合がほとんどです。
宮本直子
Naoko Miyamoto Attorney at Law
父親の転勤で高校3 年生よりアメリカ在住。1997年カリフォルニア大学バークレー校政治学部卒業。2000年ハワイ大学マノア校法科大学院(ロースクール)修了。2001年ハワイ州裁判所・ハワイ地区米国連邦裁判所弁護士登録。ハワイ州最高裁判所を経て2001年より離婚やその他の家族法を専門に扱うクライントップ& ルリア法律事務所で家族法専門の弁護士として勤務後、2022年9月に『宮本直子法律事務所』を開設。

宮本直子法律事務所
735 Bishop St, Ste. 310, Honolulu (Dillingham Transportation Bldg.)
TEL 808-444-7890
E-mail: info@miyamotohawaiilaw.com
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※このページは「ライトハウス・ハワイ 2026年7月」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。