Q. 結婚20年となるアメリカ人の夫と離婚します。夫は元々軍人で、約10年前にリタイアし、軍から年金をもらいながら連邦政府の仕事をしています。浪費家ですが、ペイチェックからリタイアメント口座にある程度のお金を入れていたと思います。夫は彼の年金やリタイアメント口座の私のもらう分は私に直接支払うと言いますが信用できません。私にできることはありますか?
A. 先月号でご説明したように、ハワイ州での離婚による財産分与では、婚姻中に築き上げた部分の財産は基本的に半々で分配をします。どちらの収入、仕事によって築き上げられたものかは考慮されません。年金やリタイアメントの口座の分割にもこのルールが適用されます。
ご相談者の場合、夫が軍から退職して年金をもらい、連邦政府に勤めているとのことなので、軍の年金、そして連邦政府からの年金は離婚のケースで分けることになります。ハワイの家庭裁判所では、リンソンフォーミュラ「Linson Formula」と呼ばれる以下の数式を使って、年金を分割します。
1/2 x 夫が婚姻中にそれぞれの仕事に勤めていた年数/夫がリタイアする時点で勤めていた年数 x 夫が月々もらう年金の額 = ご相談者が月々もらう年金のシェアの額(軍から退役していない場合は、離婚の時点で退役したと仮定した上で、この数式を使います)
配偶者が軍や連邦政府、州政府、ユニオンに所属する仕事をしている場合は、リタイア後に月々もらう年金「pension」があることが多いです。そして多くのケースでは元配偶者に頼ることなしに、直接軍や連邦政府、州政府、ユニオンなどからご自分のシェアを受け取ることができますが、そのためには離婚の時点でリタイアメントプランを分割する書類を作成し、手続きをする必要があります。また、軍の年金には特別なルールがあり、軍に勤めていた期間と結婚の期間が10年間以上重なった場合のみ、元配偶者は政府から直接年金のシェアをもらうことができます。ご相談者は約10年前に相手方が軍からリタイアしたということなので、上記に当てはまるかどうか、見極める必要があります。
またご相談者の夫は、ペイチェックからリタイアメント口座に入金していたとのことですが、これは月々もらう年金とは違い、米軍や連邦政府に勤務する人が加入できるリタイアメントのアカウント「Thrift Savings Plan(TSP)」と思われます。TSPを分割する際はリンソンフォーミュラ「Linson Formula」は使わず、離婚時点でのアカウントバランスを半々で分けることになります(結婚の時点でアカウントバランスがあった場合、その分は差し引かれます)。この点は、弁護士でも誤解している場合があるので、注意が必要です。
リタイアメント口座の分割は専門の弁護士へ依頼が最善策
軍や連邦政府に勤めていない場合、リタイアメント口座は401Kプランが多いです。401Kの分割にはQDRO (Qualified Domestic Relations Order/クオリファイドドメスティックリレーションズオーダー)という書類が必要です。QDROを通さないで401Kからお金を引き出した場合、口座の名義人にインカムタックスとペナルティーが課せられます。リタイアメントアカウントの半分は大きな額であることが多く、インカムタックスとペナルティーも多額になります。QDROを通して分割の手続きをすると、分割自体にはインカムタックスもペナルティーも課せられませんし、リタイアメントアカウントから直接受け取れるので、相手方が半分支払うという約束を守らないことを心配する必要もなくなります。
どちらかが年金やリタイアメントの口座を持っている場合、離婚判決書「Divorce Decree」の中で正しい形でリタイアメントプランを分割して、離婚成立後、その書類を作成し、裁判所に提出して、裁判所が受理をした書類をリタイアメントプランに送るという手続きが大変重要です。リタイアメントプランの分割は専門的な分野なので、相手方がどのようなリタイアメントのベネフィットを持っていて、どう分けるべきなのか、どんな書類が必要なのかを、この分野を専門とする弁護士に相談し、書類の作成や手続きの手伝いを依頼するのが最善といえます。
宮本直子
Naoko Miyamoto Attorney at Law
父親の転勤で高校3 年生よりアメリカ在住。1997年カリフォルニア大学バークレー校政治学部卒業。2000年ハワイ大学マノア校法科大学院(ロースクール)修了。2001年ハワイ州裁判所・ハワイ地区米国連邦裁判所弁護士登録。ハワイ州最高裁判所を経て2001年より離婚やその他の家族法を専門に扱うクライントップ& ルリア法律事務所で家族法専門の弁護士として勤務後、2022年9月に『宮本直子法律事務所』を開設。

宮本直子法律事務所
735 Bishop St, Ste. 310, Honolulu (Dillingham Transportation Bldg.)
TEL 808-444-7890
E-mail: info@miyamotohawaiilaw.com
https://www.miyamotohawaiilaw.com/japanese-page
※実際のアドバイスは個々の状況により異なりますので、詳細は弁護士にご相談ください。
※このページは「ライトハウス・ハワイ 2026年4月」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。