
ハワイで唯一、文部科学大臣認定を受ける日本語補習授業校として、創立52年の歴史を刻むレインボー学園。今も500人近い生徒が学ぶ同校に今年着任した竹澤昭校長が語る、41年の教員人生で迎えた最大の転機とは。
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教職に就いて41年。教師を本気で目指したのは、中学3年生のときです。悪ふざけばかりして先生を呆れさせていた私が、先生に進路を相談すると真剣に向き合ってくれました。このとき「教師という仕事は、人の人生に影響を与える仕事」だと知ったのです。
教師になった1986年当時は昔ながらの学校教育の時代。大きな問題もなく、オランダとシンガポールの日本人学校勤務を含め、ずっと小学校の教壇に立ってきました。
そんな私が、心の底に響く価値観に目覚めたのはコロナ禍でのことです。2020年、校長として初めて赴任した小学校では、4月8日に始業式を行った翌日から、約2カ月間の休校となりました。
ようやく子どもたちが学校に戻ってきた6月、給食の時間に教室を回ると、机は一方向に並び全員が前を向いて黙って座っていました。誰一人として話さない「黙食」です。楽しいはずの給食の時間に、笑顔もありません。何ともいえない悲しい光景でした。
そこで翌日から、教室を回って「給食クイズ」を始めました。給食にまつわる問題をフリップに書いて、声を出さずに指差しで出題し、子どもたちは1、2、3の中から正解だと思う番号に手を挙げて答える。クイズを楽しみにしてくれる子どもが増えていき、1カ月後には全員が笑顔で答えるようになったのです。
その笑顔を見たとき、心が温かくなりました。同時に頭に浮かんだのが、アンパンマンの作者・やなせたかしさんの「人生はよろこばせごっこ」という言葉でした。これこそが、人生の幸せなのだと実感しました。
それまでも、体育の授業で子どもたちが目標を達成するなど、嬉しい瞬間は数多くありました。でもそれは「子どもが喜んだこと」以上に、「自分が嬉しかったこと」だったのではないか。そんな気付きがあってから、何かに取り組む際には、「人を喜ばせるために」を意識するように心掛けました。
仕事だけでなく、趣味で30年ほど続けている家庭菜園も変わりました。以前は新鮮な野菜や美しい花を育てることも、自分自身のためでした。しかし「おいしく食べてもらいたい」と思うと、本やYouTubeで知らなかった栽培方法を学んだりして、以前より元気でおいしい野菜が収穫できるようになったのです。今では家族や知人が「おいしい」と喜んでくれる顔を見ることが、何よりの楽しみです。
今年4月にホノルルに着任しました。親御さんたちが望まれる、日本の教育や文化をしっかりと身に付け、将来は日米の懸け橋となるように、一つずつ環境を整えていくことが私の役目です。もちろんハワイの子どもたちに喜んでもらうために、これまで作った550問余りの給食クイズも持って来ました。現在は子どもたちのリクエストに答えて、ハワイに関するクイズを楽しんでもらっています。
実はこれらのクイズ、唯一、妻にはダメ出しされるのです。いつか給食クイズで妻を喜ばせることが、私の人生の「よろこばせごっこ」で最高の幸せになると思っています。

たけざわ あきら◎1964年生まれ。栃木県出身。1986年宇都宮大学教育学部卒業後、宇都宮市公立小学校へ勤務。1991年から3年間、文科省派遣教員としてアムステルダム日本人学校教諭、2013年から3年間、同じくシンガポール日本人学校教頭。2020年から宇都宮市公立小学校校長。2024年退職後、初任者指導教員として小学校勤務。2026年4月現職。
※このページは「ライトハウス・ハワイ」 2026年10月号掲載の記事です。