水、野菜、フルーツなどのハワイの恵みに魅了され手仕事で酒づくりに精を出す職人たちがいる。
決して大量ではないがコツコツと作り上げるその酒は、味わいも香りも、オリジナリティー溢れる一杯となる。
誇りを持って作られた酒とストーリーを紹介しよう。
SHOCHU
発酵食のポイが抱かせた夢が幻と呼ばれる焼酎に
オアフ島ノースショア。広大な緑が広がる島のカントリーサイドにたたずんでいる小さな醸造所。ハワイの芋を使ったハワイ初の焼酎『波花』がここで造られている。日本人の平田憲さん、由味子さん夫妻が2人で手造りする波花焼酎だ。
ここに醸造所が誕生したのは2013年のこと。きっかけは25年前。平田さんは、旅行で訪れたハワイで、伝統料理である発酵食ポイを食べたとき、「ポイで焼酎を造れないか?」と思い付いたという。鹿児島の酒蔵で3年間修業を積み、ハワイで土地を探し、貯金を切り崩して8年後にようやくこの土地にたどり着いた。
ハワイの太陽と大地が育てた紫芋を使い丁寧に造り上げた焼酎は、香り高くで爽やかに仕上がった。ハワイならではの味わいを持つ波花の評判が広まるのに時間はかからなかった。夫婦で造るには、春と秋に3000本ずつという少量の出荷が限界で、〝幻の焼酎〟と呼ばれるようになっていった。
その工程は、焼酎を造る上で重要な米麹づくりから始まる。日本から取り寄せた一握りの種麹を100キロの米に加えて、手で揉み込む米麹づくりは、夜中にも作業を要する重労働だ。この米麹と蒸した芋を掛け合わせてもろみを作り、かめ壺で発酵させる。発酵したもろみを蒸留し、4〜5カ月間熟成させたら完成だ。伝統的な手仕事に、ハワイの気温、湿度、風が相まって世界で唯一無二の焼酎となる。
昨年秋に出荷した13作目はマウイブレンド。今年の春出荷の14作目は蔵の近くで育った芋で造り、ノースショアブレンドと名付けている。使う芋、季節によって違う味を楽しめるのだ。
「もっとおいしく作れるはず」。この探求心こそが波花ファンをハワイ内外に増やし続けている理由だろう。
NAMIHANA
kaloimo@gmail.com
不定休
https://kaloimo.exblog.jp
WHISKY
コオラウ山脈の恵みから生まれたウイスキー
オアフ島東部に連なるコオラウ山脈。貿易風がもたらす多量の雨に侵食され、美しく鋭く切り立つ山脈だ。1日に500万ガロンもの雨が火山岩の中に染みわたり、30年余りの月日をかけてピュアな水として地表に湧き出る。その水のおいしさに感動して、この地で昨年2月にウイスキーを造り始めたのが、米海兵隊で出会った、親友のエリック・ディルさんとイアン・ブルックスさんだ。
すぐ後ろにコオラウ山脈がそびえるカイルアの山の中にこぢんまりと構える『コオラウ蒸溜所』。自然の恵みである、限りなく純度の高い水を蒸留することで、最高品質のウイスキー『オールド・パリ・ロード』が生まれた。
トウモロコシを混ぜ入れたマッシュビルといわれるフレーバーの基礎を作り、水を合わせ発酵させる。さらに蒸留し、たるの中でじっくり寝かせる。この工程を経て、1本ずつボトルに詰め、ラベルにナンバリングを施せば完成だ。
雑味がなくストレートな味は、口の中で香りがふわっと広がりスルスルと喉を通っていく。「一滴に込められているのは僕たちの情熱」。口に含めば、大切に造られた味に納得するだろう。
KOOLAU DISTILLERY
905 Kalaniana’ole Hwy. Unit 5014, Kailua
TEL : 808-261-0685(ツアー予約)
www.koolaudistillery.com/ja
RUM
特殊な製法で造り続けるハワイの歴史香るラム酒
古き良き時代のハワイが残るオアフ島中心部に近いクニア地区。この山々に囲まれた場所でラム酒が手造りされている。
ハワイの歴史を語る上で外せないサトウキビ産業。1800年代、日本からの移民がその労働を担い、ハワイの一大産業へと成長させた。時代の流れとともに廃れ、その数も激減したサトウキビを復活させるべく、ラム酒の製造に着手したのが『コハナ・ラム酒蒸留所』だ。
現在、敷地内の畑には34種類のサトウキビが生い茂る。彼らのこだわりは、このサトウキビを使って特殊な製法でラム酒を造っていることだ。その手法は、サトウキビの搾り汁から砂糖を精製する一般的な製法ではなく、搾り汁そのものを原料として醸造酒を造るアグリコール製法。この製法を取り入れているのは、世界のラム酒総生産量の約3%のみという。全てが手作業のこの製造過程を日本語ツアーで見学することもできる。
使用するサトウキビの品種や熟成させるたるによって香りも味わいも違う仕上がりになる。無色透明の「ケア(Kea)」、色の「コホ(Koho)」など、ネーミングはハワイ語で付けられている。
眼下にパールハーバー、遠くにダイヤモンドヘッドを望むこの地で、先人たちがハワイで築いた歴史に思いを馳せながら飲むラム酒は味わい深い。
KO HANA RUM
92-1770 Kunia Rd. #227, Kunia Camp
TEL : 808-517-4067
営業時間:10:00am〜6:00pm 定休日なし
www.kohanarum.com
BEER
注目の街でにぎわう遊び心溢れる本格醸造所
開発が進み、刺激的なウォールアートと洗練されたブティックやレストラン、カフェが点在するカカアコエリア。意外に知られていないのは、この一角が1900年代にハワイのビール産業で栄えた場所ということ。ここに今、再びブルワリーが集結している。
3年前にこの地に移転オープンした『アロハ・ビア・カンパニー』は、その奥に構えた醸造所で、常時10〜13種類のビールを造っている。ホップを巧みに操り、味、苦味、香りをさまざまなバランスに整えて仕上げるビールは、粋な名前が付けられている。「レッド・ツェッペリン」「ワイマナロ・ファームハウス」「クイーン・ストリート・ピルス」。音楽からハワイの道や地名まで、どれもビール職人であるデイブ・キャンベルさんが、自身の人生とアロハ・ビア・カンパニーにかける思いを重ねてネーミングしたという。
ユニークで飲み応えのあるクラフトビールを、店の入り口にあるタップルームで味わえば、ビールをもっと好きになるに違いない。
ALOHA BEER COMPANY
700 Queen St., Honolulu
TEL: 808-544-1605
営業時間:4:00pm〜11:00pm 定休日:日曜
www.alohabeer.com
APPLE CIDER
ハワイが誇るフルーツを大人のサイダーに
ホノルル空港とダウンタウンの間に位置し、工場が立ち並ぶカリヒ地区。太陽が傾く時間になるとどこからともなく人が集まってくる『パラダイス・サイダーズ』。彼らのお目当てはハワイのフルーツで作られた、フレッシュでバラエティー豊かなサイダーだ。
ハワイ育ちのショーン・ペックさんは、個性溢れる味わいを持つハワイのフルーツで何かを作りたいと思っていたという。ビールではその味をうまく表現できず、自宅のガレージで試作を繰り返した結果、ハードサイダー(アルコール飲料)を完成。ハワイ初のサイダーバーをオープンするに至った。
ベースとなるアップルサイダー造りに必要なリンゴは、全米一の品質というワシントン州産を使用。バーの奥にある工房で、熟したリンゴを圧搾し、タンクに入れて発酵させ、果肉を取り除き、さらに熟成させる。フレーバーとなる素材は地元ハワイ産だ。ハワイが誇る甘酸っぱいリリコイ、南国らしい甘みを持つマンゴーやパイナップル、グアバ、ドラゴンフルーツなど。ポップな彩りを目で楽しみ、スッキリした果実の旨味を舌で味わい、弾ける炭酸の刺激を喉ごしで堪能する。ハワイで新たなブームとなりそうだ。
PARADISE CIDERS
2003 Colburn St., Honolulu
営業時間:水〜土曜 3:00pm〜8:00pm、
日曜 1:00pm〜6:00pm、定休日:月・火曜
www.paradiseciders.com
(2020年2月16日掲載)
※このページは「ライトハウス・ハワイ 2020年2月16日」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。