フォーカス教育研究所 フォーカスデザインスタジオ　代表取締役 　鵜飼高生

家庭教師と塾の両方を採用した“家庭塾”という独自のシステムで、現在躍進中の『フォーカス教育研究所』代表の鵜飼高生さん。ハワイにおける教育だけでなく、建築界でも活躍する彼に人生の転機について伺った。

　両親の転勤で小学校４年生から３年間オハイオ州で過ごしました。英語は全く話せず、渡米直前に「トイレに行きたい」というフレーズだけは、緊急事態に備えて覚えさせられましたね（笑）。入学した小学校は、私が初の日本人で周りはほぼ白人。100%英語漬けの毎日で、日本に帰る頃には全ての授業内容が理解できるようになっていました。ところが、日本に帰国したら別の苦労の連続。国語力は３年前のままなので、中学の授業についていけないのです。最初は全科目オール２。英語ですら３。日本ではOftenは「しばしば」と訳さなくてはいけないのですが、英会話では「しばしば」なんて言いませんよね。言葉をうまく選べず直訳ができなかったのです。そんな中学２年の美術の時間に転機が訪れました。「理想の住宅」を模型で作るというプロジェクトがあり、造形や空間を作り上げていくおもしろさを学んだのです。将来は建築家になろうと、建築学科のある大学に入学しました。ところが、95名の建築学科の生徒を前にしたオリエンテーションで、「みんなが希望する意匠設計を職業にできるのは、ここにいる１～２名だけ」と言われ意気消沈。そこで英語力を生かして、海外で働くことに目標を変更し、在学中にインターンとしてハワイの設計事務所に就職。十分な実務経験を経てハワイ大学の大学院に進級しました。コンペを勝ち抜き奨学金も獲得。建築の博士号を取得しました。

人生に影響を与える「教育」と「建築」にやりがい　
　日本の大学時代、中高校生を対象に塾の講師をしていました。その経験を通して、教え方によっては子どもの人生を変えるほどに大きなインパクトを与える仕事であることを知り、やりがいを感じました。また、家というのは人生で最も高い買い物で、その空間で感動を与える。そんな人生に対して大きな影響を与える「教育」と「建築」という二本のベクトル。その両方で世の中にインパクトを与えたいと思い、二足のわらじを履くことにしました。教育に関しては深刻な問題がありました。日本からの子どもたちはハワイに来たことを嫌がっていました。その理由は語学力。ハワイでは英語ができなくても生活できる環境があり、私がオハイオ州で経験したような英語力が身に付かないのです。英語がわからないため、ハワイの文化を理解できずローカルの友達ともなじめない。本気のけんかもしなければ、抱き合って仲直りすることもない。英語も日本語も中途半端になり、ハワイに来たことが負の財産になっていたのです。そういう子どもたちを助けてあげたくて、資本金50ドルで『フォーカス教育研究所』を設立。少人数で目の届く、きめ細かな教育サービスを提供し続けています。建築家としては、『フォーカスデザインスタジオ』を設立。商業物件や芸能人宅のリノベーションなども担当しています。
　将来の夢は、ハワイにゼネコンを作ること。ハワイでは設計会社と施工会社が別々で、一つになった日本のゼネコンに該当するものが、まだまだ少ないのが現状です。設計施工が一つになり、デザイン・予算・工期が予定通りに進む、日本の良きシステムを取り入
れられればと思っています。

(2019年11月1日掲載）

※このページは「ライトハウス・ハワイ 2019年11月1日」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

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