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広島市から学生5人と被爆者2人がハワイに派遣。真珠湾視察や交流で相互理解を深める

プナホウスクールで行われた被爆証言と学生によるプレゼンテーション 
プナホウの協力者らと共に

 1945(昭和20)年の今日9月2日(日本時間)、戦艦ミズーリの艦上で日本が降伏文書へ調印し、第二次世界大戦は正式に終結しました。

 日米両国民の友好の架け橋となるべく、広島市の平和記念公園と米ハワイ州のパールハーバー国立記念公園は、昨年「姉妹公園協定」を締結しました。それに基づきこの夏、広島市による一般公募で選ばれた学生5人と被爆者2人が8月17日(土)から22日(木)までの日程でハワイに派遣。7人はパールハーバーでアリゾナ記念館や戦艦ミズーリ記念館などを訪れ、真珠湾攻撃を経験した退役軍人家族の証言を聞き、広島の被爆者は自らの体験を話した他、意見交換などを行いました。

会場となったプナホウスクールの教会は学生たちで満席に

 19日(月)はプナホウスクールで、学生たちに向けて被爆者の証言と日本人学生らによるプレゼンテーションが実施されました。

 8歳のときに爆心地から2.5Kmの自宅で被爆した八幡照子さんは現在87歳。広島平和記念資料館で、主に修学旅行で訪れる小中高校生に被爆体験を話しています。

 この日、八幡さんは自らの言葉で伝えため、証言を英語で行いました。

スクリーンに爆心地の地図を映して説明する八幡さん

「1秒間に280メートルという爆風に吹き飛ばされました」と当時の状況を説明し、「裏庭にいたところ5~6メートルほど吹き飛ばされ、飛び散った窓ガラスで顔などにけがをしました。何が起こったかわからない中で、母親が大きな掛け布団を持ってきて、家族全員を覆って『皆で一緒に死のう。皆で一緒よ』と言いました。母の声と肩を寄せた家族のぬくもりと絆が、一番に思い出されます」と話しました。

 八幡さんは、一瞬にして多くの命が犠牲になったこと、被爆した友人が後に命を落としたこと、毎日が究極の空腹状態だったことなど実相を語り、「若い皆さんに、戦争によって落とされた原爆の残酷さと悲しみを感じてほしいです。人は被害者にも加害者にもなるのです。命の大切さを一番知っていただきたいと思います。人と人、国と国も対話が大事。平和を築いていく意識を持ってください」と訴え、「2度とこのような悲惨なことが起こらないように、命ある限り証言を続けていきたい」と加えました。

八幡照子さん。英語を学び、証言をすべて英語で行った

 質問を募ると、プナホウの学生たちから次々と手が挙がりました。「原爆が落とされた後はどこで暮らしていたのか」「当時の自分にどんな言葉を掛けたいか」、「普通に戻るのにどのくらいの年月がかかったのか」などの質問に、八幡さんは1問ずつ丁寧に答えました。

 6年生から爆発のスピードを問われると、13歳のときに爆心地から2.2Kmの場所で被爆した才木幹夫さんが、「一瞬でした。爆風と熱線、そして放射線によって、その年末までに14万人が死亡したと推定されています」と答えました。

 ハワイ訪問中、パールハーバーとハワイ大学で被爆体験を語った才木さんは92歳。今年の春から原爆証言を広島原爆資料館で始めたばかりだといいます。

自身の体験を交えながら学生からの質問に答える才木さん

 「いつか証言をして、継承しなくてはいけないと思っていましたが、なかなか話せませんでした」と才木さん。

 きっかけとなったのは「2022年のロシアによるウクライナへの本格的な軍事侵攻でした」といい、「90歳を過ぎていたので、今、語らなくてはいけないと思い、昨年に決心して準備しました」と、証言活動を始めた経緯を説明してくれました。

 「大事なことは『発想の転換』です。戦争は国のエゴです。身近な問題では、いじめもそうですね。他にも最近の大きな問題として、自然環境の破壊も同じことだと思います。どんな物事も、自己中心的な考え方ではなく、別の観点から見ることが必要です。そのためには話し合うことが大切です」。

 才木さんは、ハワイの学生の反応を見て「活発に質問をするところが日本と違って反響を直に感じます。もちろん日本でも反応はありますが、後になってから文章で感想を送ってくれるので、違いを感じますね」と関心を示していました。

今年から被爆証言をはじめた才木幹夫さん

 最後に日本からの5人の学生が壇上に上がり、スライドを使いながら一人ずつ自己紹介とプレゼンテーションを行いました。

プナホウスクールの学生に対して英語でプレゼンテーションする広島からの学生5人

 5人は、ハワイ訪問の目的を、「広島に原爆が投下された日のこと、その後に長い年月にわたって及ぼした影響を伝えること」と伝え、これまで自分たちが学んだこと、平和に対する考え、今後の活動、目標などを英語で発表しました。

 4泊6日の滞在中、広島市からの学生5人と被爆者2人は、ハワイ日本文化センターや第100歩兵大隊記念館で日本人移民の歴史文化を学習した他、ホノルル市を表敬訪問し、帰国の途につきました。

広島市の一般公募により、若者28人、被爆者7人の中から選ばれた7名

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最後に、今回のハワイ派遣について学生5人に質問をしました。

Q1)初日から今に至るまでのプログラムで、何が印象に残っていますか? そこでどんなことを感じ、学びましたか?

Q2)プナホウスクールの学生さんたちの前でプレゼンテーションをしてどう思いましたか? また、この日の学生さんたちの反応について感じたことはありますか?

Q3)帰国後に今回の経験をどのようにいかしたいですか?

トウバル彩果さん AICJ高校3年生

Q1)一番印象に残っているのは、アメリカの退役軍人・退役軍人のご家族の皆さんとの対話です。今まで、広島で平和教育を受けてきて、アメリカ軍はきっとヒロシマ・長崎で大きな成果をあげたのだから、誇らしく思っているだろうという偏見を持っていました。しかし、お話を伺って、アメリカ軍の方も「戦争は最悪なもの」、「トラウマになっている」、「二度と繰り返したくないことだ」と退役軍人の方がおっしゃっていて、ヒロシマの人と同じ想いを抱えていることがわかり、安心しました。ヒロシマとパールハーバーの姉妹公園協定が締結されたことによって、双方の意見や想いを共有する機会が増えると思うので、世界平和の実現の可能性が増したように思います。

Q2)優秀な学生さんたちを前に、自分たちの意見や伝えたいことを真剣に発表しました。私たちヒロシマの若者と、ハワイの若者が繋がり、これから多くの交流の機会、共同で活動していきたい旨を伝えました。また被爆者の証言の後に、プナホウの皆さんが沢山の質問をされていて、個人的には全く考えたことのない角度からの質問だったので、感心しました。

Q3)個人的には、将来的に外務省や国連など、世界平和実現に貢献するような職業に就きたいと思っています。そして経験を積んだ後は、自分で各国を繋ぐハブ的な役割を持つ組織を立ち上げようと思っています。今回の研修を通して、アメリカの退役軍人の想い、パールハーバーの館長さんの平和への願い、本当に多くの団体が平和の実現に向けて取り組んでいることを知れて、自分の将来への希望の光がみえてきました。

岡田彩花さん 広島叡智(えいち)学園高校3年生

Q1)私は真珠湾攻撃を体験した退役軍人家族の話が印象的でした。話を聞く前、真珠湾攻撃を受けた人々は受けて失ったものを憐れむよりも結果攻撃を仕掛けた日本に勝ったということを誇りに思っているんじゃないかと勝手に想像していました。しかし、話を聞いてみると、真珠湾攻撃で起きた出来事が悲惨である退役軍人にとっては思い出したくもない、話をすることも辛いと言うことを知りました。広島の原爆を受けた被爆者も今でも思い出すことが辛く家族にずっと秘密でいるという人がいます。このように広島の被爆者と真珠湾攻撃の退役軍人の間に共通点を見つけることができたのは良かったと思います。

Q2)私と同い年の人たちが何を考えているのかわからず、もしかすると日本に対して悪い印象を持っているかもしれないと心配でした。しかし、被爆者のプレゼンテーションや被爆者と若者と牧師さんのディスカッションが終わった後、沢山の生徒が手をあげ、原爆について理解をしようとする姿勢を見ることができました。こうやって興味を持ってくれるのは本当にありがたいし、歴史を知る上で重要なステップだと思いました。

 Q3)お互いに何が起こったのかを理解し、歩み寄れるような活動をしていきたいと思っています。その一つとして今アイディアが浮かんでいるのは、今回ホノルルに訪問した私たちが広島、願わくば日本に向けてどのようにして太平洋戦争・第二次世界大戦が始まったのか、真珠湾攻撃では何が起こったのかなどを知ることができる歴史の教科書のようなものを作りたいと思っています。今回の研修を通してより一層平和を考えさせられたのは、そこで何が起きたのか歴史を知るというプロセスを踏むことでした。一方で、広島については広島に来たハワイの方に教科書を作っていただけたらなと思っています。実現するかどうかはわかりませんが、私たちが作った教科書を通して歴史を知り、平和とはなんなのか、個人が想像できるような機会を作りたいと思っています。

大田彩愛(さえ)さん 広島市立大学1年生

Q1)私にとって、戦艦ミズーリ記念館の視察が1番印象的なプログラムでした。太平洋戦争の終結は日本では玉音放送があった8月15日となっていますが、実際には9月2日であるという日本とアメリカの歴史的理解の違いを感じました。また私は日本人としてこの戦艦で、多くの犠牲が出たという点や神風特攻隊が突撃した跡も残っていたりという点において、とても複雑な気持ちを持ちました。しかしながらガイドさんによると、現地の方や日本人以外の方の多くがミズーリ記念館をアトラクションのような気持ちで思っていたり、犠牲者に関しての誇りを持っているということを知り、平和や戦争に関する考え方の違いを考えることが出来たのが印象に残っています。

Q2)私は「私たちの考える平和」に関しての発表を行い、平和に関する価値観は人によって異なるけれどもそれを共有することが大切ということを伝えることが出来ました。また全体として、原爆投下の歴史を踏まえながらハワイと広島が共に平和のために協働していきたいという思いを共有できたことが最も良い経験でした。反応に関しては、多くの生徒さんが注目して聞いてくださっていたので、少しでも広島の思いが伝わっていれば良いなと思っています。

Q3)今後の活動としては、真珠湾攻撃と原子爆弾投下という2つの歴史に関して双方の理解を深める架け橋となっていきたいと感じました。ハワイの多くの人が今回の姉妹公園協定に関して、未来志向で平和を実現していきたいという考えを持っていました。未来志向でハワイと広島で平和を実現していくためには、まだ広島市民に真珠湾攻撃の歴史を学ぶことができる機会が少ないと感じたし、ハワイの人に関しても広島の原爆投下の悲惨さに関しての歴史的理解の欠如を感じたため、双方が双方の歴史をさらに深く理解し、互いに手を取り合えるような機会作りを行っていきたいと考えています。

並木陽菜乃さん  AICJ高校3年生

Q1) 真珠湾攻撃を経験した退役軍人家族の証言が特に印象に残っています。Stevensさんが長年攻撃当時の経験を口にしなかったことは多くの被爆者が感じている、経験を語ることの難しさと重ねることができます。彼の証言後、Peteさんとお話しした時、この姉妹協定について考える際、2つの公園を同じものとして扱わず、違いを上手く活かしていくことに姉妹協定の意義があるのではないかとお話ししました。

Q2) プレゼンの前に皆さんがQ&Aで鋭い問いかけをしていたこともあり、正直、私はプレゼンで緊張していて学生さんとあまりアイコンタクトが取れませんでした。しかし他のメンバーがプレゼンしているときは皆さん熱心に聞いてくださいました。私たちのプレゼンの内容が団体の紹介のようなものだったため、この熱心な姿には、どんな発表でも必ず学ぶことがあるというポジティブで謙虚な姿勢が見受けられました。Q&Aでは、私たちの研修時と同様、初めて八幡さまの証言を聞いたと思いますが、私たちが当時思い浮かばなかった鋭い質問、そしてこの理解を深めようとしている姿に感銘を受けました。

Q3)特に今回のQ&Aを通して、核被害のより個人的なエピソードや、被爆者が私たちに何をしてほしいかなどに関心がある人が多いと感じたので、それらを伝えていく活動を平和記念公園でしてみたい。例えば平和記念公園での観光客向けの英語ガイドで、公園内移動中に広島の名物や観光地の紹介などを行っていましたが、今後はプナホウ生の質問への回答も踏まえた雑談を移動中に行いたいです。ガイド中は戦争の恐ろしさというテーマから脱線しないようにしていきたい。観光客の方一人一人の胸に被爆者の方の思いが刻まれるように。またこの度Q&Aの大切さを感じたので、平和記念公園での証言後、質問や感想をいただくことが少ないという現状を変えたいなと思いました。

出野日葵(ひまり)さん  広島大学1年生

Q1) パールハーバー国立記念館と日本文化センターの見学がとても印象に残っています。パールハーバー国立記念館では、歴史を学ぶだけではなく、慰霊碑等に込められた思い等を学ぶことができました。特に、戦艦アリゾナとミズーリの配置にはとても衝撃を受けました。

Q2) ハワイと広島、それぞれ異なる被害を受けた場所で学ぶ学生が同じ平和という話題に着いて考えれる機会になったのではないか、と思います。私たちの話す内容全てにとても真剣に聞いてくれていたことに本当に感謝しています。

Q3)同じく参加した学生たちと、この学びをより深められる活動をしていきたいなと思っています。また、私の平和活動の原点である平和公園でのボランティア活動をにさらに力を入れて取り組んでいきたいと思っています。広島についてより知ってもらうのはもちろん、ハワイについても知っていただける活動を行っていきたいです。

取材:ライトハウスハワイ編集長 大澤陽子

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