ハワイ・レインボードライブイン

カパフルでローカルの味を伝える「レインボードライブイン」

レインボードライブイン
ノスタルジックな印象が残るレインボードライブインは、カパフルの目印的存在

ハワイのローカル食文化を守り続けて半世紀、レインボーは「家族の団結」の象徴

副社長夫妻
レインボードライブイン現副社長のジム城間さんと妻のシェリーさん。半世紀の歴史を持つ店を、姉夫婦と共に切り盛りする

ワイキキ・ビーチにほど近いカパフルにあるレインボーカラーのプレートランチ屋「レインボードライブイン」。ローカルフードの草分けとして有名なこの店は、ワイキキが未開発だった1961年から続く長い歴史を持つ。現在このファミリービジネスを守るのは、2代目となるオハナたちだ。

地の利で発展した小さなドライブイン

オープン初日の様子
1961年、レインボードライブインのオープン当日に撮影された貴重な1枚

ワイキキが未開発のビーチタウンで、ハワイへの観光客数もまだ少なかった1961年。日系2世のセイジュ伊福さんは、まだ周辺に何もなかった、ワイキキ・ビーチにほど近いカパフル・アベニューの土地に、一軒のドライブイン式レストランをオープンした。それが、ハワイのプレートランチ店として草分け的な存在で、半世紀の間変わらずに愛されているあの「レインボードライブイン」である。「店の外観は、レインボーカラーの屋根部分を数年後に付けて、その後店を拡張しただけで、基本的にほとんど変わっていません。当時は、窓口で注文して食べ物を受け取るスタイルがアメリカ本土の主流だったんですよ。60年代の映画に出てくる、ハンバーガー屋さんみたいでしょ」。

創業者・伊福夫妻
地元への還元を大事にしたレインボードライブイン創業者の伊福夫妻

現在、レインボードライブインで副社長を務めるジム城間(ぐすくま)さんは話す。ジムさんの妻シェリーさんは、伊福家の次女だ。長女のベッツィーさんの夫であるハーヴィー岩村さんが2代目社長を務め、全員が経営理事を務める純粋な家族経営だ。
 
ジムさんは日々のオペレーションから食品の質、経理、雇用、マーケティングなど、店の経営全体を管理する役目を担う。シェリーさんとベッツィーさんは理事会議には出席するが、普段店に顔を出すことはほとんどないという。

伊福夫妻の子どもたちは、開店当時からよく店を手伝った。「店の掃除から皿洗いまで、何でもやりましたよ。子どもたち3人全員がお手伝いしていました」とシェリーさんは思い出を語る。今もその伝統は変わらず、家族全員が経営に参加している。シェリーさんとジムさんは、高校時代の同級生。ジムさんも、10代の頃から伊福一家と親しんでいたわけである。

「伊福家が始めたビジネスですが、今は婿2人が社長・副社長として経営している形なんです。義父が一生懸命育てた店ですし、通ってくれるお客様もたくさんいますから、家族として引き継がないわけにはいきません。家族が団結して守っていきます」とジムさん。

レインボードライブインを創業したセイジュ伊福さんは、日系2世としてアメリカで生まれたが、5歳の時に両親の故郷である沖縄の村に帰り、少年時代を現地で過ごした。しかし、日米間の空気が不穏になってきた第二次世界大戦前にハワイに帰ってきた、いわゆる「帰米2世」である。セイジュさんはその後、米陸軍第百師団に入隊し、軍隊の食事を作る調理師としてヨーロッパに駐屯した。「戦後、ハワイに帰ってきた義父がレストランビジネスを始めたのは、軍隊での役割がきっかけだったんですよ」とジムさんはレインボードライブイン創業の背景を語る。

開店後数年すると、ワイキキの大規模リゾート開発が始まり、カパフルも含めレインボードライブイン周辺一帯は大きく様変わりした。ホテルやショッピングセンター建設に伴い、付近には多くの建設工事関係者が常駐するようになり、彼らはこの店を頻繁に訪れるようになった。ワイキキ・ビーチに来るサーファーたちにも支持され、客は面白いように増えていった。

「開店後数年経った頃には、ビジネスは安定して、その後は右肩上がりになっていきました。先代は、この土地に店を建てられたことが、本当にラッキーだったと言っていましたね」とジムさん。

レインボードライブインの変わらぬメニューとロコモコの発祥

レインボードライブインのメニューは、開店当時から4つ新しいものが加わっただけで、ほとんど変わっていない。

「レインボーでは、ハワイに以前から存在していた『ランチワゴン』のメニューが基本です。開店当時は観光客が来ることは想定外だったので、ローカル客をターゲットに、ローカル料理のメニューを用意しました。そこに、先代が軍隊で作り方を学んだビーフシチューやチリが仲間入りしたわけです」とジムさんは説明する。

人気メニュー・ロコモコ
レインボードライブインで根強い人気を誇るロコモコ。ヒロの店から伝授されたレシピ

後でレインボードライブインのメニューに入り、一躍大人気となったものにあの「ロコモコ」が含まれる。ロコモコはハワイ島ヒロの日系レストランで生まれたローカル料理で、レインボードライブインでは1970年代初頭にメニューに取り入れられた。
 
「義父の軍隊時代、同じ連隊のキッチンで働いていたヒロ出身の宮城(みやしろ)さんという方がいました。義父とは仲の良い友人になったんですが、その彼はヒロに帰ったあと、1946年に『カフェ100』という店をオープンしたんです」とジムさん。

人気メニュー・ミックスプレート
男性客にはボリュームたっぷりのミックスプレートがレインボードライブインの一番人気メニュー

「ヒロでロコモコが生まれたのはちょうどその頃です。ロコモコを発明したレストランは既に閉店してしまいましたが、それを世間に広めたのはそのカフェ100でした。義父は、宮城さんから、そのレシピを直接伝授されたわけです」。オアフ島でロコモコの歴史が始まった瞬間だった。今でも、ロコモコは当時のレシピのまま、レインボードライブインの看板メニューとして残っている。
 
「うちの店はローカル男性客が多いんですが、彼らに人気なのはボリュームたっぷりの『ミックス・プレート』。ロコモコは日本人観光客に大人気です」とジムさんは話す。「うちのロコモコは牛肉100%のハンバーグを毎朝手作りして、グレービーも出汁をとって煮込み、きちんと作っています。シンプルに見えますけど、実は手がかかってるんですよ」。
 
すっきりした味つけのレインボードライブインのロコモコは、女性でも軽く食べられる。

畑違いの娘婿が経営者に就任

レインボードライブインの経営者
レインボードライブイン創設者である伊福夫妻、現社長のハーヴィーさんと副社長のジムさん

1995年に伊福夫妻がリタイアした後は、1975年から経営に参加していたハーヴィーさんが社長に就任した。しかし、忙しい店はハーヴィーさんだけでは手が回らず、当然の成り行きとして、その頃大手航空会社でカスタマーサービスとして勤務していたジムさんに声がかかった。
 
「私もちょうどその頃勤続20年を迎えていて、区切りがついたので、レインボードライブインの経営に参加することに迷いはありませんでした。レストランと航空会社は一見畑違いの分野ですが、カスタマーサービスという点では同じ。以前の勤務先で学んだ知識が非常に役に立っています」とジムさんは話す。

店内の様子
朝から大勢の客が来店する。慣れた店員の手早い客さばきが見事

一方、ハーヴィーさんは元々大学で数学を専攻し、軍隊でコンピューターの専門家として働いていた経歴を持つ。安定した軍隊の仕事を退職し、それこそまったく分野の違う仕事に飛び込むことに、ハーヴィーさんは躊躇しなかったのかとジムさんに尋ねると、「彼も、私と同じようにまったく迷いはなかったようですね。レインボードライブインの経営を楽しんでますよ」という答えが返ってきた。妻のシェリーさんが横で頷く。「私たちにとってオハナ(家族)とは、何があっても一緒に働くことを意味するんです。父が一生懸命築いて、皆さんに愛されているお店を捨てることなんてできません。どんなことも乗り越えて、守っていかなければならないんです」

レインボードラインブインのシェリーさん
「父の築いた店を守るのが役目」とレインボードラインブインのシェリーさん

レインボードライブインという名前は、シェリーさんのお兄さんが提案したものだという。
 
「当時から家族全員がマノアに住んでいたんです。マノアはよく雨が降るので、『ホーム・オブ・ザ・レインボー(虹の里)』と呼ばれているんですよ。それで、兄がレインボーという名前を提案したんです」とシェリーさん。
 
さまざまな色が重なって織り成される虹は、まさに協力して生きる家族の象徴。年月をかけて築いてきたオハナの絆への思いが、名前に込められる結果となった。
 
「私たちのこれからの課題は、ずばり『店の存続』でしょうね」とジムさんは話す。今のところ、カリフォルニア州でコンピューターエンジニアとして勤務している岩村夫妻の息子さんが、将来ハワイに帰り、レインボードライブインの3代目社長となる予定だという。

レインボードライブインのジムさん
レインボードラインブインの現副社長のジムさん。店の経営全体を管理する

「土地のリース契約も今後20年間更新できたので、これからもしばらくは安泰ですがね」とジムさんはうれしそうだ。
 
「それでも、この店は1人で経営することが難しいので、長年勤務している従業員が将来的に補佐役を務めてくれることになりそうです。3代目はまだ20代後半なので、将来に期待したいところですね」と彼は話す。
 
「レインボードラインブインでは、従業員もお客さんも皆『オハナ』です。実際、先代の頃から来てくれていた方が、子どもや孫を連れて来店することもあります。店とお客さんが一緒に成長していけるなんて、うれしいじゃありませんか?でも、店の中だけで止まっていてはいけないんです。ハワイでは、コミュニティー全体がオハナであるべきです。ですから、レインボーでは子どもたちの教育を補助するチャリティーも運営しています。地元の学校への寄付などを通して、これからもオハナの精神を広げていきたいですね。皆さんに支持されてここまでやってきた店ですから、これからは還元していきます」

◎ レインボードライブイン / Rainbow Drive-In
3308 Kanaina Ave., Honolulu
☎ 808-737-0177
▶ 営業時間:7:00am〜9:00pm
▶ 定休:無休
▶ Webサイト:rainbowdrivein.com
▶ メニュー:rainbowdrivein.com/menu/

 
(‘Eheu Spring 2014号掲載)

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