豊かな自然が織りなす名景の宝庫ハワイ。
その主役といえば、海。
色も、波も、季節によって、姿を変えて我々を魅了する。
まもなく、1年で最も海が特別な輝きを放つ夏がやってくる。
この季節こそ、ハワイの海へ!
(Photos: Hawaii Tourism Authority (HTA) / Tor Johnson)
(Photos: Koji Hirano)
ハワイには、世界のトップサーファーを魅了する大波から、ビギナーに優しい波まで多彩な波がある。例えば、ワイキキに近いアラモアナビーチ。幅広く広がる白砂のビーチの向こうには穏やかな海が水面を輝かせる。そのさらに先の白い波がサーフポイントだ。
コバルトブルーの海に入った瞬間、何かが始まる予感に鼓動が高まるだろう。ポイントを目指して、手で波を漕ぎ出すと、ゆっくりとサーフボードが波の上を滑り出す。目線は限りなく海面と近く、海と一体化したような感覚になる。
振り返れば、眼に映るのは、島の象徴のダイヤモンドヘッドと、ヤシの木の緑、海と白浜のコントラストが織りなす造形美。
波がきたら思い切りパドリングを!波が押してくれ、ボードは前へ前へと進み始める。勇気を出して立ってみよう。海面に立ちハワイの風を感じ、景色の一部になる。その感覚を知ってしまったら、もう止めることはできない。
人生観が変わるとすら言われるサーフィン人生が始まる瞬間がここにあるかもしれない。
オアフ島コオラウ山脈の北側にあるカネオヘ湾。そこに引き潮の時だけ現れる奇跡の砂浜をサンドバーと呼ぶ。この、自然が生み出す神秘のなかで海と戯れることができるのがオーシャンスポーツだ。子どもから大人まで、それぞれに合ったスタイルで気軽に楽しめる。
バナナボートは、みんなでワイワイと盛り上がるゴムボート。ジェットスキーに引っ張られながら水面を滑るように走り、水しぶきを浴び、風を切り、スリルと景色を存分に味わえる。
自らパドルを持って漕いで楽しむならカヤックを。操作は簡単なので初めてでも問題ない。小さなカヤックで、プライベート感に浸りながら、自分のペースで海の上の冒険を堪能しよう。
サンゴ礁が広がる海中を手軽に覗くことができるのはシーウォーカー。カラフルな熱帯魚に囲まれ、快適に海中散歩を満喫できる。
さまざまな選択肢がある海のアクティビティー。どんな方法で海と遊ぶか?どれを選んでもハワイの海をさらに好きになる体験になるはずだ。
吸い込まれるような透明感を持つハワイの海。その中に自分が入り込むという、夢のような体験を実現させるのがスキューバダイビングだ。
色鮮やかなサンゴ礁、彩り豊かに輝く熱帯魚、沈没船の周りを悠々と泳ぐウミガメたちが暮らす世界。海底の地形は火山活動により海底が隆起してできた島ならではのものだ。
太陽の光が届き、明るく澄んだ深さ10mの海中と、水深30mの濃い青の世界。違った景色をぜひ比較してみよう。
その紺碧色を眺めるだけでも十分に心洗われる海だが、その中は海上からは想像できない光景が広がっている。幻想的な体験は、自らが潜ることでしか叶えられない。
大海原を気持ち良さそうに泳ぐ野生のイルカを間近に見たことがあるだろうか?多数のイルカが生息するオアフ島の西海岸は、手付かずの自然が残る地域。イルカとの遭遇率は9割以上だ。
船で沖に出て透明度の高い海の中へ。そこに待っているのはイルカたち。背びれを海面から出したり、海中に潜って猛スピードで泳いだり、ジャンプをしたり。視界から消えたと思ったら後ろから抜かされることも。そんな時はイルカが遊んでいるのかもしれない。遊び心たっぷりの人懐っこいイルカに、誰もが夢中になり、不思議と心穏やかになる。
イルカに癒されるこの感覚は、いつまでも五感に残り、ハワイの忘れられない記憶となるだろう。
ハワイの海をいつもと違う角度から楽しむなら、夜の海に入ってみよう。夜の海の息吹を、生命の神秘と共に感じるのが、マンタシュノーケルだ。
ハワイ島コナの海で見られるのは、エイの仲間では最大級となるナンヨウマンタ。ホノコハウ・マリーナを出発し、海に沈みゆく太陽を眺めながらマンタのいるポイントへ海原を進む。空と海の色がオレンジ色に染め上げられ、その色が紫、濃紺へと変わったら、い
よいよ夜の海の中へ。
ボートの光によってブルーに照らされた海に入り、ポールにつかまりながら体を浮かせていると、まもなくして、プランクトンを求めて海底から巨大なマンタが優雅に姿を現す。大きな弧を描いて泳ぐマンタの姿が間近に迫ってくる。まるで海中を飛んでいるような胸びれの動きに魅せられるだろう。
夜の海面下の世界を満喫した後、ボートに乗り込み、船上から眺められるのは、零れ落ちそうな星空の天体ショー。静かな波音を聞きながら、ハワイの海が夜に見せる息吹の余韻に浸り、港へ。
(Photos:Koji Hirano)
夕暮れ時に桟橋から釣り糸を垂らしているハワイの釣り人の姿を、一度は見たことがあるのではないだろうか?
日常的に釣りをするローカルも多い。
フィッシングスポットは島中に点在する。アラモアナビーチパーク内のマジックアイランドやケワロ湾の公園先の防波堤などワイキキに近いポイント、東海岸マカプウ岬方面などが有名だが、地元の人しか知らないようなポイントも。
釣れる魚はアジ、ティラピア、カンパチ、ハリセンボン、そして地元で多く食されているアヒ、いわゆるマグロ。ハワイ語で呼ぶ魚も多く、マヒマヒ(シイラ)、オパカパカ(ヒメダイ)、「おいしい」を意味するオノ(カマスサワラ)、また、出世魚のウルアは、稚魚の時はパピオと呼ばれ、10インチ(25㎝)以下の子どもは海に返すルールがあるが、絶大な人気を誇っている。
釣り人は地元の魚を大切にしながら釣り文化を紡いでいる。その一人がステイシー・マツダだ。
ステイシーが釣りを始めたのは5歳の時。55年ほど前になる。父親が教えてくれたのは素潜りでの魚突きだった。海に潜って魚やタコ、イカなどを突いていたという。そこから、あらゆる海釣りを覚えていった。ハワイで生まれ、海がいつも近くにある環境で育った彼にとっては自然なことだった。
釣りの魅力を尋ねると「挑戦できること」。釣りに必要なのは経験だという。どのタイミングで、どこの海に行くか? 季節、その日の天気に加えて、水質や潮の流れなど海のコンディションを、これまでの経験値から計る。そして釣れる魚を予測し、それに合わせた道具を使い、狙う魚に最適な釣り方をする。手持ちの釣竿を使って小さな魚を釣るような子どもも楽しめる釣りから、沖に出て大きなカジキを捕らえる釣りまで、その手法は幅広い。
「昔は沖へ出る時は、位置や魚の動きを知るために、山などの目印を定めて船を動かしていた」というステーシー。「今はスマホのGPS機能が役立つから便利になったよ」と微笑む。最新の技術も柔軟に取り入れて釣りを進化させて楽しんでいる。
「ハワイで生まれ育ったからには、釣りも、ダイビングも、サーフィンも、海を楽しむ全てをできる男でなくては」。遊び方は無数にあると教えてくれた。「波が高い日は、ダイビングも沖釣りも危ない。そんな時は迷わずサーフボードを抱えてサーフィンに行くよ。逆に海が穏やかな日は、釣りへ。仕留めた魚をさばいて仲間たちとするバーベキューは最高さ」。
ハワイの男は、海と共に生きている。
釣り歴55年の達人、ステイシーが案内する海釣りの極意
ステイシーが、岩場で釣りをする瞬間まで大切に布にくるんでいたリール。「これは25年前に製造を止めたカリフォルニアのメーカーが作ったものなんだ。強くて扱いやすくて、このメーカーにしか出せないクオリティーがある」。金色に輝くリールは、彼がいかに大切に使ってきたかを物語っていた。それを、愛用するメーカーの1本1000ドルという釣竿に取り付けた。釣りの道具は彼にとって宝物なのだ。
ステイシーが20年近く通い続ける釣具店が、空港近くの工場地帯にある「ハナパア・ハワイ」だ。地元の釣り人が通い、時を忘れて情報交換をする憩いの場でもある。
釣りは、ハワイの海の文化。ハワイの海に釣り糸をたらせば、ハワイで生きる男の人生観にも触れられるかもしれない。
旅行中に調達するなら…
(’Eheu Spring 2020号掲載)
※このページは「’Eheu Spring 2020」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。