ハワイは幼少期からの思い出が詰まった場所です。毎年家族でハワイに来て新年を迎えるのが恒例でした。大学はハワイに進学しようと決めていたのですが、はじめにしっかり英語を勉強するため、高校はあえてカナダの学校に留学しました。
英語がわからず、勉強も難しく、ホームシックになり、カナダでの3年間は毎日泣いて過ごした記憶しかありません。卒業後は目標通りハワイの大学に進学しました。安心できるハワイでは、毎日が楽しくて仕方がありませんでした。
大学卒業後は、2年間ロサンゼルスでアパレル業界の仕事を経験し、その後、帰国しました。
父が不動産の仕事をしていたこともあり、帰国後に日系デベロッパーの戸建販売の仕事を始めました。これが私の不動産キャリアのスタートです。
この仕事を好きになったきっかけは、決済の日にありました。銀行の一室で買主さんが、嬉しさとローンへの覚悟が混ざった深い表情をされたんです。人生の大きなイベントをお手伝いさせていただいたことの喜び、この仕事の責任とやりがいを実感した瞬間でした。
2年後の2017年、グループ会社のロサンゼルス支店が立ち上がり、念願の渡米がかないました。自社開発とリモデル、不動産仲介を担当しました。ここで驚いたのは日本と違うアメリカの工事。日本は当然のように工期に合わせて完成しますが、アメリカは放っておくと一向に完成に向かいません。工事業者さんと密にミーティングを重ねるなど、アメリカでの仕事経験を積む機会になりました。
ロサンゼルスでの4年間はプライベートの時間をほぼ持たず、ひたすら仕事に没頭していました。そろそろ家庭を持ちたい、子どももほしいと思うようになり、子育てを考えて、空気がきれいなハワイに2022年に戻ってきました。
引っ越し後、すぐにブローカーライセンスをハワイ州に切り替え、不動産の仲介と、自社開発、工事管理を請け負うグループ会社を立ち上げました。
米本土での工事管理の経験から、ハワイで工事の進行が遅いのは想定内。商業物件はオープンの日が決まっているので、資材が届かなければ、朝から晩まで催促の電話をし続けます。しっかりコミュニケーションをとって「やってあげたくなる」と思ってもらえるまで信頼を築くと動いてくれるものです。
商業物件も一般住宅も、お客さまが求める完成イメージと、現場が描くイメージを一致させることがとても重要です。そのためにも、工期を遅らせないためにも、何をするかといえば、現場に張り付くんです(笑)。そしてイメージ図をビジュアルで見せ、片付けや現場保護の養生も邪魔にならない程度に私がやります。言葉だけで伝えるより、一緒に汗をかいて動くことによって、それまでの「小娘に言われたくない」というような態度が徐々に変わり、こちらが求めることも伝わっていきます。
全てきっちりと進めなくてはならないと考える性格なので、ストレスや落ち込むことも多々あります。そんなときの支えは家族です。生後3カ月になる娘は心から私を癒してくれます。
子どもの成長という楽しみも増えた今、仕事では開発とコンサルテーション、工事、仲介を含めた不動産のトータルサービスができる唯一無二のプロフェッショナルとしての立ち位置を確立させることを目指しています。そして、一人でも多くの方に「任せてよかった!」と喜んでいただけるように頑張ります。
やまぎし・けいこ◎1992年神戸生まれ。15歳からカナダの高校に3年間留学。卒業後、ハワイパシフィック大学に進学。マーケティング専攻。卒業後、ロサンゼルスのアパレル卸業でOPT。2年後に帰国。不動産会社に就職し、一戸建て販売を担当する。ロサンゼルス支店で働くため出向。自社開発やリモデル、戸建て販売を行う。4年後、ハワイへ引っ越し、開発、工事管理、不動産仲介のトータルサービスグループ企業を創業。
※このページは「ライトハウス・ハワイ 2024年4月」号掲載の情報を基に作成しています。