高校時代はハワイ、そして米本土に留学しました。17歳のとき、自律神経の乱れから摂食障害が起きて、克服するまでの10年間、誰にも言えず苦しみました。
大学卒業後は、スイス、イギリス、そして2005年にカリフォルニアで長男を出産しました。長女が生まれたころ、成長が遅かった息子が自閉症と診断されました。あらゆるセラピーを受けさせる中でベビーマッサージクラスに出会ったことが、手を使う仕事に興味を持ったきっかけです。
その後、シングルマザーとして生きていくために母のいるハワイへ戻り、エステとマッサージの学校に通いました。マッサージセラピストの資格を取得後、『ルアナワイキキ』の専属セラピストになりました。
そんなある日、近所に住んでいたイタリア高級ブティックのマネージャーから声を掛けられたのです。未経験でしたが、正社員として働き始めました。
セラピストを続ける一方、ブティックでは、英語圏の方への接客やVIP対応、セールスなど厳しい特訓を受けました。
仕事をしていくうちに、売り上げではなく、お客さまが店内で過ごされる大事な時間の中で私ができる全てを尽くし、リラックスして楽しい時間を過ごしていただきたいと思うようになりました。いつの間にか売り上げも伸び、頑張るほど会社に認めてもらえ、「自分の居場所」を見つけたような気がしました。初めて自分に自信が持てるようになったのがその頃です。
お客さまの笑顔に出会えること、働けることに感謝しながら日々チャレンジしていたところ、ご縁をいただき、『ルアナワイキキ』のオーナーになることに。私の祖母は戦後の日本で美容家となり、父は40代で、母は60代で起業しています。私も覚悟を決めました。
ところがまもなくして起こったのがコロナのパンデミック。先が見えない中、自分を奮い立たせ、とにかく行動を続けました。内装を変え、英語のウェブやパンフレットを作成し、ロックダウン時以外は店を開け続けました。改めて猛勉強しエステの資格を取得。美容メニューを追加しました。
その結果、日本人観光客が90%だったお客さま層は、英語圏がメインとなり、米本土の親日家の方には「日本を感じる」と喜んでいただけるようになりました。今は、小さい子どもが安全に過ごせる部屋を準備しています。また、セラピスト仲間が幸せに働けるサロンでありたいので、そのための改良を重ねています。
思えば、自分がつらかったときにマッサージを受けて癒されたこと、セラピストとしてサロンで働いていたこと、ブティックで多くの経験をさせていただいたこと、家族のことなど、全ての経験が生かされて、今があります。
プライベートでは、『ロカヒ・ライフ・ハワイ』という団体で、特質な子どもたちが大人になったときに社会に貢献できるように活動しています。息子が自閉症と診断されてから受け入れるまでかなり時間がかかりましたが、彼のおかげで世界が広がりました。
また、体力的に厳しかった時期に体を元気にしてくれた健康ドリンクの販売にも母と共に携わっています。
これまで健康の大切さを実感してきたからこそ、支えてくださった方やご縁のある方々の心と体が健康であってほしいのです。そのために私ができる「接客」という形で笑顔になれる場所を提供し、精一杯の恩返しをしたい。そして、ハワイに少しでも貢献できたら何よりです。
かつき・みちこ◎九州出身。16歳で母親とハワイ移住。米本土の高校を経て帰国。2002年青山学院大学文学部卒業。ヨーロッパ、カリフォルニア、2012年にハワイへ。マッサージ資格取得後、ホテルスパ、2013年『ルアナワイキキ』セラピストと高級ブティック正社員に。2019年『ルアナワイキキ』オーナー。高級ブティック『ブルネロクチネリ』アラモアナセンター店契約スタイリスト、『フォーエバオーリビングプロダクツ』販売も務める。
※このページは「ライトハウス・ハワイ 2022年6月1日」号掲載の情報を基に作成しています。