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日本語でおしゃべりをして、日本食を食べて、リラックスして自分らしく過ごすことができるアダルトデイケア『憩いの場』。ホテルマンから転身したメルビン・イナツカ代表に人生の転機を伺った。

 

 

ハワイ出身の父が軍の仕事で東京に駐在していたため、生まれも育ちも東京です。高校まで米軍の学校に通っていました。学校では英語でしたが、母は日本人なので最初に覚えたのは日本語です。高校卒業後、ハワイに引っ越し、ハワイ大学へ進学しました。

卒業後はJALパックを経て、ホテル業界で20年以上働きました。担当は主に日本やアジア向けの営業でした。JALパックという、ホテル側からみるとエージェントの立場での勤務経験を生かして、ホテルの問題点を的確に指摘し、修正していくうちに、エージェントを増やすことができました。ロサンゼルスのボナベンチャーホテルで働いていたときは、日本のお客さまからのクレームを大幅に減らすなど、やり甲斐のある仕事でした。

ところがバブル崩壊後、ホテル業界の景気は悪化の一途をたどり、従業員が大幅カットされたのです。就職先が見つからず、毎日焦りは増すばかり。そこで思いきって方向転換。ハワイへ戻り、興味のあるコンピューターを学ぶために大学院へ入学しました。

 

 

強い意志を持っていれば道は開けていく

2006年に卒業し、学校で教師たちにコンピューターを教えたりしたのですが、何かが違う、もっと人と接する仕事をしたいと思うようになりました。

高齢になってきた母の心配もあり、介護の仕事に興味を持ち、介護士の資格を取得。老人ホームに勤務しました。そこで目にしたのは、さまざまな人種の高齢者がいる中で、引っ込み思案のため一人でぽつんとしている日本人。面会に来る家族もあまり見かけませんでした。そんな日本人高齢者のための介護をしたいと思うようになりました。

一人一人と向き合って介護をするために、知人と共同出資で訪問介護の会社を設立。ところがフィリピン人のパートナーと、文化の違いから考えが食い違い、せっかく立ち上げた会社は長くは続きませんでした。予想外の展開に落ち込みました。そんな中、たまたま理容院で見たポスターに書いてあった言葉が『Where there is a will, there is a way』。しっかり意志を持てば道は開けるんだと気付かされました。

その後、日本人向けのアダルトデイケアセンターや訪問介護などで8年間経験を積みました。

 

 

自分の国の文化、食事、言葉に囲まれる憩いの場を

昨年8月に日本語で過ごせる憩いの場『Ikoi no Ba』をオープンしました。ハワイはアメリカ50州の中で零細企業が営業許可を得るのが一番難しいとされているところ。時間も労力も費やし、くじけそうになりましたが、座右の銘である言葉を信じ認可を取得。

『Ikoi no Ba』は、カラオケ、折り紙、おしゃべりなど、誰にも遠慮せずに好きなことをする場所です。決められたプログラムを、周りに合わせる必要はありません。

夢は、各国の文化、食事、言葉で過ごせる場を作ること。長年社会に貢献してこられた高齢者が安心して楽しめる〝憩いの場〟にしたい。「アダルトデイケア施設に行く」ではなく「憩いの場に遊びに行く」と思ってほしいのです。

 

 

 

Melvin Inatsuka

◎1953年東京生まれ。高校卒業後ハワイへ移住し、ハワイ大学入学。1976年卒業。JALパック、カウアイ島シェラトンココナツビーチホテルなどハワイと米本土のホテル勤務。2001年ハワイパシフィック大学大学院入学。2003年卒業。2010年に介護士(CNA)資格取得。2017年Ikoi no Ba 創設。兼、Kahu Malama Nurses勤務。

 

(2018年7月1日掲載)

※このページは「ライトハウス・ハワイ 2018年7月1日」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

 

 

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