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ホノルル補習授業校 レインボー学園 政府派遣校長  稲田 和良

 

 

日本人補習校として、ハワイで44年の歴史をもつレインボー学園。生徒数は600名を超え、ハワイにおける日本語教育発展の一翼を担ってきた。そんな学園に今年4月に着任した稲田和良校長に転機を伺った。

 

 

北海道生まれの私は、高校生のときには、海外で働きたいという夢を持っていました。小さい頃にYMCAに通っていたことやテレビ番組の影響もあったのでしょうか、海外への憧れが強かったのです。外交官、商社マン、航海士等が海外で活躍できると考えましたが、同時に教師という仕事にも興味を覚え、千葉大学教育学部に進学しました。

卒業後は、千葉県内で小学校の教員となりましたが、海外勤務の夢を忘れることはなく、今から約25年前、試験を受けて在サウジアラビア王国ジェッダ日本人学校で派遣教員として3年間の教員生活を経験しました。子どもたちに地球的な規模での考え方や見方を身に付けてほしいとさまざまな授業に取り組み、それらの実践や経験がその後の教員としての成長に役立ったことは言うまでもありません。

 

伝達ツールである日本語で自分の思いを言葉にのせる

そして、2度目の海外派遣がレインボー学園です。日本国内の学校とはあまりにも違う環境の中で自分ができることは何かと自問。そして最初に考えたことは「適応」でした。ハワイの物の考え方や価値観の相違を理解することから始めました。適応するとは、自分で体感し、そして考え、行動するといったことの連続。だからこそ、何事も自分ですることを目指しました。

また、レインボー学園は土曜日だけですから、多くの子どもたちと触れ合える時間はあまりありません。そこで毎週発行する学校だよりを活用。「日本語コーナー」でことわざやなぞなぞなどを掲載し、日本語に興味関心を持ってもらい、親子での会話が少しでも増えるようにと始めました。その結果、私に話しかけてくれる子どもが増え、保護者の皆様からも毎週楽しみですと言われるようになりました。

レインボー学園では、日本語を覚えることだけが目的ではなく、日本の学校と同じような環境で学び、日本文化を感じ、日本人としての思いを感じることが大切です。日本語は伝達ツールの一つ。大切なことは自分の思いを言葉にのせること。時には日本語で時には英語で、グローバルな視点で自分の考えを伝えられる人に育ってほしいと思います。

私自身もハワイ、そしてアメリカを理解し、自分の一部として吸収し、使命や役割を自覚して、一つでも子どもたちのためになるようにこの任期を過ごしたいと思います。

 

未熟児で生まれた私が今ここにいるのは

最後に子ども時代のエピソードを1つ。私は未熟児で生まれ、生きるか死ぬかという状態だったようです。小学校入学前に受けた知能テストでは、上手に◯を描けず、1年生の先生から「このままだと高校には進学出来ませんよ」と言われました。小学校時代、私には知的障害的なところがあって、勉強でも運動でも劣等感をもって過ごし、中学でやっとみんなに追いつきました。そして、今、私は校長としてここにいます。

今、目の前にいる子どもの姿が全てではないのです。子どもにはいろんな可能性があるのです。その可能性を見つけ引き出すために、一緒にがんばりましょうとお伝えしたいと思います。

レインボー学園の学舎は、ダイヤモンドヘッドの麓のカイムキミドルスクール

 

 

いなだ・かずよし

◎1956年生まれ。北海道出身。千葉大学教育学部を卒業後、船橋市内の小学校に勤務。1992年、在サウジアラビア王国ジェッダ日本人学校で派遣教員として3年間勤務。教育委員会を経て、船橋市立法典小学校の校長に着任。2017年の退職後、再任用教員として小学校に勤務。今年、ホノルル補習授業校の派遣校長として着任。

(2018年6月16日掲載)

※このページは「ライトハウス・ハワイ 2018年6月16日」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

 

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