ドクターズ・オブ・ワイキキ 共同創立パートナー/一般内科医　　アラン・ウー

「ハワイの深刻な医師不足をなんとかしたい」と、一念発起。シェラトン・プリンセス・カイウラニ・ホテル内に『ドクターズ・オブ・ワイキキ』を開院させたドクター、アラン・ウーさんに人生の転機を伺った。

台湾で生まれ、９歳のときに家族でハワイに移住してきました。育ったのはパールシティーです。

ずっと医師になりたいと思っていたのですが、医学部はあまりにも高額。働いて貯金して医学部に入学し、なんとか学費を納めていました。あるとき米軍から医学生として全額奨学金を受けないかと声が掛かったのです。当時、その枠は全米でたった２００人。すべての試験と身体検査などの厳しいチェックを経て、合格することができました。これが私の最初の転機です。

アフガニスタンの戦火の中、延べ７０００人を治療

２００７年、研修医としてワシントンDCにあるウォルターリード米軍医療センターへ配属。大統領や国会議員らを看る施設です。その後、トリプラー陸軍病院を経て、２０１０年にアフガニスタンの戦場へ医師として送られることに。ここでの経験は壮絶でした。一人で１年間に治療した人数は約７０００人。毎日爆弾が飛んでくる中で、銃を携帯し身を守りながら、アメリカ人、そして現地の子どもたちの治療に心血を注ぎました。手術はテントの中で、限られた医療機器を駆使して行いました。

ある日、パトロールをしていた車が爆撃を受け、同乗していた私のアシスタントが内臓破裂状態で運ばれてきました。彼は「死にたくない」と私を見て叫び、必死に心臓マッサージを続けましたが、亡くなりました。まだ20歳だった彼を救うことができなかった。胸が張り裂けるほど辛い体験です。こうした体験や当時１歳の息子にも会えない寂しさで、燃え尽き、疲れ果てました。医師としては、これ以上の訓練はないほどのありとあらゆる経験を積み、アメリカ陸軍勲章『ブロンズスター』などを受章しました。

２０１３年、トリプラー陸軍病院に戻り、操縦士等の専門外科医になるため１年間航空医学を学び、訓練を重ねた後、スコフィールドバラックスのヘッドドクターに。現場で緊急治療の必要性を強く感じ、クイーンズ病院に交渉。軍のヘリコプターを同病院に着陸できるようにしたことも医師として喜ばしいことです。

多くの患者さんを救いたい。ワイキキに診療所を開院

ハワイは私にとって特別の場所です。在住者に加えて世界中の人が集まるにも関わらず、医師の数が不足している現状を受け、急病診療所『ドクターズ・オブ・ワイキキ』を開院しました。朝８時から深夜０時まで年中無休で、旅行客も在住者も受け入れます。

９歳でハワイに引っ越してきたとき、英語が話せず苦労したからこそ、言葉の壁を超えた医療の必要性も痛感しています。私たちのチームは、日本語や中国語など各国の言葉を話す看護師などフレンドリーで素晴らしいスタッフがそろっています。構想が具体化してから1年間、内装も壁の色も私たちが決めたアットホームな病院です。夢の実現へ踏み出したこの病院の開院が私の大きな転機です。

医療は進化し続けています。どれほどの経験値があっても、学び続けながら、ここハワイで多くの方々を救っていきたいと思います。

(2019年1月16日掲載）

※このページは「ライトハウス・ハワイ 2019年1月16日」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

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