カピオラニ・コミュニティー・カレッジ 日本語学科教授 HATJ（ハワイ日本語教師会） 会長　片岡由紀夫　

ハワイのカピオラニ・コミュニティー・カレッジの日本語学科の教授として教鞭を執る片岡由紀夫先生。HATJ（ハワイ日本語教師会）の会長としても、日本語教育の発展に尽くす片岡先生に人生の転機を伺った。

千葉県生まれで、両親は共に教員でした。そのせいか、大学では英文学を専攻しつつも、教員免許も取得。英語の教師だった父を訪ねて、アメリカ人の先生たちがよく我が家を訪れていたので、子どもの頃から英語には慣れ親しんでいました。兄や義理の姉も教師となり、千葉市で開催された研究授業では、義理の姉が実習者で、兄も教員として参加。父はその研究授業を監修する立場であるという、非常に不思議な光景でした。教師になる前から、教師の行く末、全てが見えてしまい、何だかつまらなくなってしまいました。うまくいっても将来はこんな感じなんだと。よくできても、「片岡先生の息子さんだから」と言われ、うまくいかなければ、ひどく言われる。良くても悪くても、自分の得にならない。

そこで、ニューヨークの大学に留学し、国際関係学を専攻することにしました。この留学こそが人生の転機となりました。当時は日本語がマイナーな時代で、チュータープログラムを通じてすぐ家庭教師に登録できました。日英両語が使えて、日本独特のニュアンスを表現できることに面白みを感じ、日本語教師になりたいと思い始めました。

日本語で世界に繋がって欲しい、その橋渡しが私の夢

早速、日本語のプログラムが充実しているインディアナ大学に転校し、Teaching English as a second languageの教授法を習得。次にはオハイオに移り、そこでも学びながら、アシスタントティーチャーとして２年教えました。修士号取得後は、日本語教師としてワシントン大学に勤務。ところが、６年目にし、解雇されたのです。理由は学生の評価は高かったものの、職場での人間関係に恵まれなかったため。環境と志を思い切って変える決意をし、ハワイのカピオラニ・コミュニティー・カレッジ（KCC）の日本語教師の面接を受けました。実際に会って面接してもらった方がいいので、ハワイに飛んでインタビュー。

このとき訪れたハワイの印象が素晴らしく、当時10歳の娘が成長するには最適でした。何よりも日系人が多く、安心感がありました。サポート体制の素晴らしいKCCで、楽しみながら教えているうちに21年が過ぎました。現在は日本語学科の教授として、日々学生と向き合っています。また、HATJ（ハワイ日本語教師会）の会長として、アメリカでも日本語が話される機会の多いハワイから、日本語教育の普及に努めています。

KCCの最初の授業で、私はいつもこう学生に話します。

ここで学んだ日本語を駆使して世界に飛び出そう。想像してください。あなたはビジネスで訪れたある大都市のバーでお酒を飲んでいます。すると、隣から流暢な日本語が聞こえてくる。「日本語上手ですね」と話しかけると、その人物は「ハワイで習いました」と答えます。しかも、「KCCで」と。「私もです。誰に習ったのですか？」と問うと、「片岡先生です」「私もです」と会話が広がりハワイで学んだ日本語が、世界に出たときに一つにつながるのです。関わった学生の人生に日本語を通して貢献したい。それが私の永遠の夢です。

(2019年4月1日掲載）

※このページは「ライトハウス・ハワイ 2019年4月1日」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

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