大抵の大人にとって、高齢の親との同居には避けられない問題があると思う。親子という確固とした上下関係があり、親にとっては50代・60代になっていても子供は子供であることに変わりなく、ティーンエージャーのような扱いをする(不幸にも認知症にかかってしまうと役割が逆転してしまうが)。
僕の家では、6年前から妻の母親が同居している。彼女もやはり、僕ら(とりわけ妻)をまるでままごと遊びをしている高校生であるかのように扱い、ああしろ、こうしろと自分が長年やってきたやり方をやたら“教え込み”たがる。夜遅くまで外出するな、出掛けるときは必ず火元を点検しろ、風邪を引くといけないから上着を着て行け(ハワイで?)、無駄遣いをするな、穴あきデニムなんか履いていたらホームレスかと思われるなどなど、枚挙にいとまがない。
自分たちの家に住んでいるのだからこちらのルールに従ってもらうのが当然と妻は信じているが、母親は、子供への権限は生まれたときに与えられたものであり、それは一生続くものだと考えている。だから、お互いを大切に思っているにもかかわらず、毎日“up the wall”すなわちイライラさせ合っている。
そんな彼女が最近よく母親からの逃避に行きたがる店が、偶然ながらサウスショアマーケットにある「Off The Wall(オフ・ザ・ウォール)」だ。オープンして1年余りになるこのクラフトビール&ワイン店は、最近新シェフが就任し、それに伴い新メニューが加わった。レーン・ヤスダ・シェフが腕をふるうクリスピーアヒバーガー、ローカルポケボウル、サラミとプロシュットと4種類のチーズとフルーツを盛り合わせたシャルキュトリーボード、ヴィーガンキヌアボウルなど、ローカル風にアレンジしたラテン料理を僕もお酒を飲まない妻もすごく気に入っている。
メニューのセレクションはかなり限られているが、ププス/タパス風のバーアイテムも中南米料理のガストロパブアイテムもエキゾチックな味わいで、2つの世界のフュージョンを世界各国から集めたクラフトビール(量り売り)といっしょに楽しめる。
アペタイザーは、ビーフエンパナーダ、パパスブラバス(厚切りポテトのフレンチフライ、スパイシーアイオリを思わせるブラバスソース添え)、チミチュリウィングス、ローカルアヒセビーチェ(ローストパイナップルサルサ添え)、キヌアサラダ(シラントロライムドレッシング)、シーズナルハウスサラダ(フルーツ、リリコイドレッシング)。
メインには、クアロアランチビーフを使用した絶妙なお味のオフザウォールバーガーやチポトレグアバソースで照りをつけた脂たっぷりの豚角切り肉をご飯にのせたスモークグアバポークボウル、ベジタリアンバーガーのような手軽なものから、ローストガーリックとポブラノのアイオリソースが大胆な味わいを醸し出すニューヨークストリップステーキ、ほろほろに仕上げたスーヴィードパタゴニアンショートリブ(チミチュリとローストガーリックマッシュポテト添え)などゆっくり時間をかけて調理した本格的な料理まで揃う。
デザートは、自家製フラン、ブリガデイロ(ブラジルのファッジボール)、ブラジリアンパヴェ(南米流ティラミスと呼んでいいかも)の3つ。個人的には、超好きだったオレオクラムチュロスのリターンを願っている(オーナーはいずれ復帰させると約束してくれた)。
同世帯でなくても5人までのレストラン利用が許可されたので、また仲間たちといっしょに食事ができてすごくうれしい。妻は、母親からの健全な一時的隔離だと主張するが、僕はどうも本当の理由はラテンアメリカ系超イケメンオーナーのホータさんをうっとり眺めたいからなのではないかと怪しんでる。
幸いにも僕には意外な味方がいて、「イケメンには気をつけなさいよ。ああいう人たちには女たらしが多いから」と娘に注意している義母の声が手に取るように聞こえて来る。しかし裏を返せばそれは「ショーンみたいに冴えないルックスの男にくっついておきなさい。絶対に浮気しないから」ということだろうから、手放しで喜んでられないか。
◎ マーケティング会社社長。ハワイ随一のグルメ通として知られている食いしん坊。
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※このページは「ライトハウス・ハワイ 2020年11月16日」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。