僕の味覚が子どもの頃と比べて劇的に変わったように、食べ物の多様性も時代とともに著しく進化した。例えばニューアメリカン。移民たちが持ち込んださまざまな食文化を融合させた新しいスタイルのアメリカ料理だが、これは、スパゲッティーやハンバーガー、ホットドッグ止まりだったアメリカ料理の様相を変えた。僕が幼い頃好きだった料理は多くがヨーロッパにルーツを持つものだった。しかしニューアメリカンは、地中海、東南アジア、中東の影響を受けている。まず、芽キャベツ、ケール、ビーツ、キヌア、ゴートチーズ等、食材自体が違うし、味付けにはハリッサ、ターメリック、コリアンダー、柚子胡椒等が使われる。どれも子どもの頃はクサいと思っていたのに、今ではないと欲しくなってしまう。石鹸の味がすると毛嫌いしていたパクチーがおいしいと思うのはなぜだろう?大人になって石鹸を食べるのが好きになったわけでは決してないのに。
アメリカンブラッスリーの『12th アベニューグリル』は、今年で創業13年を迎える。そこで最近、マリネポークチョップ等の定番人気アイテムはそのままに、新たなメニューを加えた。自家製フェタチーズ、レッドオニオン、松の実とともにリースリングヴィネグレットでいただくビッグアイランド産イチゴとスミダファームクレソンのサラダや、グリルド・ハワイランチャーズ・スカートステーキ・ ローズマリー風味のローストガーリックマッシュポテトとじっくり焼いたフェンネルとホーファームトマトのラグー添え等、コンテンポラリーなアメリカンがいくつも登場している。
この店は、夜遅めに手頃な値段でステーキが楽しめるホノルルでも指折りのスポットであることも見逃せない。月曜から木曜の午後8時30分以降、12オンスのハワイランチャーズ・ニューヨークストリップロインステーキとハンドカットフレンチフライ、ローカルグリーン、ブロードサイド・カベルネソーヴィニョン1杯がセットになった“ステーキフリット&キャブ”がなんと25ドルで楽しめる。
アメリカ人の僕の味覚は、確かに昔と比べてずっと幅が広がった。以前は何が何でも避けていた緑野菜を山ほど食べるようになったし、したたる血のようで気持ち悪かったビーツも、サラダの甘いアクセントに歓迎だ。濡れたバンドエイドの味がすると嫌っていたウニは、今では濃厚なうま味がたまらなく、いくら食べても飽きない。
◎ マーケティング会社社長。ハワイ随一のグルメ通として知られている食いしん坊。
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(2017年7月1日掲載)
※このページは「ライトハウス・ハワイ 2017年7月1日」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。