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僕は以前、カマアイナ割引を受けるのにどうして居住証明が必要なのか不思議に思っていた。着古したハワイアンプライドTシャツにボードショーツ、足丸出しのビーサンといういでたちで、ふんぞり返って歩いている姿を見れば、一目でロコだとわかるはずだ。重度の日焼けで真っ赤になった真っ白の肌にでっかいハイビスカス柄の派手なアロハシャツをまとい、ウエストポーチを腰に巻いたペアルックの旅行者とは紛れなく違うではないか。しかしこうして筆を走らせていると、なんかその理由が明らかになってきた。僕はアロハシャツというものをまず着ることがない。なぜかと言うと、メンズバッグを肩に掛けた色白の僕がアロハシャツ姿で知らない店に入ると、ほぼ必ずと言っていいほど店員たちは「いらっしゃいませ」と迎えるからだ。

 

 

いずれにしても、ハワイの暮らしは楽でない。青空と紺碧の海に囲まれた生活ができることに課せられる、いわゆる“パラダイス・タックス”を払わなければならないから、節約になることなら何でも歓迎だ。ところがどういう訳か、ヤードハウス、ハイズ・ステーキハウス、ザ・チーズケーキ・ファクトリーなど、カマアイナたちがこぞって通うワイキキ内の店のほとんどがスペシャルディールを提供していない。人気店だから必要ないのだろう。美味しいものに目がないから、いやでも定価を払うしかない。

しかし、ワイキキ以外では、カマアイナ割引というコンセプト自体あまり意味がない。たとえば客のほとんどがカマアイナであるカネオヘでは、割引といえば、せいぜいミリタリーディスカウントだろう。この町に新しくオープンした「オノ2ガイズ」の場合は、ディスカウントなんてまったく必要ないかもしれない。数ヶ月前にソウルからカネオヘに移住してきたキョン・ジェ “エバ” キムさんと彼のビジネスパートナーであるキョン・ホ “カイ” リョさん(ハワイ語名を加えているのは、ロコっぽくしたいというのもあったかもしれないが、それよりも韓国語の名前が地元の人には発音しにくという理由だった)が経営しているお洒落なベーカリーだ。

店内には、グアバデニッシュ、バナナカスタードクリームパン、チョコカスタードクリームパン、マンドゥパン、カレーポテトパン、ミニパイナップルパイ、柚子あんぱん、ダブルソーセージロール、スモールソーセージピザ、“クレイジーローフ”スイートポテトブレッド、“クレイジーローフ”チェストナッツブレッド、ミルキーローフブレッド、ゴールデンローフクリームチーズダブルベースブレッドなど、珍しい、というかほとんどへんてこに思えるアイテムがずらりと並ぶ。

 

 

もちろん、バタークロワッサン、ロールケーキ(グリーンティーのほかにミルキーレーズンやチョコモカのような馴染みのないフレーバーもあるけれど)、カップケーキ(チョコラテとシトラスレモンフレーバーのフロスティングあり or なし)などオーソドックスなものもある。しかし、珍オプションがこんなに色々あるのに、わざわざ尋常なものを選ぶ理由はない。

エバさんは、韓国でテレビコマーシャルのディレクターを16年間していたという。MBSテレビ局のカフェにインスピレーションを得て、持ち前のビジュアルタレントを、プロのパン職人であるレイさんの力を借りて、パン作りに活かそうと決心したそうだ。僕は、おそらくウィンドワード地区唯一のコリアンベーカリーだろうこの店のペストリーのクオリティに最初やや心配したのだが、エバさんと会うや否や、その社交的で大らかな人柄にたちまち惹かれてしまった。誠実で親切、しかもなかなかユーモアのある人だ。それでは、いざペストリーに挑戦。

バターたっぷりの柔らかなクロワッサン風グアバデニッシュは甘さ控えめ。僕は特にそのフレーバーが気に入った。続くはバナナカスタードクリームパン。中に詰まったひんやり濃厚なバナナ風味のカスタードが絶品だった。ブレッド類も勝るとも劣らない美味しさ。シナモンブレッド風“クレイジーローフ”スイートポテトブレッドは、紫イモが程よい風味と甘さを醸し出し、チェストナッツブレッドは、引き裂くと中からまるごとの栗が顔を出した。サンドイッチやフレンチトーストに絶好のミルキーローフは、家庭用に持ち帰りたい。柚子あんが詰まったあんぱんは、デリケートな酸味が美味。パイナップルパイは、バター風味のクラストにほんのり甘くて美味しいパイナップルのキャラメリゼが詰まっていた。

  

帰り際、お土産用にいくつか買ったのだが、ふと見るとエバさんはおまけを入れてくれていた。子供の頃、店の人たちがよくそうしてくれたので、恩送りをしているだけの話だと彼は言う。僕はカマアイナの町カネオヘがなぜこの店のエバ、カイ、そしてレイさんを歓迎しているのか納得した。オノ2ガイズにはディスカウントはないかもしれないが、カマアイナもビジターも家族のように扱ってくれる。それは、10%OFFクーポンよりもずっと価値があるだろう。

 

◎オノ2ガイズ /Ono2Guys
45-773 Kamehameha Highway., Kaneohe,
☎808-524-0447
▶営業時間:木~月 6:00am – 3:00pm(火・水曜定休日)
▶ 取扱クレジットカード:ビザ、マスターカード、JCB、アメリカンエクスプレス

ショーン・モリス

ショーン・モリス◎ マーケティング会社社長。ハワイ随一のグルメ通として知られている食いしん坊。
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Twitter: @incurablepicure
Instagram: @incurablepicure

(2019年9月1日掲載)

※このページは「ライトハウス・ハワイ 2019年9月1日」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

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