食の分野以外では、僕は得をすることが滅多にない。セール品は大概サイズが売り切れだったり、気に入ったスタイルが見つからなかったりだし、かと言って値切るのは苦手だ。店員を困らせたくなく、またケチだと思われるのも嫌なので、あっさり諦めてしまう。高級店に行って、「ボタンを一つ取ったら、不良品として値引きしてもらえる?」とか「現金で払うから、3%オフにしてくれる?」なんてしつこく押してみようか。そうしたら、ムッとした店員はなんとか僕を追い払いたいばかりにこっそり社員割引をしてくれるかも、なんて実際にはやれもしないことを頭の中で描いてみたりする。
そういう性格ゆえ、無理なく自然に得られるディスカウントが好きだ。シニア割引がもらえる年齢にはまだ達していないが(そうなれば、毎週水曜日はすごく忙しくなるだろう)、うれしいことにカマアイナ割引はもらえる。ワイキキもそうだが、観光地はどこもお得なオファーで溢れている。
さて先日、TV番組“マスターシェフ”の司会などで知られるセレブシェフ、グラハム・エリオット氏が、新しくポリネシアカルチャーセンターのフキラウ・マーケットプレイス内にある「パウンダーズ」の厨房の舵を取っていると知り、早速行ってきた。ライエまでちょっと遠いなとは思ったのだが、10%のカマアイナ割引があるというのにも釣られ、足を運ぶことに。行ってみてわかったのだが、シェフ自身も実は10代をエヴァで過ごしたカマアイナだった。
新鮮な地元産の農産物や放牧肉、持続可能な漁業、化学薬品を使わない地球に優しい生産を重視する彼は、そのクリエティブなアプローチの料理に地場産物だけでなく、ローカルならではの感性も溶け込ませている。
それは、キムチコールスロー、マカダミアナッツ、スイートチリソース、トロピカルランチドレッシングを取り入れたチキンウィングスや、カルビソースでさっと焼いて照りをつけた胡麻風味のマヒマヒを新鮮な野菜の上にのせたシアードマヒサラダなど、ププスのメニューだけを見ても明らかだ。ざっくり縦割りにしたアイスバーグレタスのアイランドウェッジサラダは、カリカリベーコンのアクセントとともにハワイアンパパイヤとリリコイのドレッシングでいただく。アヒポケは、タロチップスの上にアレンジしてナチョスとして供される。このほかオレキエッテパスタ、ニュージーランドマッスル、トマトサラダといったメインランドの定番アイテムも揃う。
メインに含まれるひと味違う料理も、ローカルにはきっとうれしいだろう。サンフィッシュの姿揚げは、ホット&サワーソースで。ホプ・カイ(タコまたはマヒマヒのグリル)には、ポテトハッシュとポーチュギーズソーセージとフェンネルサラダが添えられている。パイナップルフライドライスと言えば普通タイレストランなのだが、ここのはガーリックシュリンプと軽く焼いたスパムが入っていて、やはりローカル色が濃い。また、フリフリチキンやグアババーベキューソースで照り良く焼き上げたチャーシューポークチョップ マンゴーサルサ添えなどご当地グルメもある。お肉派には、シラチャーステーキソースが斬新な味わいのグリルドリブアイ、あるいはラムすね肉の煮込み パクチーのチミチュリソースとラムのジュソース、ココナッツマッシュポテト添えがいいかも。
カジュアルなものでは、マンゴー&プロシュット、カフクシュリンプ&ペストのようなローカルフレーバーのピザや、パイナップルとカルビソース入りパウンダーズバーガー、マンゴーサルサとアボカドピューレ入りヴィーガンハワイアンバーガー、さらにはシェフ・エリオットのシグネチャーであるブリーチーズと焦がしオニオンとガーリックマヨネーズ入りグラハムバーガーなどがある。
店舗は約9千平方フィートの広々としたスペースで、エアコンの効いた涼しい室内と風通しのいいオープンエアのラナイに席が用意されている。深みのある赤い色合いのウッド素材が随所に使われ、流木だけで描かれた波のミューラルアートが印象的な店内は、居心地のいい空間だ。フォーカルポイントのオープンキッチンの真ん中には、キアヴェの薪が燃えるレンガのピザ窯が鎮座している。子供たちが自分好みのピザを作って楽しめるのもいい。
ビジター気分を味わいながら10%のカマアイナ割引も利用できたこのライエでの体験は新鮮だった。食後は、フキラウ・マーケットプレイス内をぶら歩きした。値切りたいのは山々だったが、フレンドリーな店員さんばかりで、やっぱり出来ずに終わった。
Pounders
パウンダーズ
Phone: (808) 293-3287
フキラウ・マーケットプレイス
55-370 Kamehameha Highway
【営】月、火、木~土 11:00am – 8:30pm(日・水曜定休日)
【取扱クレジットカード】ビザ、マスターカード、JCB
◎ マーケティング会社社長。ハワイ随一のグルメ通として知られている食いしん坊。
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※このページは「ライトハウス・ハワイ 2021年12月16日」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。