子育ての最終目標は「子どもが一人の人間として社会の中で自立して生きていけるようになること」だと思います。そのために多くの親が必死で子育てをしています。学校の成績をチェックし、反抗期の子どもに疎まれてもあれこれ助言するのは、将来を心配する親心です。また多忙な中でもお稽古事をさせているのは、その子の才能の芽を見つけ将来につなげるためだけではありません。例えばスポーツをさせるのは、体力や気力を養えるだけでなく、チームプレーを通して必要な社会性を身に付けることができると知っているからでしょう。学校の成績や課外活動が重要視される環境の中で育つ現代のハワイの子どもたちは、とても忙しい生活を送っています。家事の手伝いや身の回りのことを自分でする習慣を身に付けることがつい後回しになりがちですが、実は「家事ができる」ことは子どもの自立にとって、想像以上に重要なのことなのです。
わが家は現在ホストファミリーとして、日本の大学生を預かっています。彼女たちとの交流を通して改めて気付いたことは、日本人の家庭では母親が何でもやってくれるということです。実家から大学に通っていると、掃除・洗濯はもちろん、おいしいご飯がいつでも用意されています。お弁当を作ってくれる親さえいます。そんな実家暮らしは楽で快適で、わざわざ高い家賃を払って一人暮らしをしようとは思わないと彼女たちは言います。こうした若者は日本人に限らず、ハワイにも実は多く見受けられます。いい年齢になっても自立せず、パラサイト・シングルや子ども部屋オジサン(実家の子ども部屋に暮らし続けている独身の中高年男性)と呼ばれる大人が出来上がってしまうのです。
では自立心を育むために親が意識しなければいけないことは何でしょうか。
①親と子どもの課題を分離する
②自己決定する機会を多く与える
③失敗を経験させる
④他人と比較せずありのままの子どもを承認する
これらが大事だと思うのです。例えば小さな頃なら「着る服は自分で選ばせる」のです。親として好ましいコーデはあるでしょうが、それを用意して与え続けると、自分の服は自分で考えて選ぶという自己決定する機会を奪うことになります。最初は色や柄がチグハグでも、やがて自分に似合う服を上手にコーディネートできるようになります。失敗をしながら自分で学んでいく力が子どもには備わっています。できることはどんなことでもわが子にやってあげたい、また自分が親からしてほしかったのに与えられなかったことをわが子には与えたいと願うのが親心。ですが、子どもがやるべきこと、できることを親がやってしまっては、子どもの課題を侵食していることになるのです。
学校の準備、宿題などは子どもの課題として親も認識しやすいですが、食後に食器を流しに持っていく、自分の洗濯物を畳んで、きちんとしまうなどは、子どもが当然学ぶべき課題であり、自立するために必要な大切なスキルです。自分がやった方が早くてきれいにできるからといって、親が代わりにやってはいけません。自分でできることは自分でさせ、困ったときは「助けて」と言えるように、そして助けてもらったら「ありがとう」と言うことを教えてあげてください。失敗したときは叱らず、他人と比べず、「大丈夫だよ」と伝えて安心させ、次はどうすればうまくできるかを一緒に考えること。その中で「やればできる」自信とやる気を身に付けることができると思うのです。毎日の生活を通して自立心を積極的に育ててあげてください。。

スピアかずこ
1964年愛媛県生まれ。大阪•京都•オレゴンで学生時代を過ごす。京都女子大学短期大学部卒業。88年ハワイに移住し結婚。ハワイの公立校で教育を受けた長女は現在アメリカ本土で大学院生、次女はハワイ大学へ通う。雑誌やウェブでの執筆活動を精力的に行っている。共著に『ハッピー•グルメ• ハワイ』(双葉社刊)
※このページは「ライトハウス・ハワイ 2026年1月」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。