ハワイの公立小学校にはキンダーガーテン(以下キンダーに略)が一年間併設されています。キンダーの就学年齢は、入学する年の7月31日で5歳になっていること。1年間のキンダーを終えた後に1年生になるので、キンダーガーテン=幼稚園と思いがちですが、実際は日本の小学1年生に相当する学習がキンダーで始まります。フォニックスや算数の基礎学習が始まり、時間割もお昼寝があったプリスクールとは違い、小学生と同じコマ割りになります。
ただし5歳児の成長は個体差が大きく、中にはじっと座っていられない子、母親と涙なしでは離れられない子など十人十色。けれどもキンダーでは、先生の話をよく聞き友達と協調できるなど、学校生活に必要なスキルが身に付いていることが、スタート時点で求められています。
そこでハワイ州教育局ではキンダーに先立つ早期教育の重要性を訴え、2~4歳までの子どもを預かるプリスクール(=日本の幼稚園に相当)への入園を啓蒙しています。5歳までに子どもの脳は大きく発達するので、この期間に適切な環境を子どもたちに与え、キンダーにスムーズに移行することを目標にしているのです。ただし大きな問題は高額な授業料です。現在では一日預けると月額1500ドル近くが相場のようです。物価高のハワイでこの授業料を払うのは、若いご夫婦にとっては大変な負担ではないでしょうか。ただプリスクールにもさまざまな選択肢がありますので、簡単にご紹介します。目的や家庭環境に合わせて、料金を含め賢く選択したいものです。
■私立校受験を目的にする場合
キンダー受験が過熱しているようです。受験対策に適していると評判のプリスクールにはお受験があり、3歳で入園するには2歳で面接を受けることになります。その準備が必要なのは、東京で私立小学校を受験するケースと酷似しています。私立キンダーの枠は少なく、お受験御三家と言われるプリスクールに通っていても、合格が保障されているわけではありません。キンダー受験は、小さなお子さんの自尊心を傷つけないよう、大きく視野を持って、大切な幼児期を見守ってあげてください。
■公的援助を利用する
低~中所得家庭、心身に障がいがある子どもを対象にしたプログラムがあります。ネット検索すると詳細がすぐに見つかります。対象になる可能性が少しでもあれば、応募してみてください。
・チャイルドケア・コネクションズ・ハワイ
・プリスクール・オープン・ドアーズ
・ヘッド・スタート・プログラム・プリキンダーガーテン(併設している公立小学校が複数ある)
■全日制以外のプリスクールを利用
半日や週3日だけ通える選択肢があるプリスクールもありますし、YMCAや地域のコミュニティーセンターなどでも幼児クラスが開設されているので、それを代わりに利用してもよいと思います。要は集団生活に慣れ、社会性や学習態度が身に付いていればよいのです。また興味があるお稽古事があれば、3~4歳で始めてもよいでしょう。体操や水泳、ピアノなどが定番ですが、お稽古に通い練習をする中で、体力や集中力などが身に付くはずです。家庭ではぜひとも絵本の読み聞かせの習慣をつけてください。後の読解力、言語力に大きな差が出ます。
いずれにしても、高額なプリスクールに通わせるために、家庭生活が犠牲になるような無理はしないことが肝心です。子育ては長期戦。アメリカには多くの選択肢があります。周囲にあおられず、お子さんの個性と家庭環境に合ったプリスクールを選んでくださいね。
スピアかずこ
1964年愛媛県生まれ。大阪•京都•オレゴンで学生時代を過ごす。京都女子大学短期大学部卒業。88年ハワイに移住し結婚。ハワイの公立校で教育を受けた長女は現在アメリカ本土で大学院生、次女はハワイ大学へ通う。雑誌やウェブでの執筆活動を精力的に行っている。共著に『ハッピー•グルメ• ハワイ』(双葉社刊)
※このページは「ライトハウス・ハワイ 2025年8月」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。