5月1日はアメリカの12年生(高校シニア)にとってはビッグデー。なぜなら進学する大学に入学の意思を伝える最終日だからです。
12月31日の入学願書の提出締め切り後、大学のアドミッションオフィスが約2カ月かけて合否を選考し、合格通知が送られてくるのが3月。それから約2カ月間は進学先を選ぶ時間が与えられていますが、5月1日までには進学先を決定してコミットしなければなりません。この時期はプロムを始めとする最終学年のたくさんの行事が行われるので、本当にバタバタと時間が過ぎていく中で、人生を左右する決断を下さなくてはならないのです。
まず、アメリカの大学の合否判定になぜこれほど時間がかかるかというと、成績、SATやACTといった全国共通試験、小論文、内申書、そして家庭の経済状態に合わせた奨学金の支給の有無、支給する場合はその内容や金額まで検討した上で、合格が決められるからなのです。スポーツや芸術、リーダーシップなどの試験以外の要素を総合的に評価し、大学のカラーに合った人物を入学させるので、生徒にとっては予想外の結果が出ることも多いのです。
また学費が高額なアメリカの大学(私立大学は年間寮費も含め7万ドル程度)では、学費を全額支払える家庭は多くなく、まずはFAFSAと呼ばれる連邦政府の学費補助プログラムに申請し、そこで家庭の収入を基に算出された学費を支払うことになります。収入が低ければFAFSAで学費が無料またはかなりの低額になることもあり、またFAFSAで控除が出ない、または控除額が少ない場合でも、各大学で設けている優秀な学生に与えられる奨学金を受けることができれば、軽い負担で進学することも可能です。合格通知とともに「学費がいくらで進学できるか」が判明するため、第1希望の大学からは学費の免除額が低く、第2・第3希望の大学からは奨学金がもらえた場合は、親子でかなり悩むことになると思います。4年間で何百〜何千万円もの差が出ることになるので、親にとっては深刻な決断となります。
こうした背景があるので、その対応策として、多くの大学では合格通知を出した学生を対象に、キャンパスデーを開催しています。日帰りのものもあれば、学生寮に1〜2泊してキャンパス体験ができるものもありますが、いずれも学費や学部選択についての具体的な相談を受け付けてくれます。また複数の大学の中からどこを選ぶか迷っている場合は、キャンパスデーに参加するとそこでの大学生活をリアルに体験することができるので、決断しやすくなるのではないでしょうか。とにかく自分に合った環境で学生生活を始めないと、転校やハワイに帰ってくる結果になるので、キャンパスの雰囲気が合うかどうかは重要です。
キャンパスデーに出向けないけれど質問がある場合は、大学のアドミッションオフィスに連絡して質問してください。必要ならハワイ出身の現役の学生や卒業生を紹介してもらうことも可能です。より多くの声を聞くうちに、必ず「この大学かな?」と感じることができるように思います。悩みに悩んでギリギリに進学先を決める生徒もいれば、合格と同時に迷いなく決める生徒もいて、毎年いろんな話を耳にします。思い通りの結果が出ずに涙する生徒や、学費のために第2希望の大学に進学する生徒も少なくありません。
公立校では大半の学生がハワイ大学に進学しますが、ハワイ大学は交換留学プログラムが充実しています。またアメリカの大学は単位の相互受け入れシステムが充実しているので、進学後の転校や学部変更も珍しくないこともお伝えしておきます。
スピアかずこ
1964年愛媛県生まれ。大阪•京都•オレゴンで学生時代を過ごす。京都女子大学短期大学部卒業。88年ハワイに移住し結婚。ハワイの公立校で教育を受けた長女は現在アメリカ本土で大学院生、次女はハワイ大学へ通う。雑誌やウェブでの執筆活動を精力的に行っている。共著に『ハッピー•グルメ• ハワイ』(双葉社刊)
※このページは「ライトハウス・ハワイ 2025年4月」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。