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~お受験嫌いなママが明かす「ここだけの話」~第238  【時代とともに変わる子育て】

「コンプライアンス」や「ハラスメント」といったカタカナ用語がすっかり日本社会にも浸透した令和の時代。子育てのスタンダードも、昭和とはずいぶん変わってきたように思います。
 子どもを「しかる」ということは、もはやこどもの人格を否定する行為とさえ受け取られがちです。公共の場で騒いだり、ファミレスで走り回るこどもを注意して、親に逆ギレされた…といったエピソードは、しつけに対する意識の変化を感じ取るよい例かもしれません。昭和の時代は、近所の怖いオジさんから怒鳴られたり、口うるさいオバさんにお説教されたり…庶民的な地域ではそんなことも日常のひとコマ。親からも「ダメでしょ」、「こらっ」としかられ、ゴツンとげんこつを落とされたりして育ちましたが、令和では通用しないスタンダードだといえるでしょう。
 現代社会では、子どもを親の身勝手な感情や権威でコントロールする「毒親」が問題視され、家庭内暴力やニグレクト(育児放棄)が悲惨な事件を巻き起こし、凄惨ないじめも後を絶ちません。こんな時代にどうやって子どもを健やかに育み、社会に適応できる人に育てていけばよいのでしょうか。
 ひとことでは決して片づけられないテーマですが、究極は人間同士が「共感力(エンパシー)」を高めていくことに尽きるのではないかと思います。子育てにおいては、子どもの気持ちを理解しようと努め(たとえ親として違う考えを持っていたとしても)、子どもに考える機会を与え自分の考えで物事を決めさせていく(親の意見を押し付けたり、既成のレールに乗せたりしない)ことかもしれません。こどもはその繰り返しの中で、生きる知恵や力を身に付けていくように思います。しつけだって同じです。「ダメでしょ」、「こらっ」という威嚇ではなく、「なぜいけないのか」を繰り返し、繰り返し、辛抱強く説き聞かせていくのが、時代に合ったしつけのように思うのです。
 大人の社会だって同じです。人間ですから間違った行動を取ったり、失敗することだってありますが、そこから学んでいくものです。そんなとき、失敗についてのアドバイスには素直に耳を傾けることができても、「能力がない」といった人格を否定されるような言葉は受け入れることはできないですよね? 企業のコンプライアンス研修でハラスメントが取り上げられているのも、言葉の選び方やアプローチを間違えると、人をものすごく傷つけることになるということを学び、コミュニケーションを改善していく必要があるからでしょう。
 相手の立場に立って物事を考えるのは、簡単なようで実はなかなか困難です。自分の過ちを認めるには、勇気が必要です。いじめの加害者が「やっていない、言っていない」の一点張りだったり、加害者の親が「うちの子に限って」といじめへの関与を認めないのも、過ちを認める勇気がなかったり、傷ついている相手の気持ちに共感することができないからでしょう。
 一人一人が共感力を高め、相手を尊重するコミュニケーションを取れるようになると、今より生きやすい社会ができると思います。自分の子どもにしっかり向き合って、共感をベースにした子育てができれば、社会を大きく変えていくことができるのではないでしょうか。毎日の忙しい生活の中で、どこまで子どもに向かい合って共感の子育てができるのか? 
 日々挑戦ですが、親が変われば子どもも変わります。子育てを通して親である自分自身も成長していきたいと思います。

スピアかずこ
1964年愛媛県生まれ。大阪•京都•オ
レゴンで学生時代を過ごす。京都女子
大学短期大学部卒業。88年ハワイに
移住し結婚。ハワイの公立校で教育を
受けた長女は現在アメリカ本土で大学
院生、次女はハワイ大学へ通う。雑誌
やウェブでの執筆活動を精力的に行っ
ている。共著に『ハッピー•グルメ• ハワ
イ』(双葉社刊)

※このページは「ライトハウス・ハワイ 2023年11月」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。

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