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~お受験嫌いなママが明かす「ここだけの話」~第235  【アファーマティブ・アクションとは】

 

 ハーバード大学などの入学選考で人種的マイノリティーを優遇するアファーマティブ・アクションの是非が問われた訴訟で、米連邦最高裁は6月29日、この措置が違憲との判決を下しました。現在、全米の多くの大学が多様性確保のために同様の措置を取っていますが、今後の大学入試に影響が出る可能性があると言われています。みなさんはこの「アファーマティブ・アクション」という言葉をご存じでしょうか?アファーマティブ・アクションとは、人種や出自による差別を是正するために、進学や就職、職場における昇進などで弱者を守る優遇措置のことです。大学入学に関しては、平均して学力が低いとされるアフリカ系アメリカ人、アメリカ先住民の学生を一定数優先的に入学させています。人種だけでなく、一族で初めて大学に進学する貧困層の学生や、移民一世の学生なども優遇されていて、実社会に近い多様性を持った学生層を意図的に作り出しているのです。ハワイにいるとマイノリティーへの差別を感じる機会は少ないかもしれませんが、米本土の地域によっては、今でも激しい差別が横行しており、近年のジョージ・フロイド事件などでも顕著になっています。
 けれどもこの措置のために、アジア系や白人の学生が不利益を被っているとして、措置に反対する保守派NPOが2014年に提訴。今回、最高裁で違憲判決が下されました。この判決については、1978年に最高裁で合憲とされて以来45年間、多くの大学で進められてきた多様性への取り組みに影響を与えるのではないかと危惧されています。同時に、保守派とリベラル派の分裂が進む現在のアメリカを象徴する判決としても注目されています。ハーバード大学は
29日、最高裁判決に矛盾しない形で多様性の維持に取り組むと表明
しています。

さてアファーマティブ・アクションという考え方についてですが、左の画像を見ていだければ、さらによくわかるのではないでしょうか。左は背の高さが違う人に平等に同じ高さの踏み台を与えていますが、背が低い人はそれでもフェンスにさえぎられ、野球を見ることができていません。右はそれぞれの身長に対して必要な高さの踏み台を与えているので、全員が公正に野球を見ることができています。つまり「全員に同じものを平等に与えて、それが正常に機能するのは全員のスタート地点が同じ場合に限られる。人々に同じ機会へのアクセシビリティーを確保するためには、最初にまず公正さが担保されて初めて平等を得ることができる」というわけです。

  アメリカの大学の入学願書には、人種や世帯収入から課題活動に至るまで、志願者は膨大な個人情報を記載します。大学はそのすべてを精査し、多様性を重視した人選を行っています。近年はSATなどの共通テストのスコアを入学選考から外す大学が増えていますが、それも試験対策にお金をかけることができる富裕層とそれができない貧困層の学生の間の差別を生まないための対策と言われています。
 こうした状況の下、今後のアメリカの入学選考はエッセイや課外活動がますます重視される傾向になると予測されます。日本の受験対策とは大きく異なりますので、親の意識改革が求められます。

スピアかずこ
1964年愛媛県生まれ。大阪•京都•オ
レゴンで学生時代を過ごす。京都女子
大学短期大学部卒業。88年ハワイに
移住し結婚。ハワイの公立校で教育を
受けた長女は現在アメリカ本土で大学
院生、次女はハワイ大学へ通う。雑誌
やウェブでの執筆活動を精力的に行っ
ている。共著に『ハッピー•グルメ• ハワ
イ』(双葉社刊)

※このページは「ライトハウス・ハワイ 2023年8月」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。

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