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第6回【無視していいものから命の危険に関わる ものまで。多種多様な「がん」の世界】

来院したアビーちゃん、

定期検診で訪れ、心雑音が見つかったけどまだまだ元気なアビーちゃん

 近年、人間と同じようにペットたちの医療も大変発達し、一昔前と比べるとびっくりするくらい、ワンちゃんや猫ちゃんたちの寿命がのびました。それ自体は素晴らしいことですが、人間同様、ペットの高齢化により、「がん」に苦しむペットも増えてしまったことも事実です。今回はそんな高齢の犬と猫が死に至る一番の原因である「がん」について簡単に説明します。
 そもそも「がん」は、犬や猫の免疫システムに異常が起き、細胞の制御が失われた結果、異常な細胞の増殖が起こる病気です。その異常な増殖の結果、細胞たちがかたまってできるのが「腫瘍」で、悪性と診断されたものが、一般的にいわれる「がん」という病気になります。良性の場合は「がん」といいません。体の全ては細胞から作られているので、残念ながらがんは体中どこでも発生する可能性があります。遺伝子的な要因も一部には認められているので、犬種によって特定のがんのリスクが異なることもあります。
 発見された腫瘍が悪性か良性かの判断は、一般的には3つの要因で決められることが多いです。
①成長速度
②生活の質への影響(大きくなり過ぎて、普段の生活が難しくなってしまうなど)
③他の部位への転移の可能性・有無
 犬や猫の年齢、犬/猫種、進行速度によってある程度目の前にある腫瘍が悪性かどうか判断するはできますが、最終的な診断にはほとんどの場合手術によるサンプリング、または切除後の病理検査が必要になります。良性であると判断された場合、特に治療はせず、様子を見ることだけをお勧めすることも多々あります。
 犬や猫のがんによる症状も多種多様で一概には言えませんが、以下の症状がみられる場合は獣医師による早めの受診をお勧めします。
①腫れやしこり
 がん/腫瘍の最も一般的な兆候は、体の特定の部位での腫れやしこりで、皮膚や体の他の部位で発見されることがあります。
②体重の減少
 がんの進行により、食欲の増減に 関係なく、体重が減少することがあります。
③消化器の問題
④呼吸困難
 さまざな検査の結果、がんと診断された場合、基本的な治療法は手術によるがんの完全な切除、抗がん剤治療、放射線療法、そして免疫療法になります。今ではハワイにも腫瘍学の専門医が数人いますので、場合によっては大きな病院へ紹介し、治療を始める場合もあります。
 人間同様、犬や猫のがん診断は、飼い主さんたちにとって恐ろしいことですが、早期発見と適切な治療によって、多くのペットががんと闘い抜き、健康な生活を送ることができます。愛犬、愛猫のリスクを最小限に抑えるためにも、定期的な(5歳以上は最低年2回)獣医師への診察を忘れないでくださいね。

Dr. Makoto Sakamoto
獣医師(D.V.M)。大阪府出身。タフツ大学・獣医大学卒業。2023年共同オーナーとして『アイナハイナ・ベタリナリー・クリニック』を開業。


アイナハイナ動物病院
Aina Haina Veterinary Clinic
820 W Hind Dr. Ste, 1224 
Honolulu
TEL 808-453-5000
診療時間
https://ainahainavet.com

※このページは「ライトハウス・ハワイ 2023年9月」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。

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