Q. アメリカ人の夫との間に高校生と中学生の子どもがいます。離婚した場合、子どもたちは夫と私と半々のスケジュールで住むことになると思います。私の収入のみで子どもたちと私の生活費を払うことは難しく、夫の収入の方が断然多いので、離婚する場合はどのくらいの養育費がもらえるのか知りたいです。また、養育費は子どもが何歳になるまで支払われるのでしょうか?
A. ハワイ州では、養育費の計算のために家庭裁判所が定めたチャイルドサポートガイドライン「Child Support Guidelines」があり、チャイルドサポートガイドラインワークシート「Child Support Guidelines Worksheet」というエクセルの計算用紙を使います。計算表には、両親それぞれの税込みの収入、子どもの数、子どもの健康保険にかかる費用、デイケア(ベビーシッターやアフタースクールケアなど)の費用の項目があり、数字を入れると金額が自動的に算出されます。チャイルドサポートガイドラインと計算用紙のワークシートは、ハワイ州裁判所のウェブサイト(https://www.courts.state.hi.us/child-supportguidelines)で入手できます。
両親それぞれの収入を見極めるため、会社員の場合は給与明細やW2フォームを交換します。また、子どもの健康保険にかかる費用は、子どもを自身の健康保険でカバーしている側の親が、自分だけをカバーした場合の保険料との差額を使います。
先に述べた項目に加えて、子どもがそれぞれの親と過ごすスケジュールも養育費の計算に使われる重要なファクターになります。そのスケジュールによって3つの異なった計算方法が使われるからです。一つ目は、子どもが主に片方の親と住む場合の通常の計算方法です。二つ目は子どもがそれぞれの親と50%ずつ住む場合で、イコールタイムシェアリングの計算方法「Equal Timesharing Calculation」という計算方法を使い、収入が多い方の親が少ない方の親に養育費を支払うことになります。ご相談者の場合は、この計算方法を使うことになります。三つ目はエクステンシブタイムシェアリングの計算方法「Extensive Timesharing Calculation」といい、子どもと住む日数が少ない方の親が子供と一年に143日以上(しかし50% 以下)一緒に住む場合に使われます。日中過ごす時間を足して計算するのではなく、子どもがその親の家に泊まる日数を使います。
また、養育費は収入に基づいて計算されるので、離婚の最中に仕事を辞めたり、収入を減らしたりする人がいることを考慮し、裁判所は無職の人やフルタイム勤務でない人、わざと収入を減らしている人などにフルタイムの収入や普段の収入があるとみなして計算することができます。けがや病気などで仕事ができない場合を除き、みなし収入を使う場合は、州の最低賃金で週40 時間働いた場合の収入(月2427 ドル)を使って計算することが多いです。
養育費支払いの期限は通学状況や年齢で確定
養育費がいつまで支払われるかは、離婚判決書「Divorce Decree」に明記されることになりますが、通常は子どもが高校卒業、もしくは18 歳になるまでのどちらか遅い方、そして高校卒業後、子どもが大学や専門学校にフルタイムで通うのであれば、その卒業、もしくは23 歳になるまでのどちらか早い方になります。フルタイムの学生でない場合は、片方の親と一緒に住んでいても養育費の支払い義務は生じません。また、別の州の大学に通ったり、ハワイの大学でも寮に住んだりしてどちらの親とも住まない場合は、子どもの生活費は養育費としてではなく、大学の費用の一環としてそれぞれの親の負担額を決めることが多いです。
養育費の支払いは、両親が当事者間での支払いに同意しない限り、養育費を扱う州の機関、CSEA (Child Support Enforcement Agency) を通して支払われます。養育費の支払義務がある親が会社員の場合、その親の雇用主が給与から養育費を徴収してCSEA に送り、CSEA が養育費を受け取る側の親に支払います。離婚後に子どもと日本に引っ越したとしても、CSEA を通しての支払いは可能です。子どもが18 歳になったら、CSEA から養育費をもらっている側の親に、子どもがフルタイム通学である証拠を送るようにとの手紙が届くので、その書類を送る必要があります。
宮本直子
Naoko Miyamoto Attorney at Law
父親の転勤で高校3 年生よりアメリカ在住。1997年カリフォルニア大学バークレー校政治学部卒業。2000年ハワイ大学マノア校法科大学院(ロースクール)修了。2001年ハワイ州裁判所・ハワイ地区米国連邦裁判所弁護士登録。ハワイ州最高裁判所を経て2001年より離婚やその他の家族法を専門に扱うクライントップ& ルリア法律事務所で家族法専門の弁護士として勤務後、2022年9月に『宮本直子法律事務所』を開設。

宮本直子法律事務所
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※このページは「ライトハウス・ハワイ 2025年12月」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。