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第33回【暴力を振るう夫に、自分と子どもの身を守りながら離婚を伝える方法はありますか?】

Q. 誰にも相談できなかったのですが、5 年前に結婚したアメリカ人の夫は、お酒を飲んだり私が言い返したりすると、暴力を振るうことがあります。先日初めて2 歳の子どもの前でひどく殴られ、子どもにも暴言を吐きました。子どもは怯えて泣き、ようやく離婚を決意しましたが、それを伝えると逆上すると思います。子どもと自分の身を守るために、法的にできることはありますか?

A. ご相談者、そしてお子さんの安全を守るためにTRO(Temporary Restraining Order)と呼ばれる一時的接近禁止命令の申し立てができます。家族や同居人、現在もしくは以前の交際相手などに対するTRO は家庭裁判所の管轄になります。
 TRO の申し立てをするためには、家庭裁判所のTRO ユニットに電話をして、状況の説明をします。現在の家庭裁判所のTRO ユニットの電話番号は以下です。

 • オアフ島: 808-538-5959
 • ハワイ島: 808-969-7798
 • マウイ島、モロカイ島、ラナイ島: 808-244-2706
 • カウアイ島 : 808-482-2330

 申請の際には、裁判所のTRO の係員が申立書の記入の仕方を教えてくれます。そして記入した申立書に家庭裁判所の裁判官が目を通して、TRO を発令するかしないかを決定します。
 
一時的な接近命令の発令後はヒアリングで接近命令を決定
 TRO は一時的な接近禁止命令で、申立人の記入した内容のみに基づいて、裁判所が認めるか認めないかを決定します。ですからTRO が発令された場合、裁判所はTRO の申し立てから15 日以内に双方の言い分を聞くために裁判所でヒアリング(審問)を行い、Order for Protection と呼ばれる一時的でない接近禁止命令が必要かどうかを決定します。
 ヒアリングには、申立人、そして相手方双方が出廷を命じられます(申し立ての中に法律で定められたドメスティックアビュースが入る場合は、申立人はZoom による出廷の許可のリクエストをすることも可能です)。そこで、申立人はTRO の申立書に記載した家内暴力が起こったことに関する証言を行い、証拠を提示します。また、相手方は申立書の記載事項に応答する機会が与えられ、それに関する証言を行い、証拠を提示します。証拠として有効となるのは、証人の証言、電子メール、テキストメッセージ、写真、診断書や警察調書などさまざまです。
 英語が母国語でなく、裁判所で通訳が必要な場合、無料の通訳をリクエストすることができます。
 また、TRO のヒアリングには、弁護士を雇って、弁護士と一緒に出廷することができますが、弁護士なしで出廷することも可能です。相手方が弁護士をつけている場合は、できる限りご自分も弁護士を雇う方がよいでしょう。ヒアリングの当日に、自分は弁護士を
つけていないのに、相手には弁護士がいると分かった場合、弁護人を雇うためにヒアリングの期日を延期してもらうよう裁判官に求めることができます。多くの場合、裁判所は一度は延期を認める判断をしますが、必ず延期されることが保証されているわけではありま
せん。 
 ヒアリングでは、裁判官が接近禁止命令が必要かどうか決定します。 接近禁止命令の期間については、裁判官が妥当かつ必要と判断した長さになります。ご相談者の場合、TRO の申し立てにお子さんを含めることになりますが、子どもが接近禁止命令に入るべきかどうか、そして一時的な親権および養育権(監護権とも呼ばれる)を
どちらに与えるか、第三者の監視付きの面会が必要かどうかなどの決定も、ヒアリングを通して裁判所が行うことになります。
 離婚になると分かっている場合は、一時的な子どもに関する命令がTRO のケースで発令されても、それは離婚のケースで最終的に判断されることになります。また、子どもに対しての暴力がなく、相手方と子どもが一緒にいても危険ではないという判断がなされた場合は、子どもは接近禁止命令の対象から抜け、子どもの親権、養育権、面会のスケジュールなどは離婚のケースで決定をすることになります。

宮本直子
Naoko Miyamoto Attorney at Law

父親の転勤で高校3 年生よりアメリカ在住。1997年カリフォルニア大学バークレー校政治学部卒業。2000年ハワイ大学マノア校法科大学院(ロースクール)修了。2001年ハワイ州裁判所・ハワイ地区米国連邦裁判所弁護士登録。ハワイ州最高裁判所を経て2001年より離婚やその他の家族法を専門に扱うクライントップ& ルリア法律事務所で家族法専門の弁護士として勤務後、2022年9月に『宮本直子法律事務所』を開設。

宮本直子法律事務所
735 Bishop St, Ste. 310, Honolulu (Dillingham Transportation Bldg.)
TEL 808-444-7890
E-mail: info@miyamotohawaiilaw.com
https://www.miyamotohawaiilaw.com/japanese-page
※実際のアドバイスは個々の状況により異なりますので、詳細は弁護士にご相談ください。

※このページは「ライトハウス・ハワイ 2025年3月」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。

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