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第32回【離婚の取り決めを相手方が守らない場合、何かできることはありますか?】

Q. 10 年結婚していたアメリカ人と3 年前に離婚しました。元夫は軍人で、数カ月前に退役したようです。離婚の取り決めでは、元夫が持ち家をキープして、離婚成立後1年以内に私に財産分与として10 万ドル支払う他、退役した場合は軍から支払われる月々の年金の25%を私に支払うことになっていますが、どちらも受け取っていません。私に何かできることはありますか?

A. 財産分与の支払い、養育費、アリモニーの支払いなど、Divorce Decree「離婚判決書」で決められたことを相手方が守らない場合、裁判所に戻って、モーション・トゥー・エンフォース「Motion to Enforce」と呼ばれる執行の申し立てをすることができます。相手方がやるべきことをやっていないので、モーション・トゥー・エンフォース「Motion to Enforce」を通して、その申し立てにかかった弁護士費用のリクエストをすることもできます。
 通常は、まず相手方に期限を付けた手紙を送り、Divorce Decree「離婚判決書」で定められた支払いをするようにリクエストします。
 そして期限までに支払わない場合は、モーション・トゥー・エンフォース「Motion to Enforce」を裁判所でファイルして、弁護士費用の支払いのリクエストもするということを伝えます。相手方に支払い能力があるのであれば、かなりの割合のケースで、このような手紙を通して解決することができます。
 しかし、そのような手紙を送っても相手方が決められたことをやらない場合は、裁判所の介入が必要になります。そして、裁判所は決められたことはやらなければいけないと命じます。弁護士費用の支払いも多くのケースで命じられます。
 しかし、ご相談者の元夫もそうですが、これらの人たちは、一度「やらなければいけない」と裁判所に命じられたことをやっていないので、再度そのような命令が出てもやらない可能性があります。そうなると、裁判所の支払命令を再度得たけれども、実際にお金は支払われないということになってしまいます。
 今回のご相談のケースではもう遅いのですが、重要なことは、離婚の取り決めをする際に、可能な限り必ず支払いがなされる形での取り決めをすることです(家の名義変更と同時に10 万ドルの支払いをしてもらう、軍の年金の25%は軍から直接もらえる形にする、など)。

裁判所の支払命令は可能だが離婚取り決め時の判断が重要
 ご相談者の元夫が1年以内に支払うことになっていたという10 万ドルですが、モーション・トゥー・エンフォース「Motion to Enforce」をやらなければならなかった時点で、相手方に財産があるのであれば、その財産からの支払いを裁判所に命じてもらうことができます。ご相談者の場合、持ち家が元夫のものになっているということなので、元夫の支払い能力にもよりますが、持ち家を担保としてお金を借りさせる、または家を売らせるなどの救済をリクエストすることができます。何の財産もないけれども、収入がある場合
は、完済まで時間はかかりますが月々分割の支払いをさせることも選択肢の一つになります。
 軍から支払われる月々の年金の25%を受け取ることに関しては、離婚の取り決めの中で、軍から直接支払われる形にして、そのために必要な書類を離婚直後に作成して裁判所に提出をするという形にしておくべきでした。しかし、元夫が直接支払うべき25%を支払っていないので、モーション・トゥー・エンフォース「Motion to Enforce」を通して、裁判所に離婚判決書「Divorce Decree」の変更を申し立てて、軍から直接支払いを受ける形にすることができます。
 ご相談者の方の元夫には持ち家と軍の年金がありますが、もし相手方に財産も収入もない場合、先ほど述べたように裁判所の支払命令を再度得たけれども、実際にお金は支払われないという結果になってしまうことがあります。ですから、そのようなケースではモーション・トゥー・エンフォース「Motion to Enforce」にかかる弁護士費用を考えると、弁護士を使ってそのような申立てをすることは金銭的に意味があるのかを考える必要があります。

宮本直子
Naoko Miyamoto Attorney at Law

父親の転勤で高校3 年生よりアメリカ在住。1997年カリフォルニア大学バークレー校政治学部卒業。2000年ハワイ大学マノア校法科大学院(ロースクール)修了。2001年ハワイ州裁判所・ハワイ地区米国連邦裁判所弁護士登録。ハワイ州最高裁判所を経て2001年より離婚やその他の家族法を専門に扱うクライントップ& ルリア法律事務所で家族法専門の弁護士として勤務後、2022年9月に『宮本直子法律事務所』を開設。

宮本直子法律事務所
735 Bishop St, Ste. 310, Honolulu (Dillingham Transportation Bldg.)
TEL 808-444-7890
E-mail: info@miyamotohawaiilaw.com
https://www.miyamotohawaiilaw.com/japanese-page
※実際のアドバイスは個々の状況により異なりますので、詳細は弁護士にご相談ください。

※このページは「ライトハウス・ハワイ 2025年2月」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。

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