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第30回【メディエーション(調停)について教えてください】

Q. アメリカ人の夫と離婚することになりました。夫は離婚経験があり、前回は裁判所で争って、多額の弁護士費用を払うことになったそうです。私たちの二人の子どもに関しては隔週のスケジュールで合意しているので、夫は金銭的なことは弁護士を入れずにメディエーターを雇って離婚の条件を話し合って解決するべきだと言います。夫の言う通りにして良いのでしょうか?

 メディエーション(調停)とは、争いごとをインフォーマル、そしてプライベートな形で中立な立場を取るメディエーターを入れて話し合い解決をしようとするプロセスです。裁判官とは異なり、メディエーターは決定権を持たず、双方の話を聞くことによって解決の手助けをします。裁判と比較すると、調停には次のような利点があるといえます。
①裁判では最終的に裁判官が決定を下しますが、調停の場合は双方が納得して合意した内容で解決することになります。ですから、調停では裁判官の決定には通常入らないような細々とした取り決めを入れたり、クリエイティブな解決法をしたりすることができます。
②裁判の記録は基本的に公な記録となり、他人が入手できますが、調停のプロセスはプライベートなもので、話した内容は合意内容を除いて公開してはいけないという決まりがあります。
③裁判で証言をしたり、証拠を使ったりする場合は、たくさんの法的なルールに従う必要がありますが、調停ではそのような制約は全くありません。話を効率的に進めることができます。
④裁判所で争う場合、いくつかの例外を除いて、すぐに裁判所で裁判をすることは不可能で、裁判は何カ月も先になりますが、調停はメディエーターを含む皆の都合が合えば、その時点で開始することができます。
⑤裁判所で争う場合、多額の弁護士費用がかかります。調停で解決する方が弁護士費用が少なくて済みます。
⑥裁判所で争う場合と異なり、多くのメディエーターは双方の当事者が同席する形でのミーティングはせず、それぞれの当事者と話をしながら解決を図ります。ですから、相手と直接対峙しないで、自分の主張をメディエーターを通して伝えることができます。

 ハワイの家庭裁判所は調停を奨励しています。離婚のケースで当事者間で離婚の条件に合意できない場合、最終的に裁判所の介入を求めることになりますが、その前に調停を行うことが法的に義務付けられています。

調停でも弁護士を雇う場合も。費用は裁判より格段に少額
 ご相談者の夫は、弁護士を入れずにメディエーターを雇って解決しようと言っているとのことですが、調停に弁護士が必要いという訳ではありません。双方に弁護士がいるケースでも調停を行いますし、メディエーターは中立的立場に立っているので、アドバイスを受けるには弁護士が必要です。また、合意内容をまとめた書類にサインする前に必ず弁護士にチェックしてもらうべきです。さらに、通常メディエーターは合意内容に基づいて裁判所に提出する離婚書類は作成しないので、当事者自身で作成しない場合、弁護士が必要です。
 調停にかかる費用は、どのメディエーターを使うかによって異なります。ハワイの家庭裁判所は多くの弁護士がついていないケースで、メディエーションセンター・オブ・ザ・パシフィック「Mediation Center of the Pacific」という、低コストの調停のサービスを提供する非営利団体を使うことを義務付けます。その場合、調停費用は収入によって定められ、プライベートのメディエーターを雇うよりだいぶ少なくて済みます。しかし、メディエーションセンター・オブ・ザ・パシフィックのメディエーターは必ずしも家族法や法律に精通している訳ではないので、大きな財産や複雑な事情がない場合に向いているといえます。双方に弁護士がついているケースでは、家族法に精通しているメディエーターを使うことが多いです。そのようなメディエーターには、数千ドルのデポジットが必要で、彼らは時間でチャージをします。しかし、意義のある話し合いができますし、そのようなメディエーターを雇っても、裁判で争うより、弁護士費用は格段に少なくて済む場合がほとんどです。

宮本直子
Naoko Miyamoto Attorney at Law

父親の転勤で高校3 年生よりアメリカ在住。1997年カリフォルニア大学バークレー校政治学部卒業。2000年ハワイ大学マノア校法科大学院(ロースクール)修了。2001年ハワイ州裁判所・ハワイ地区米国連邦裁判所弁護士登録。ハワイ州最高裁判所を経て2001年より離婚やその他の家族法を専門に扱うクライントップ& ルリア法律事務所で家族法専門の弁護士として勤務後、2022年9月に『宮本直子法律事務所』を開設。

宮本直子法律事務所
735 Bishop St, Ste. 310, Honolulu (Dillingham Transportation Bldg.)
TEL 808-444-7890
E-mail: info@miyamotohawaiilaw.com
https://www.miyamotohawaiilaw.com/japanese-page
※実際のアドバイスは個々の状況により異なりますので、詳細は弁護士にご相談ください。

※このページは「ライトハウス・ハワイ 2024年12月」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。

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