ツンデレなトイプードルのマナくん
ここ数年で、人間の食事に関して添加物の危険性などが取り扱われることが増えて来たように感じます。その流れに乗り、ペットの食事も大量にプロセスされた食事よりも、できるだけ自然に近い状態でご飯(Whole Foods)をあげたいと相談されることも増えました。今回はそんな飼い主さんたちが選びがちな、生肉食について、僕の意見と近年の研究結果をお話しします。
結論から言うと、僕は生の野菜などをペットに与えることに特に異論はありませんが、基本的に生肉食については否定的な立場にいます。理由は主に3つ。①バクテリアなどによる汚染 ②栄養価の欠如 ③歯や腸に危険が及ぶ可能性。飼い主さんによっては生肉食にすることで毛並みがきれいになる、または下痢などの症状がなくなるなどの利点があると言われますが、僕がお勧めしない理由は以下です。
①バクテリアなどによる汚染の危険性
人間と一緒で生の肉を食べる場合、サルモネラやEColiといった細菌による汚染・繁殖の危険性はにあるでしょう。ペット用の肉はさらに衛生面でがさつなところもあるため、大変注意が必要です。生肉(Freeze Dry処置を受けていても)を食べている猫ちゃんが鳥インフルエンザにかかって亡くなった症例なども報告されています。
②栄養価の欠如
生肉食を選ぶ飼い主さんたちは市販でRaw Dog Foodとして売られているものを買う方もいれば、自分たちで鳥や豚の挽肉などに野菜や穀物を混ぜてペットに与えている方もいます。市販の食事ならまだしも、自分で生食を用意する場合、成犬成猫に必要な栄養価が全てそろっているかどうか確かめるのは至難業です。僕を含む一般的な獣医師でもなかなかできないと思います。特に栄養価が欠如して大きな問題になるのは、まだ成長しきっていない子犬や子猫たちです。例えば、カルシウムとリンの割合が正しくないと、骨の成長や強度に大きな悪影響を与えることが確認されています。
③歯や腸に危険が及ぶ可能性
生食を勧めている方たちの中に、カルシウム源として動物の骨をそのまま与える方もいますが、それはお勧めできません。骨は硬すぎるので、わんちゃんが噛んでいるときに、奥歯を折ってしまう危険がありますし、もし大きな破片を飲み込でしまった場合、消化する前に腸内で詰まってしまい、緊急手術が必要な場合もありえます。
もし、ペットフードをあげるのを避け、ご自分で食事を用意してあげたい場合、栄養学を専門とした獣医師(Veteirnary Nutritionist)に相談するか、ペットが成犬成猫になってからであれば、前回お話ししたAAFCO Statement で基準値を満たす生肉食を、簡単に調理してから与えることお勧めします。
Dr. Makoto Sakamoto
獣医師(D.V.M)。大阪府出身。タフツ大学・獣医大学卒業。2023年共同オーナーとして『アイナハイナ・ベタリナリー・クリニック』を開業。
アイナハイナ動物病院
Aina Haina Veterinary Clinic
820 W Hind Dr. Ste, 1224
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※このページは「ライトハウス・ハワイ 2025年5月」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。