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第27回【ハワイ州の離婚で年金やリタイアメントの口座はどのように分けられるのですか?】

Q. 結婚25 年のアメリカ人の夫と離婚します。夫は数年前に警察官をリタイアし、州から年金をもらいながら連邦政府の仕事をしています。夫はその年金を「辛い思いをして働いて得た権利なので、渡さない」と言います。また、友人は離婚後に元配偶者の401K 口座の半分をもらいましたが、夫はリタイアメント口座から半分引き出して私に払うと言います。それも可能ですか?

A. 8月号でご説明したように、ハワイ州での離婚による財産分与では、婚姻中に築き上げた財産は基本的に半々で分配します。どちらの収入や仕事によって築き上げられたものかということは考慮されません。年金やリタイアメントの口座の分割にもこのルールが適用されます。
 ご相談者の場合、夫が警察の仕事から退職して州からの年金をもらっていて、連邦政府に勤めているということなので、州からの年金、そして連邦政府からの年金は離婚のケースで分けることになります。ハワイの家庭裁判所では、リンソンフォーミュラ「Linson Formula」と呼ばれる数式を使って、年金を分割します。ご相談者の場合、フォーミュラは以下の通りになります。1/2 x「 夫が婚姻中にそれぞれの仕事に勤めていた年数」/「夫がリタイアする時点で勤めていた年数」 x「 夫が月々もらう年金の額」 =「 ご相談者が月々もらう年金のシェアの額」
 配偶者が軍や連邦政府、州政府、ユニオンに所属する仕事をしている場合は、リタイア後に月々もらう年金「pension」があることが多いです。多くのケースでは元配偶者に頼ることなしに、軍や連邦政府、州政府、ユニオンなどから直接ご自分のシェアを受け取ることができますが、そのためには離婚の時点でリタイアメントプランを分割する書類を作成し、手続きする必要があります。

401K口座から引き出して支払うとペナルティーも
 軍や連邦政府、州政府の年金を分ける書類はそれぞれ違う名称があります。書類の名前だけでなく、内容も専門的な用語が多く、英語が母国語の人でも容易には理解できない場合が多いです。
 401K アカウントの分割や政府や軍ではない年金の分割にはQDRO「Qualified Domestic Relations Order(クオリファイドドメスティックリレーションズオーダー」という書類が必要になります。ご相談者の夫は、リタイアメントアカウントから半分引き出してご相談者に支払うと言っているとのことですが、そのようなことをすると、夫にインカムタックスとペナルティーが課せられます。リタイアメントアカウントの半分というと大きな額であることが多いので、インカムタックスとペナルティーも多額になります。QDRO を通して分割の手続きをすると、分割自体にはインカムタックスもペナルティーも課せられません。リタイアメントアカウントから直接ご自分のもらう金額を受給できるので、相手方が半分支払うという約束を守らないことを心配する必要もなくなります。
 また、月々もらう年金とは違い、401K アカウントや米軍や連邦政府に勤めている人が加入できるリタイアメントのアカウント(Thrift Savings Plan)などを分割する際は、先ほどご説明したリンソンフォーミュラ「Linson Formula」は使わず、離婚時点でのアカウントバランスを半々に分けます(結婚時点でアカウントバランスがあった場合、その分は差し引かれます)。この点は弁護士でも誤解している場合があるので、注意が必要です。
 当事者どちらかが年金やリタイアメントの口座を持っている場合、離婚判決書「Divorce Decree」の中で正しい形でリタイアメントプランを分割し、離婚成立後、リタイアメントプランを分割する書類を作成し、裁判所に提出して、裁判所が受理した書類をリタイアメントプランに送るという手続きをすることが大変重要です。リタイアメントプランの分割は専門的な分野なので、相手方がどのようなリタイアメントのベネフィットを持っていて、どのように分けるべきなのか、そしてどのような書類が必要なのかは、この分野を専門とする弁護士に相談し、書類の作成や手続きのお手伝いを依頼するのが最善といえるでしょう。

宮本直子
Naoko Miyamoto Attorney at Law

父親の転勤で高校3 年生よりアメリカ在住。1997年カリフォルニア大学バークレー校政治学部卒業。2000年ハワイ大学マノア校法科大学院(ロースクール)修了。2001年ハワイ州裁判所・ハワイ地区米国連邦裁判所弁護士登録。ハワイ州最高裁判所を経て2001年より離婚やその他の家族法を専門に扱うクライントップ& ルリア法律事務所で家族法専門の弁護士として勤務後、2022年9月に『宮本直子法律事務所』を開設。

宮本直子法律事務所
735 Bishop St, Ste. 310, Honolulu (Dillingham Transportation Bldg.)
TEL 808-444-7890
E-mail: info@miyamotohawaiilaw.com
https://www.miyamotohawaiilaw.com/japanese-page
※実際のアドバイスは個々の状況により異なりますので、詳細は弁護士にご相談ください。

※このページは「ライトハウス・ハワイ 2024年9月」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。

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