Q. 結婚20 年になるアメリカ人の夫に、離婚を求められています。夫との間には大学生と高校生の子どもがおり、数年前に私はパートで仕事を始めました。しかしハワイの家賃や物価は高く、私が今すぐに経済的に自活することは不可能です。他州で離婚した友人は元配偶者からアリモニーの支払いを受けていると聞きました。ハワイでのアリモニーの仕組みを教えてください。
A. 養育費(チャイルドサポート)は子どもにかかる生活費のために支払われるもので、アリモニー「alimony」は「spousal support(配偶者へのサポート)」とも呼ばれ、配偶者への生活費をサポートする費用を指します。
離婚後のアリモニーが争点になる可能性がある場合、離婚の訴状、もしくは訴状に対する返答に、アリモニーの支払い命令が必要だということを記載します。そしてアリモニーの支払いを含む全ての争点を交渉して合意、もしくは裁判で争うことになります。またアリモニーが必要な多くのケースでは、離婚が成立するまでの一時的なアリモニーをリクエストするために、裁判所で申し立てをします。
州で定められた計算表がある養育費や明確なルールが存在する財産分与とは異なり、ハワイ州では、アリモニーの有無、金額、期間に関して計算表や明確なルールは存在しません。個々のケースに基づいて、裁判所が判断を下します。アリモニーに関するハワイの法令「Hawaii Revised Statutes § 580-47(a)」では、裁判所はアリモニーの支払いを命じるかどうか決める際、以下の13 のファクターを考慮しなければいけないことになっています。
1. 双方の財力
2. アリモニーを求める側の配偶者の自活する能力
3. 結婚の期間
4. 結婚の間の生活レベル
5. 各配偶者の年齢
6. 各配偶者の健康状態(精神的なものも含める)
7. 各配偶者の結婚の間の職歴
8. アリモニーを求める側の配偶者の就労能力や技術
9. 各配偶者の必要な生活費用(ニーズ)
10. 各配偶者の子どもの世話をする責 任と養育費支払いの責任
11. アリモニーを支払う側の配偶者がアリモニーを支払った上で自分の生活費を支払うことができるかどうか
12. 各配偶者の離婚後の経済状況
13. どのくらいの期間アリモニーが必要になりそうか
これらの13 のファクターに加えて、ハワイ州の判例では
1. アリモニーを求める側の配偶者が結婚の間の生活レベルをキープするためにいくら必要か
2. アリモニーを求める側の配偶者がアリモニーなしで自分の生活費をどの程度支払うことができるか
3. アリモニーを支払う側の配偶者が結婚の間の生活レベルをキープするためにいくら必要か
4. アリモニーを支払う側の配偶者がアリモニーを支払った上で自分の生活費を支払うことができるかどうか
以上の4つのファクターを考慮することになっています。
アリモニーの支払い期間と金額は状況による。変更も可能
ご相談者の場合、アリモニーが争点になる可能性のケースだといえます。しかし、実際に支払い命令が出るかどうか、そしてその金額や期間については、子どもたち二人の養育費がどうなるのか、双方の収入や出費、今までの暮らしぶりなどによって変わってきます。また、今までパートタイムでしか働いていなかったとしても、何か健康上や年齢などの理由で働くことが難しい場合を除いて、ハワイの裁判所はフルタイムで働く努力をしなければいけないとみなすでしょう。
アリモニーの支払いはほとんどのケースで一定期間になります。期間の終了前でも、どちらかの配偶者が亡くなった場合、もしくはアリモニーを受け取る側が再婚した場合は、通常支払い義務はなくなります。そのことも含め、支払い期間は離婚判決書に明記します。また、アリモニーの期間や金額は、一度裁判所の決定が下された後も、どちらかの当事者の経済状況が変わった場合、変更を求めることが可能です。
宮本直子
Naoko Miyamoto Attorney at Law
父親の転勤で高校3 年生よりアメリカ在住。1997年カリフォルニア大学バークレー校政治学部卒業。2000年ハワイ大学マノア校法科大学院(ロースクール)修了。2001年ハワイ州裁判所・ハワイ地区米国連邦裁判所弁護士登録。ハワイ州最高裁判所を経て2001年より離婚やその他の家族法を専門に扱うクライントップ& ルリア法律事務所で家族法専門の弁護士として勤務後、2022年9月に『宮本直子法律事務所』を開設。
宮本直子法律事務所
735 Bishop St, Ste. 310, Honolulu (Dillingham Transportation Bldg.)
TEL 808-444-7890
E-mail: info@miyamotohawaiilaw.com
https://www.miyamotohawaiilaw.com/japanese-page
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※このページは「ライトハウス・ハワイ 2024年10月」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。