新学年が始まって3カ月余りが経ちました。楽しく学校生活が送れているとよいのですが、いじめに遭って学校に行きたくないと思っているお子さんもいらっしゃるかもしれません。日本に限らずハワイでもいじめは大きな問題となっています。ハワイの公立校はいじめについてどのような対策をとっているのでしょう。
ハワイ州教育局では、いじめ(bullying)とは、文章、言葉、暴力を使って他の生徒を傷つけ、侮辱、脅迫し、その行為が深刻で持続的に蔓延することにより教育環境に威圧、脅迫、虐待的な影響を与えることと定義しています。
ネットいじめ(Cyberbulling)については、インターネットや携帯電話などの電子デバイスを通して、電子的に送信する行為によって前述のいじめと同じ状態を巻き起こすものとしています。それは①学校の敷地内、学校が管轄する場所や交通機関内で、または学外で学校が主催する活動やイベント中に行われる ②学校のデータシステムを許可なく使用して行われる ③さらには学外のコンピュータネットワークを通じて行われることで教育環境に多大な負の影響を与えるものと定義しています。
そしていじめは当事者に限らずコミュニティー全員の問題であると喚起し、学内に限らず、家族、生徒、コミュニティーの全員が、自分とは異なる特性を持つ人を含む他者に対して敬意と共感を持って接し、責任感や忍耐力を内包する社会の形成を促進させることが必要だとしています。学校ではこうした価値観を教育していますが、家庭でも教えていく必要があります。いじめは誰にでも起こり得ますが、人種、社会・経済的地位、性的指向、性自認、学習障害、その他の資質を理由に標的にされることは公民権法違反だと明確に記されています。
いじめに対処するためのガイドラインとして、Chapter19 という条例が設定されています。いじめに限らず、健全な学校生活を乱す原因となる全ての不適切な行動が含まれ、喧嘩や暴力、窃盗、ドラッグなども対象となります。Chapter19の内容を全て明記した冊子とクレームの申告書は、学年の始めに各生徒に配布され、学校オフィスにも常備されています。日本語翻訳版もありますので、気になる方は目を通してください。
https://www.hawaiipublicschools.o r g / D O E % 2 0 F o r m s / O S S S /Chapter%2019%20Translations/Japanese.pdf
学校側にいじめの報告が上がったら、このChapter19 のガイドラインに沿って、学校独自の調査が行われます。そして、いじめられた生徒から得た情報をもとに、いじめた生徒を特定し、両方の生徒がカウンセリングを受けます。親にもその内容は報告されます。カウンセリングが終了し、いじめが解決した時点で、いじめた側に必要な制裁が加えられます。Chapter19 には実に細かく対処や懲罰の内容が明文化されているので、担当者の個人的な采配によって解決方法や懲罰が違うといった事態を避けられるようになっています。
また、いじめを目撃した子どもがアプリを通して報告できるシステム(Speak Now HIDOE アプリ)もある他、各校には常駐カウンセラーもいます。いじめに遭ったらまずは通告し、その後学校側がChapter19に従ってきちんとフォローしているか、問題が解決されるまで対応を追っていく必要があります。
いじめを解決することは簡単ではありませんが、コミュニティー全体でいじめられている子どもを支援し、いじめをする子どもの行動を方向転換させ、仲間グループ、学校、家族、いじめ行為を容認する大人や若者の態度を変えていくことが重要です。
スピアかずこ
1964年愛媛県生まれ。大阪•京都•オレゴンで学生時代を過ごす。京都女子大学短期大学部卒業。88年ハワイに移住し結婚。ハワイの公立校で教育を受けた長女は現在アメリカ本土で大学院生、次女はハワイ大学へ通う。雑誌やウェブでの執筆活動を精力的に行っている。共著に『ハッピー•グルメ• ハワイ』(双葉社刊)
※このページは「ライトハウス・ハワイ 2024年11月」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。