最近就学前のお子さんをもつ日本人ママたちの声を聞く機会がありました。そこで共通の話題として盛り上がったのは、バイリンガル教育をどう進めていくかということでした。
ハワイで日本語教育に本格的に取り組みたい場合、選択肢として最初に考えるのは、ハワイ唯一の日本語補習校であるレインボー学園への入学です。幼稚部から中学部までがあり、毎週土曜日に日本の教科書に従った授業を行い、小学4年生までは国語と算数、5年生からは国語、算数、社会の3教科を学習しています。また運動会を始めとする日本らしい学校行事も盛んなので、ハワイに居ながら日本の学校生活や文化を体験できます。昔は駐在員の子どもが多く通っていましたが、時代と共に変遷し、現在はアメリカに永住している家庭の子どもの割合が過半数を超えているそうです。
子どもを日英両文化に根付いたバイリンガルに育てたい日本人の親にとっては、魅力的な教育内容のレインボー学園ですが、学習内容についていけるだけの日本語力がないと入学審査には通りません。また入学後は日本の小学生と同じスピードで漢字を習得しなければならないので、親子でコツコツと努力を続けなくてはなりません。「入ったらなんとかなる」という考えは捨て、決意を持って入学することをお勧めします。
自分の子育てを振り返って、また周囲のお子さんたちの成長を見てきての個人的な感想ではありますが、レインボー学園での日本語学習をうまく軌道に乗せるコツがあるとすれば、以下になるでしょうか。
①幼稚部に上がる年齢までに、できるだけ日本語の基礎を作っておく
小学校に入ると学校での勉強やお稽古事で忙しくなり、英語環境がどんどん強くなっていきます。幼児期に家庭環境や生活様式が日本的で、日本語の方が英語より強いくらいの子は、スムーズにレインボー幼稚部になじんでいました。たとえ英語の方が強くても、日本語をできるだけ英語に近いレベルに近づけておくと、後が楽です。
②漢字学習のリズムをうまく作る
金曜日の夜に慌てて詰めこんでも、すぐに漢字は忘れてしまうし、何より親子ともに物凄いストレスになります。親の仕事の都合やお子さんの性格によって方法は多種多様だとは思いますが、漢字学習や宿題をする時間を毎日の生活に組み込むことが成功の秘訣。漢字をやる、やらないで親子喧嘩をしてしまうと、それが子どもにとってはイヤになる原因となってしまいます。
③習い事や遊ぶ時間を確保する
ローカルのスポーツクラブは土曜日に試合や練習があることが多いです。また友達のバースデーパーティーなどにお呼ばれすることもあるでしょう。ここが一番の悩みどころではありますが、補習校を第一優先にしながらも、スケジュールが被らないお稽古事やスポーツクラブを探したりして、「補習校があるから〇〇できない→だから通うのがイヤだ」という思考に陥らないように気を付けてあげてください。
④ボランティアを楽しむ
補習校では、親もさまざまな役割を担うことで学校運営が成立しています。そうした場で子育ての苦楽を長く共にできるママ友ができれば、心強いですね。学校行事に楽しく参加できるよう努力することが親の役目でもあり、長続きの秘訣です。
補習校で日本語を学ぶことは素晴らしい体験となりますが、行かない選択をしても、日本語を学ぶ方法は他にもあります。わが家も長女が幼稚部のみ通っただけで、小学部には上がりませんでした。次回はそれをお話しします。
スピアかずこ
1964年愛媛県生まれ。大阪•京都•オレゴンで学生時代を過ごす。京都女子大学短期大学部卒業。88年ハワイに移住し結婚。ハワイの公立校で教育を受けた長女は現在アメリカ本土で大学院生、次女はハワイ大学へ通う。雑誌やウェブでの執筆活動を精力的に行っている。共著に『ハッピー•グルメ• ハワイ』(双葉社刊)
※このページは「ライトハウス・ハワイ 2024年3月」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。