先日、ワイパフ高校でカリナリー・アーツを専攻する高校生が主催するランチ会に行ってきました。
下の写真のようなイタリアンコース料理が提供されましたが、前菜、パン、サラダまたはスープ、主菜、デザートと、どれも高校生とは思えないレベルの内容に感動しました。
なぜここまで専門性を培うことができるのかというと、ワイパフ高校では学科制度が導入されているからなのです。公立校としては画期的な取り組みだと思いますが、生徒の特性や興味に寄り添った授業を提供して高校教育をより充実したものにすること、そして卒業後の進路やキャリア形成に役立たせることを目的に、ワイパフ高校では9~12年生にアカデミーと呼ばれる学科制度を導入しています。
アカデミーは「ヘルス&サイエンス」、「ナチュラルリソース」、「アート&コミュニケーション」、「インダストリアル&エンジニアリング・テクノロジー」、「英語習得プログラム」、「オハナ・オブ・エクセレンス」、「プロフェッショナル&パブリック・サービス」の7つに分かれています。
「プロフェッショナル&パブリック・サービス」を例に挙げると、その中はビジネス、ロー&ジャスティス、ティーチャー・エデュケーション、そして今回ご紹介したカリナリーの四つの部門に分かれていて、ハワイの地元企業からの協力を得て職業訓練を受けることができるようになっています。ビジネスを専攻すると、キャンパス内に設けられたクレジットユニオンの出張所で、銀行員の指導の下、高校生だけで実際に銀行の出納業務を請け負っています。
カリナリーを専攻する学生は、プロのシェフ監修の下で学び、今回のようなランチ会を主催するだけの技術を習得しています。卒業後はカリナリースクールに進学し、プロの道に進む生徒も多いそうです。
専攻する学科によっては、単位を最大限に習得すると、高校卒業時にコミュニティー・カレッジ卒業に必要な単位数を獲得することも可能なので、大学を最短2年で卒業することも不可能ではないそうです。アメリカの大学教育は高額なので、これは大きなメリットだと言えるでしょう。何より興味に沿った学科を選ぶことで、実際の職業訓練ができたり、その道のプロから学ぶ機会を得ることで、進路選択がしやすくなることは間違いありません。
地域に根ざした高校教育としての学科制度は、高校生の可能性を大きく開いています。これから他校でも増えていく制度ではないかと思いました。
スピアかずこ
1964年愛媛県生まれ。大阪•京都•オ
レゴンで学生時代を過ごす。京都女子
大学短期大学部卒業。88年ハワイに
移住し結婚。ハワイの公立校で教育を
受けた長女は現在アメリカ本土で大学
院生、次女はハワイ大学へ通う。雑誌
やウェブでの執筆活動を精力的に行っ
ている。共著に『ハッピー•グルメ• ハワ
イ』(双葉社刊)
※このページは「ライトハウス・ハワイ 2023年5月」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。